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平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅲ

与件文

【C 社の概要】
C 社は、1974 年の創業以来、大手電気・電子部品メーカー数社を顧客(以下「顧客企業」という)に、電気・電子部品のプラスチック射出成形加工を営む中小企業である。従業員数 60 名、年商約 9 億円、会社組織は総務部、製造部で構成されている。プラスチック射出成形加工(以下「成形加工」という)とは、プラスチックの材料を加熱溶融し、金型内に加圧注入して、固化させて成形を行う加工方法である。C 社では創業当初、顧客企業から金型の支給を受けて、成形加工を行っていた。
C 社は、住工混在地域に立地していたが、1980 年、C 社同様の立地環境にあった他の中小企業とともに高度化資金を活用して工業団地に移転した。この工業団地には、現在、金属プレス加工、プラスチック加工、コネクター加工、プリント基板製作などの電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地している。
C 社のプラスチック射出成形加工製品(以下「成形加工品」という)は、顧客企業で電気・電子部品に組み立てられ、その後、家電メーカーに納品されて家電製品の一部になる。主に量産する成形加工品を受注していたが、1990 年代後半から顧客企業の生産工場の海外移転に伴い量産品の国内生産は減少し、主要顧客企業からの受注量の減少が続いた。
こうした顧客企業の動向に対応した方策として、C 社では金型設計と金型製作部門を新設し、製品図面によって注文を受け、金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制を社内に構築した。また、プラスチック成形や金型製作にかかる技能士などの資格取得者を養成し、さらに OJT によってスキルアップを図るなど加工技術力の強化を推進してきた。このように金型設計・製作部門を持ち、技術力を強化したことによって、材料歩留り向上や成形速度の改善など、顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウを蓄積することができた。
C 社が立地する工業団地の中小企業も大手電気・電子部品メーカーを顧客としていたため、C 社同様工業団地に移転後、顧客企業の工場の海外移転に伴い経営難に遭遇した企業が多い。そこで工業団地組合が中心となり、技術交流会の定期開催、共同受注や共同開発の実施などお互いに助け合い、経営難を乗り越えてきた。C 社は、この工業団地組合活動のリーダー的存在であった。
近年、国内需要分の家電製品の生産が国内に戻る傾向があり、以前の国内生産品が戻りはじめた。それによって、C 社ではどうにか安定した受注量を確保できる状態になったが、顧客企業からの 1 回の発注量が以前よりも少なく、受注量全体としては以前と同じレベルまでには戻っていない。
最近 C 社は、成形加工の際に金属部品などを組み込んでしまう成形技術(インサート成形)を習得し、古くから取引のある顧客企業の 1 社からの受注に成功している。それまで他社の金属加工品と C 社の成形加工品、そして顧客企業での両部品の組立という 3 社で分担していた工程が、C 社の高度な成形技術によって金属加工品を C 社の成形加工で組み込んで納品するため、顧客企業の工程数の短縮や納期の短縮、そしてコスト削減も図られることになる。

【生産概要】
製造部は、生産管理課、金型製作課、成形加工課、品質管理課で構成されている。生産管理課は顧客企業との窓口になり生産計画の立案、資材購買管理、製品在庫管理を、金型製作課は金型設計・製作を、成形加工課は成形加工を、品質管理課は製品検査および品質保証をそれぞれ担当している。
主要な顧客企業の成形加工品は、繰り返し発注され、毎日指定の数量を納品する。C 社の受注量の半数を占める顧客企業 X 社からの発注については、毎週末の金曜日に翌週の月曜日から金曜日の確定納品計画が指示される。C 社の生産管理課では X 社の確定納品計画に基づき、それにその他の顧客企業の受注分を加え、毎週金曜日に翌週の生産計画を確定する。日々の各製品の成形加工は、各設備の能力、稼働状況を考慮して原則週 1 回計画される。また、生産ロットサイズは長時間を要するプラスチック射出成形機(以下「成形機」という)の段取り時間を考慮して決定される。生産効率を上げるために生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、製品在庫が過大である。C 社の主要製品で、最も生産数量が多い X 社製品 A の今年 7 月 2 日(月)から 7 月 31 日(火)までの在庫数量推移を図 1 に示す。製品 A は、毎日 600 個前後の納品指定数であり、C 社の生産ロットサイズは約 3,000 個で週 1 回の生産を行っている。他の製品は、毎日の指定納品数量が少なく、変動することもあるため、製品 A 以上に在庫管理に苦慮している。

