Gemini 2.5 Pro による回答と解説( 令和 2 年度(2020 年度)事例 Ⅱ)
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
現在の B 社の状況について、SWOT 分析をせよ。各要素について、①〜④ の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明すること。
回答例
- ① 強み(37 字):高品質なハーブの無農薬栽培・加工技術と、大手製薬会社との取引で得た信頼性。
- ② 弱み(39 字):特定の大手取引先である Z 社への売上依存度が高く、自社のマーケティング力が弱い。
- ③ 機会(40 字):健康志向を背景としたヘルスケア市場の拡大と、安眠効果のあるハーブへの新たな需要。
- ④ 脅威(39 字):主要取引先 Z 社との取引縮小・終了の可能性と、島の人口減少による地域の活力低下。
解説
問題文の該当箇所
- 強み:「無農薬で高品質のハーブが(中略)効率的な栽培方法を開発した」「栽培したハーブを新鮮なうちに乾燥粉末にする」「Z 社は(中略)高品質かつ安全性を追求する姿勢(中略)を高く評価した」
- 弱み:「B 社の事業が Z 社との取引に依存している現状は変わらない」「ハーブを使った自社による製品開発をいったん諦めた」
- 機会:「消費者の健康志向を背景にますます拡大基調にあるヘルスケア市場」「安眠効果があるとされるハーブ(中略)引き合いが来るようになった」
- 脅威:「Z 社とのハーブの取引量は徐々に減少している」「あと 2〜3 年でこの製品を製造中止する可能性が高い」「若年層の人口流出や雇用機会不足、人口の高齢化による耕作放棄地の問題、農家所得の減少などが深刻化」
答案作成の根拠 与件文から B 社の内部環境である「強み」「弱み」と、外部環境である「機会」「脅威」を整理する。
- 強み: B 社が持つ独自の技術力と、それが外部からどう評価されているかを抽出する。無農薬での効率的な栽培技術、乾燥粉末の加工ノウハウ、そして大手 Z 社との長期取引で培われた社会的信用が該当する。
- 弱み: B 社の事業構造上の課題点を抽出する。Z 社一社への売上依存体質と、過去の失敗経験からわかる自社製品の販売ノウハウの不足が明確な弱みである。
- 機会: B 社を取り巻く市場環境の追い風となる要因を抽出する。社会的な健康志向の高まりと、それに伴うヘルスケア市場の拡大は大きな機会である。また、安眠ハーブへの具体的な引き合いは、新たな市場ニーズの存在を示している。
- 脅威: B 社の存続を脅かす可能性のある外部要因を抽出する。最大の脅威は、売上の大部分を占める Z 社との取引が縮小・終了する可能性が高いことである。加えて、事業基盤である X 島の過疎化・高齢化も長期的な脅威となる。
使用した経営学の知識
- SWOT 分析: 企業の外部環境(機会・脅威)と内部環境(強み・弱み)を分析し、経営戦略を策定するためのフレームワーク。本設問では、このフレームワークに基づき、B 社の現状を整理・分析する能力が問われている。
第 2 問(配点 30 点)
設問文
Z 社との取引縮小を受け、B 社はハーブ Y の乾燥粉末の新たな取引先企業を探している。今後は Z 社の製品とは異なるターゲット層を獲得したいと考えているが、B 社の今後の望ましい取引先構成についての方向性を、100 字以内で助言せよ。
回答例(99 字)
大手 1 社依存から脱却し、経営リスクを分散させる。B 社の高品質・安全性を評価する健康志向の中小食品・化粧品メーカー等を複数開拓する。Z 社製品とは異なる高齢者層や、美意識の高い富裕層を新たな顧客とする。
解説
問題文の該当箇所
- 「Z 社との取引縮小を受け、B 社はハーブ Y の乾燥粉末の新たな取引先企業を探している」
- 「今後は Z 社の製品とは異なるターゲット層を獲得したい」
- ハーブ Y の効能:「健康・長寿の効能」「アンチエイジングの効能」
- Z 社製品のターゲット:「30〜40 歳代の女性層」
- B 社の強み:「無農薬栽培」「高品質かつ安全性を追求する姿勢」
- B 社の弱み:「Z 社との取引に依存している現状」
答案作成の根拠 本問は、Z 社との取引縮小という脅威に対応するため、B 社の強みを活かしてどのような取引先構成を目指すべきかを助言する問題である。ポイントは「リスク分散」と「新たなターゲット層」である。