図 1 製品 A の在庫数量推移(2018 年 7 月)

日付(7 月)在庫数量(個)
22,500
32,000
41,500 から 4,300
53,600
63,000
92,500
102,000 から 5,200
114,700
124,000
133,500
163,000
172,300
181,600
191,000 から 4,000
203,500
233,000
242,400
251,900 から 5,000
264,500
274,000
303,300
312,600

注:4,10,19,25 日に在庫が補充されている。

【稼働日(7 月の日付)】
成形加工課の作業は、作業者 1 人が 2 台の成形機を担当し、段取り作業、成形機のメンテナンスなどを担当している。また全ての成形機は、作業者が金型をセットし材料供給してスタートを指示すれば、製品の取り出しも含め自動運転し、指示した成形加工を終了すると自動停止状態となる。
図 2 で示す「成形機 2 台持ちのマン・マシン・チャート(現状)」は、製品 A の成形加工を担当している 1 人の作業者の作業内容である。
成形機の段取り時間が長時間となっている主な原因は、金型、使用材料などを各置き場で探し、移動し、準備する作業に長時間要していることにある。図 2 で示す「成形機 1 の段取り作業内容の詳細」は、製品 A の成形加工作業者が、昼休み直後に行った製品 B のための段取り作業の内容である。金型は顧客からの支給品もまだあり、C 社内で統一した識別コードがなく、また置き場も混乱していることから、成形加工課の中でもベテラン作業者しか探すことができない金型まである。また使用材料は、仕入先から材料倉庫に納品されるが、その都度納品位置が変わり探すことになる。
顧客企業からは、短納期化、小ロット化、多品種少量化がますます要望される状況にあり、ジャストインタイムな生産に移行するため、C 社では段取り作業時間の短縮などの改善によってそれに対応することを会社方針としている。その対策の一つとして、現在、生産管理のコンピュータ化を進めようとしているが、生産現場で効率的に運用するためには、成形加工課の作業者が効率よく金型、材料などを使用できるようにする必要があり、そのためにデータベース化などの社内準備を検討中である。

図 2 成形加工作業者の一日の作業内容

成形機 1 の段取り作業内容の詳細

時間作業内容
13:00休憩
13:02製品 A の金型取外し
13:04製品 A の金型を金型置き場へ移動
13:06
13:08
13:12製品 B の金型を金型置き場から移動
13:14
13:16
13:18
13:20製品 B の金型取付
13:22製品 B の材料を材料置き場から移動
13:24
13:26
13:28
13:30材料段替
13:32
13:34
13:36調整・トライ
13:38
13:40成形後 2 段取り作業

成形機 2 台持ちのマン・マシン・チャート(現状)

時間作業者成形機 1成形機 2
8:30段取り準備待ち待ち
9:00成形機 1 段取り作業段取り作業待ち
9:30成形機 2 段取り作業待ち段取り作業
10:00待ち待ち待ち
10:30休憩
11:00待ち
11:30製品 A 成形加工製品 A 成形加工製品 C 成形加工
12:00昼休み
12:30待ち待ち
13:00成形機 1 段取り作業段取り作業待ち
13:30成形機 1 段取り作業段取り作業段取り作業
14:00待ち待ち待ち
14:30休憩
15:00成形機 1 段取り作業製品 B 成形加工製品 D 成形加工
15:30成形機 1 段取り作業製品 B 成形加工製品 D 成形加工
16:00成形機 2 清掃作業清掃作業清掃作業
16:30待ち清掃作業
17:00清掃作業

設問文

第 1 問(配点 20 点)

顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C 社の業績は維持されてきた。その理由を 80 字以内で述べよ。

第 2 問(配点 20 点)

C 社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図 2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

第 3 問(配点 20 点)

C 社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図 1)を分析して、C 社の生産計画上の問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

第 4 問(配点 20 点)

C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を 120 字以内で述べよ。

第 5 問(配点 20 点)

わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C 社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

出題の趣旨

第 1 問(配点 20 点)

C 社のこれまでの事業や立地環境の推移を把握し、顧客生産工場の海外移転などの経営環境にあっても業績が維持されてきた理由を説明する能力を問う問題である。

第 2 問(配点 20 点)

C 社成形加工作業者の一日の作業内容を分析し、作業方法に関する問題点を把握し、その問題を解決する能力を問う問題である。

第 3 問(配点 20 点)

C 社の生産計画策定方法と製品在庫量の推移を分析し、生産計画上の問題点を把握し、その問題を解決する能力を問う問題である。

第 4 問(配点 20 点)

C 社の生産職場の状況を把握し、生産管理のコンピュータ化を進めるために必要な事前整備内容について、助言する能力を問う問題である。

第 5 問(配点 20 点)

C 社の経営環境と事業内容の現状を把握し、立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、助言する能力を問う問題である。

平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅲ 解答解説

第 1 問(配点 20 点)

設問文

顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C 社の業績は維持されてきた。その理由を 80 字以内で述べよ。

回答例(80 字)

顧客の海外移転に対応し、金型設計・製作を内製化して一貫生産体制を構築。技術力強化によりコスト低減ノウハウを蓄積し、工業団地内で企業連携を主導して受注を確保した。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「金型設計と金型製作部門を新設し、製品図面によって注文を受け、金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制を社内に構築した。」
    • 「技術力を強化したことによって、材料歩留り向上や成形速度の改善など、顧客企業の成形加工品のコスト低減のノウハウを蓄積することができた。」
    • 「工業団地組合が中心となり、技術交流会の定期開催、共同受注や共同開発の実施などお互いに助け合い、経営難を乗り越えてきた。C 社は、この工業団地組合活動のリーダー的存在であった。」
  • 答案作成の根拠 大手顧客の海外移転による受注減少という外部環境の脅威に対し、C 社が生き残ってこられた理由を分析する問題である。与件文から C 社の強み(内部要因)と機会(外部要因)を抽出し、それらを組み合わせて解答を構成する。

    1. 強み ①:一貫生産体制と技術力 金型の設計・製作部門を立ち上げ、単なる成形加工だけでなく、上流工程から一貫して対応できる体制を構築した。これにより、顧客に対してコスト低減の提案が可能となる高い技術力を蓄積した。
    2. 強み ②:工業団地での連携 工業団地内のリーダーとして、他社との共同受注や共同開発を推進し、地域全体で経営難を乗り越えるネットワークを構築した。 これらの要因が、厳しい経営環境下でも業績を維持できた理由であると結論付けられる。
  • 使用した経営学の知識

    • SWOT 分析: 外部環境の脅威(顧客の海外移転)に対して、自社の強み(一貫生産体制、技術力、企業間連携)を活かして対応した戦略を分析する。
    • バリューチェーン: 金型設計・製作という上流工程を内製化することで、自社のバリューチェーンを強化し、顧客への付加価値提供能力を高めた。
    • 産業クラスター: 特定地域に同業種や関連業種の企業が集積することで生まれる相乗効果である。C 社は工業団地というクラスターの中でリーダーシップを発揮し、連携によるメリットを享受している。

第 2 問(配点 20 点)

設問文

C 社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図 2)を分析し、作業方法に関する問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

回答例(107 字)