方向性(取引先構成): 与件文から、B 社の最大の弱みは「Z 社への依存」である。したがって、今後の方向性として、特定企業に依存するのではなく、複数の企業と取引することで経営リスクを分散させることが不可欠である。取引先の規模としては、B 社の「高品質」「安全性」「島への思い」といった価値を理解し、対等なパートナーシップを築きやすい中小企業が望ましい。
新たな取引先(業種): ハーブ Y が持つ「アンチエイジング」「健康・長寿」という訴求は、Z 社が展開したヘルスケア製品(ドリンク・サプリメント)以外にも可能性がある。例えば、高品質な原材料を求める中小の「食品メーカー」や、自然由来・安全性を重視する「化粧品メーカー」などが考えられる。
新たなターゲット層: Z 社が獲得した「30〜40 代女性」とは異なる層を狙う必要がある。島の食文化の背景(「とくに高齢者は普段からおひたしや酢みそあえにして食べる」)から「高齢者層」が有望なターゲットとなる。また、高品質・希少性を訴求することで、価格よりも価値を重視する「富裕層」も新たなターゲットとして考えられる。
以上の要素を組み合わせ、「① リスク分散のため複数の中小企業と取引し、② 食品・化粧品メーカーなどを開拓し、③ 高齢者層や富裕層を狙う」という論理で回答を構成する。
使用した経営学の知識
- 販売チャネル戦略: 既存製品の新たな販路を開拓する際の戦略。
- リスクマネジメント: 特定の取引先への依存度を下げ、複数の取引先を確保することで経営リスクを分散させる考え方。
- STP 分析 (セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング): Z 社が狙わなかった新たな市場セグメント(高齢者層、富裕層)を特定し、そこをターゲットとする考え方。
第 3 問(配点 30 点)
設問文
B 社社長は最近、「眠る前に飲むハーブティー」の自社オンラインサイトでの販売を手がけたところ、ある程度満足のいく売上げがあった。
(設問 1)
上記の事象について、アンゾフの「製品・市場マトリックス」の考え方を使って 50 字以内で説明せよ。
回答例(50 字)
安眠ハーブティーという新製品を自社サイトで大都市圏女性という新市場に直販するため、多角化戦略である。
解説
問題文の該当箇所
- 「安眠効果のあるハーブを原材料とした「眠る前に飲むハーブティー」というコンセプトの製品を OEM 企業に生産委託し、自社オンラインサイトで販売してみた」
- 「20 歳代後半〜50 歳代の大都市圏在住の女性層から注文が来るようになった」
答案作成の根拠 アンゾフの「製品・市場マトリックス」の 4 つの成長戦略(① 市場浸透、② 新製品開発、③ 新市場開拓、④ 多角化)に、B 社の今回の取り組みを当てはめる。
- 製品軸: B 社はこれまでハーブの「乾燥粉末(原材料)」を企業向けに販売してきた。一方、「眠る前に飲むハーブティー」は最終消費者向けの「製品」であり、B 社にとっては新製品である。
- 市場軸: B 社はこれまで Z 社などのメーカーに販売する BtoB 市場にいた。一方、自社オンラインサイトを通じて「大都市圏在住の女性層」という最終消費者に直接販売する BtoC 市場は、B 社にとって新市場である。
「新製品」を「新市場」に投入しているため、この取り組みは「多角化戦略」に分類される。
使用した経営学の知識
- アンゾフの成長マトリックス(製品・市場マトリックス): 経営戦略を「製品」(既存/新規)と「市場」(既存/新規)の 2 軸で分類し、企業の成長戦略の方向性を分析するフレームワーク。本問は、この理論的枠組みを用いて B 社の事業を的確に位置づける能力を問うものである。
(設問 2)
B 社社長は自社オンラインサイトでの販売を今後も継続していくつもりであるが、顧客を製品づくりに巻き込みたいと考えている。顧客の関与を高めるため、B 社は今後、自社オンラインサイト上でどのようなコミュニケーション施策を行っていくべきか。100 字以内で助言せよ。
回答例(100 字)
新製品の開発過程をサイト上で公開し、製品アイデアや名称を公募する。ハーブの多様な活用法を顧客から募集・共有できるコーナーを設け、SNS も活用しながら双方向の対話を促進し、製品開発への参加意識を高める。
解説
問題文の該当箇所
- 「顧客を製品づくりに巻き込みたいと考えている」
- 「顧客の関与を高めるため、B 社は今後、自社オンラインサイト上でどのようなコミュニケーション施策を行っていくべきか」
答案作成の根拠 設問の要求は「オンラインサイト」上で「顧客を製品づくりに巻き込む」ための「コミュニケーション施策」である。単なる情報発信ではなく、顧客が参加し、影響を与えられる双方向の仕組みを提案する必要がある。