問題点は、金型・材料の置き場が未整備で探索のムダが多く、段取り時間が長大化している点である。改善策は、5S を徹底し、金型と材料のロケーション管理を導入・定着させ、探索作業を削減し、段取り時間の短縮を図ることである。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「成形機の段取り時間が長時間となっている主な原因は、金型、使用材料などを各置き場で探し、移動し、準備する作業に長時間要していることにある。」
    • 「金型は...統一した識別コードがなく、また置き場も混乱している...」「使用材料は...その都度納品位置が変わり探すことになる。」
    • 図 2「成形機 2 台持ちのマン・マシン・チャート(現状)」および「成形機 1 の段取り作業内容の詳細」
  • 答案作成の根拠 この問題では、作業内容の分析を通じて「問題点」と「改善策」を具体的に示す必要がある。

    1. 問題点の特定 与件文と図 2 から、段取り時間のうち「金型を探す」「材料を探す」といった探索作業に多くの時間が費やされていることがわかる。これが「ムダな作業」であり、段取り時間を長大化させ、結果として作業者や機械の遊休時間(手待ち・機械待ち)を生み、生産性を低下させている根本原因である。
    2. 改善策の提案 問題点である「探索のムダ」をなくすための具体的な施策を考える。その最も基本的な手法が 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾) の徹底である。特に「整理(不要なものを捨てる)」と「整頓(必要なものを決められた場所に置く)」が重要である。具体的には、金型や材料に識別コードを付けて、誰でもわかるように置き場所を定め(ロケーション管理)、それを表示することで、探す時間をゼロに近づけることを目指す。
  • 使用した経営学の知識

    • IE(インダストリアル・エンジニアリング): 作業分析や工程分析を通じて、ムリ・ムダ・ムラを発見し、生産性を向上させるための科学的管理手法である。
    • 5S: 生産現場の改善活動の基本となる考え方である。職場環境の維持・改善に用いられる。
    • シングル段取り(SMED): 段取り時間を短縮するための手法である。金型や材料を探す作業(外段取りにできる)が、機械を止めてから行われている(内段取りになっている)現状は、SMED の考え方からも改善すべき点である。

第 3 問(配点 20 点)

設問文

C 社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図 1)を分析して、C 社の生産計画上の問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。

回答例(103 字)

問題点は、長い段取り時間を前提に大ロットで週 1 回生産するため、日々の需要量に対し過大な製品在庫を抱えていること。改善策は、段取り時間を短縮し、週複数回の生産へ移行して生産ロットを縮小し、在庫を圧縮すること。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「生産ロットサイズは長時間を要するプラスチック射出成形機の...段取り時間を考慮して決定される。」
    • 「生産効率を上げるために生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、製品在庫が過大である。」
    • 「製品 A は、毎日 600 個前後の納品指定数であり、C 社の生産ロットサイズは約 3,000 個で週 1 回の生産を行っている。」
    • 図 1「製品 A の在庫数量推移」
  • 答案作成の根拠 生産計画と在庫推移グラフから問題点を読み取り、その解決策を提示する。

    1. 問題点の特定 与件文には「製品在庫が過大」と明記されている。図 1 を見ると、製品 A は毎日 600 個程度納品されるのに対し、週 1 回の生産(ロットサイズ 3,000 個)によって在庫が補充され、最大で 5,000 個を超えるなど、常に数日分の納品量に相当する大量の在庫を抱えていることがわかる。この原因は「長い段取り時間」を補うために、生産効率を優先して大ロット生産を行っていることにある。
    2. 改善策の提案 問題の根本原因は「長い段取り時間」にある。したがって、第 2 問で述べた改善策(段取り時間短縮)を実行することが前提となる。段取り時間が短くなれば、生産ロットを小さくしても生産効率が落ちにくくなる。そこで、生産ロットサイズを縮小し、週 1 回ではなく、より頻度を上げて(例えば 2〜3 日に 1 回など)生産する多回生産に移行する。これにより、日々の需要変動に柔軟に対応でき、在庫量を大幅に削減できる。
  • 使用した経営学の知識

    • 在庫管理: 過剰在庫は、保管コストの増大、品質劣化リスク、資金繰りの悪化など、多くの問題を引き起こす。適正な在庫水準を維持することが重要である。
    • ロットサイジング: 1 回の生産量を決定することである。経済的ロットサイズ(EOQ)などの考え方があるが、C 社は段取り時間の長さからロットサイズが過大になっている。
    • JIT(ジャストインタイム)生産: 「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」生産する方式である。小ロット生産と在庫削減は JIT 生産の根幹をなす要素である。
    • 生産の平準化: 生産量や生産品目をならすことで、後工程への部品供給を安定させ、在庫の変動を抑制する考え方である。

第 4 問(配点 20 点)

設問文

C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備しておくべき内容を 120 字以内で述べよ。

回答例(109 字)

① 金型や材料に統一した識別コードを付与し、置き場を固定・表示するロケーション管理を徹底する。② これらの情報をマスターデータとしてデータベース化する。③ ベテラン頼りの段取り作業などの業務手順を標準化し、属人性を排除する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「生産管理のコンピュータ化を進めようとしているが、生産現場で効率的に運用するためには...社内準備を検討中である。」
    • 「金型...統一した識別コードがなく、また置き場も混乱している...」「使用材料は...その都度納品位置が変わり探すことになる。」
    • 「成形加工課の中でもベテラン作業者しか探すことができない金型まである。」
  • 答案作成の根拠 生産管理システムを導入・運用するには、そのシステムが扱う「モノ」と「情報」が整理・標準化されていることが大前提である。

    1. モノと情報の整理・標準化 与件文から、C 社では金型や材料の管理が属人的で、ルール化されていないことがわかる。コンピュータは曖昧な情報を扱えないため、まず、すべての金型や材料に一意の識別コード(品番、型番など)を割り振る必要がある。さらに、それらの保管場所(ロケーション)を固定し、誰が見てもわかるようにしなければならない。
    2. マスターデータの整備 ① で整備した識別コードやロケーション情報、さらには製品ごとの使用金型・材料の情報などを、コンピュータが読み取れる形式で データベース化(マスターデータ整備) する必要がある。これがシステムの土台となる。
    3. 業務の標準化 ベテラン頼りの属人的な作業では、システムを効率的に運用できない。誰が作業しても同じ結果が得られるように、作業手順を標準化・マニュアル化することも、システム導入前の重要な準備である。
  • 使用した経営学の知識

    • 生産情報システム: 生産活動を効率的に管理するための情報システムである。MRP(資材所要量計画)や生産スケジューラなどが含まれる。
    • マスターデータ管理: 企業活動の基本となるデータ(品目マスター、部品表、仕入先マスターなど)を正確かつ一元的に管理することである。システムの正確な動作の基盤となる。
    • 業務プロセスの標準化: 特定の個人のスキルや勘に頼るのではなく、業務の手順やルールを定め、組織としての再現性や効率性を高めることである。

第 5 問(配点 20 点)

設問文

わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C 社が立地環境や経営資源を生かして付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として 120 字以内で助言せよ。

回答例(120 字)

金型設計からの一貫生産体制とインサート成形技術を強みとし、工業団地内の金属加工企業等と連携を強化する。金属部品等を組み込んだ高付加価値なモジュール製品を共同で開発・生産し、国内回帰企業を主な対象に VA/VE 提案による新規販路開拓を推進する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「金型の設計・製作から成形加工まで対応できる体制」「コスト低減のノウハウを蓄積」
    • 「工業団地には...電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地している。」
    • 「成形技術(インサート成形)を習得し...顧客企業の工程数の短縮...コスト削減も図られる」
    • 「近年、国内需要分の家電製品の生産が国内に戻る傾向があり、以前の国内生産品が戻りはじめた。」
  • 答案作成の根拠 本問は、C 社の経営資源(強み)と経営環境(機会)を最大限に活用し、将来の付加価値向上に繋がる成長戦略を助言する能力を問うものである。答案は、強みの再定義、資源の連携、製品戦略、市場戦略の 4 要素で構成されている。