製品開発プロセスへの参加: 顧客が「製品づくりに巻き込まれている」と最も実感できるのは、製品開発の初期段階から関与することである。そこで、B 社が企画している新製品について、開発の背景や進捗状況をサイト上でブログや動画を用いて公開する。さらに、製品コンセプトのアイデア、製品名、パッケージデザインなどを顧客から公募する企画を実施する。
共創コミュニティの形成: 顧客同士や B 社とのコミュニケーションを活性化させる場を提供する。サイト上に、顧客が考案したハーブのオリジナルレシピや活用法を投稿・共有できる掲示板のようなコーナーを設ける。良いアイデアにはプレゼントを進呈するなど、参加を促すインセンティブも有効である。
双方向コミュニケーションの促進: 上記の施策を効果的に行うため、SNS(Instagram, X など)と連携し、リアルタイムでの意見交換や情報拡散を図る。これにより、顧客との継続的な対話が生まれ、エンゲージメント(関与)が高まる。
これらの施策により、顧客は単なる消費者ではなく、製品開発のパートナーとしての意識を持ち、B 社へのロイヤルティ向上につながる。
使用した経営学の知識
- 共創(Co-creation)マーケティング: 企業と顧客が対話し、協力して新しい価値を創造していくマーケティング手法。顧客を単なる買い手ではなく、価値創造のパートナーと位置づける。
- エンゲージメント・マーケティング: 顧客との絆や愛着(エンゲージメント)を深めることで、長期的な関係を築くマーケティング手法。双方向のコミュニケーションが重要となる。
第 4 問(配点 20 点)
設問文
B 社社長は、自社オンラインサイトのユーザーに対して、X 島宿泊訪問ツアーを企画することにした。社長は、ツアー参加者には訪問を機に B 社と X 島のファンになってほしいと願っている。絶景スポットや星空観賞などの観光以外で、どのようなプログラムを立案すべきか。100 字以内で助言せよ。
回答例(99 字)
B 社のハーブ畑での収穫体験と乾燥粉末加工の工場見学を行う。社長自らが島の活性化への思いを語るセミナーや収穫したハーブを使い、島の高齢者から島のハーブ料理を教わる料理教室を開催し、ファン化を促進する。
解説
問題文の該当箇所
- 「自社オンラインサイトのユーザーに対して、X 島宿泊訪問ツアーを企画」
- 「ツアー参加者には訪問を機に B 社と X 島のファンになってほしい」
- 「絶景スポットや星空観賞などの観光以外で、どのようなプログラムを立案すべきか」
- B 社の資源:「ハーブ畑」「(社長の)島への思い入れ」「島内では古くから健康・長寿の効能があると言い伝えられてきた」「高齢者は普段からおひたしや酢みそあえにして食べる」
答案作成の根拠 本問は、オンラインで獲得した顧客のロイヤルティを、リアルの体験を通じてさらに高めるための施策を問う問題である。「観光以外」という制約の中で、B 社ならではの資源と X 島の魅力を組み合わせた体験プログラムを提案する必要がある。
B 社ならではの体験: B 社の事業の根幹である「ハーブ」を軸にした体験を提供する。美しいハーブ畑での「収穫体験」や、普段は見ることができない「工場見学」は、製品への理解と愛着を深める上で非常に効果的である。
経営者の想いの共有: B 社の事業は、社長の「島の窮状を打開したい」という強い思いから始まっている。社長自らがその理念やストーリーを語る「セミナー」や座談会を実施することで、顧客は製品の背景にある物語に共感し、単なる製品のファンではなく、B 社という企業のファンになる。
地域文化との連携・交流: X 島の資産である「伝統的な食文化」と「島民(特に高齢者)」との交流をプログラムに組み込む。与件文にある「おひたしや酢みそあえ」などの伝統料理を、実際に島の高齢者から教わる「料理教室」を開催する。これにより、参加者はハーブの新たな魅力を発見するとともに、地域の人々との触れ合いを通じて X 島そのものへの愛着を深める。
これらのプログラムは、単なる観光では得られない「本物性」と「特別感」を参加者に提供し、B 社と X 島の熱心なファンになってもらう(ロイヤルティ向上)という目的に合致する。
使用した経営学の知識
- 経験価値マーケティング: 商品やサービスを購入・利用する過程で得られる「体験」そのものに価値を見出し、顧客満足度やロイヤルティを高めようとするアプローチ。五感に訴えかけ、感動や共感を呼ぶ体験のデザインが重要となる。
- リレーションシップ・マーケティング: 顧客との長期的で良好な関係性を築き、維持していくことを重視するマーケティング。このような体験ツアーは、顧客との関係を深化させるための効果的な施策である。