    1. 内部資源の活用(強みと連携): C 社の強みは、①金型設計からの一貫生産体制、②インサート成形技術、③工業団地内のネットワーク、④コスト低減の提案ノウハウである。これらの強みを単独で活かすのではなく、工業団地という立地環境(外部資源)と掛け合わせ、金属加工企業等と連携することで、自社単独では製造不可能な、より高度な製品開発の可能性が生まれる。

    2. 製品・市場戦略(機会への対応): 連携によって、プラスチックと金属部品等を一体化した高付加価値なモジュール製品を開発・生産する(製品戦略)。そして、与件文の「生産が国内に戻る傾向」という絶好の事業機会を捉え、サプライチェーンの国内再構築を目指す国内回帰企業を主要なターゲットとする(市場戦略)。

    3. 戦略の実行方法: 新規販路開拓にあたっては、単なる製品売り込みではなく、C 社が蓄積してきた「コスト低減ノウハウ」を活かしたVA/VE 提案を行う。これにより、顧客の設計・開発段階から関与し、課題解決に貢献するパートナーとしての地位を確立でき、価格競争からの脱却と持続的な受注確保が期待できる。

  • 使用した経営学の知識

    • SWOT 分析: 自社の 強み(Strength) である一貫生産体制や技術力と、 機会(Opportunity) である生産の国内回帰というトレンドを掛け合わせる「積極化戦略」を構築するものである。
    • 産業クラスター戦略: 工業団地という地理的に集中した企業群(クラスター)の利点を活かし、企業間連携を通じて新たな価値創造や競争優位性を構築する戦略である。
    • VA/VE(価値分析/価値工学): 製品の価値を「機能」と「コスト」の関係で捉え、最小コストで顧客が必要とする機能を実現する手法である。これを提案型の営業手法として用いることで、付加価値の高い取引を実現する。

AI への指示

あなたは、中小企業診断士二次試験の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。

評価の基本方針

  • 模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。
  • あなたの解答の評価は、第一に与件文の記述と設問要求に忠実であるか、第二に中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているかを最優先の基準とします。
  • 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その独自の価値を積極的に評価してください。
  • 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という視点を提供するものとして活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。

上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点で私の解答を添削してください。加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイントをバランス良く指摘してください。

評価は点数ではなく、下記のABCDEF 評価基準に沿って行ってください。


ABCDEF 評価基準

  • A 評価 (完璧 / 80 点以上): 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
  • B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点): 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成が明快な、上位合格答案レベル。
  • C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点): 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻がない。安定して合格点をクリアできるレベル。
  • D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点): 解答の方向性は合っているが、根拠の不足や論理の飛躍が散見される。合否が分かれるレベル。
  • E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点): 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。合格には改善が必要なレベル。
  • F 評価 (不合格レベル / 49 点以下): 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。

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  • ① 設問解釈と方向性: 設問の意図を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。模範解答とは違う切り口だが、与件文・設問要求に照らして有効か、といった視点で評価してください。

  • ② 与件文の活用: 解答の根拠として、与件文中のどの SWOT 情報を、どの程度効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。

  • ③ 知識と論理構成: 診断士としての経営知識を適切に応用できているか。「A だから B になる」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。模範解答とは異なる論理展開でも、それが妥当であれば評価してください。

  • ④ 具体性と表現: 抽象論に終始せず、企業の状況に合わせた具体的な記述ができているか。冗長な表現や不適切な言葉遣いはないか。

  • **改善提案:どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、「どの与件文のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。あなたの解答の優れた点を活かす形での改善案も歓迎します。

2. 総評

  • 総合評価: 全ての設問を考慮した最終評価を A / B / C / D / E / F で示してください。
  • 全体を通しての強み: 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点を挙げてください。(模範解答にない独自の視点など)
  • 全体を通しての課題: 合格のために、最も優先的に改善すべき点を指摘してください。
  • 合格に向けたアドバイス: 今後の学習方針について、具体的なアドバイスをお願いします。

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