Gemini 2.5 Pro による回答と解説( 平成 29 年度(2017 年度)事例 Ⅲ)
目次は画面右上の「On this page」をタップしてください。
第 1 問(配点 30 点)
設問文
CNC 木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対応策を 140 字以内で述べよ。
回答例(108 字)
課題は ① 両班の連携不足 ② 作業の属人化 ③ 生産管理体制の未整備。対応策は ① 常務主導で両班の連携を促す生産体制を構築し ② 作業を標準化・マニュアル化して品質を安定させ ③ 生産計画の立案や工程管理を一元的に行い、納期を遵守する。
解説
問題文の該当箇所
- 「これまで製造部では専任担当制で作業者間の連携が少なかったが、この新規事業では、機械加工班と製缶板金班が同じ CNC 木工加工機の部品加工、組み立てに関わることとなる。」
- 「各機械の操作方法や加工方法に関する技術情報は各専任作業者それぞれが保有し、標準化やマニュアル化は進められていない。」
- 「社長と常務から、担当する製造部の作業者に直接生産指示が行われる。」
答案作成の根拠 CNC 木工加工機の生産は、部品加工(機械加工班、製缶板金班)、外部調達品の管理、組立(両班連携)、検査(設計担当)と、複数の部署や担当者が関わる複雑な工程を辿る。これは、従来の作業者個人が完結する賃加工とは大きく異なる。 したがって、この新しい生産プロセスに対応するためには、以下の 3 つの生産管理上の課題を解決する必要がある。
- 部署間の連携体制の構築: 従来連携が少なかった機械加工班と製缶板金班が協力して組立まで行うため、両班を統括し、連携を促進する体制が必要となる。
- 作業の標準化: 新製品の品質を安定させ、効率的に生産するには、個人のスキルに依存した属人的な作業方法を改め、作業手順を標準化・マニュアル化し、組織で共有する必要がある。
- 一元的な生産管理体制の構築: 複数の工程の進捗を管理し、部品や外部調達品の納期を調整して最終的な組立・出荷納期を遵守するためには、常務などを中心とした司令塔が生産計画・工程管理を一元的に行う体制が不可欠である。
使用した経営学の知識
- 生産管理の 3 要素: 新規事業を成功させるには、QCD(品質、コスト、納期)の観点から生産管理体制を見直す必要がある。本問では特に、班連携による納期管理(D)、標準化による品質管理(Q)が重要となる。
- 生産統制: 生産計画に基づき、実際の生産活動が計画通りに進むよう管理・調整する活動。工程管理、現品管理、余力管理などが含まれる。
- 作業標準化: 最も効率的で安全な作業方法を定め、誰でも同じ品質の製品を生産できるようにするための基準(作業標準書など)を作成すること。
第 2 問(配点 20 点)
設問文
C 社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる余力を CNC 木工加工機の生産に充てたいと考えている。それを実現するための課題とその対応策について 120 字以内で述べよ。
回答例(115 字)
課題は機械の専任担当制と技術の属人化による生産性の低迷である。対応策は ① 多能工化を推進し、作業者間の応援体制を構築して機械稼働率を向上させること、② 作業標準化とマニュアル化で技能を共有・伝承し、組織全体の生産性を高めることである。
解説
問題文の該当箇所
- 「C 社では創業以来、顧客の要求する加工精度を保つため機械の専任担当制をとっており、そのため担当している機械の他は操作ができない作業者が多い。」
- 「各機械の操作方法や加工方法に関する技術情報は各専任作業者それぞれが保有し、標準化やマニュアル化は進められていない。」
答案作成の根拠 既存の賃加工事業の生産能力を向上させ、余力を生み出すことが目的である。与件文から、現在の生産業務における非効率の原因は以下の 2 点に集約される。
- 機械の専任担当制: 一人の作業者が特定の機械しか操作できないため、受注量の変動に対応しにくく、担当者不在時や手が空いた際に他の機械の応援に入れない。これにより、機械の稼働率が低下し、生産の柔軟性が損なわれている。
- 技術の属人化: 技術やノウハウが特定の作業者個人に帰属しているため、組織全体での共有や改善が進まない。これにより、生産性向上の機会が失われ、技能伝承も困難になっている。
これらの課題に対し、以下の対応策を講じることで生産性を向上させ、CNC 木工加工機の生産に充てる余力(時間・人員)を創出できる。
- 多能工化の推進: 作業者が複数の機械を扱えるよう計画的に教育することで、生産負荷の平準化や柔軟な人員配置が可能になり、工場全体の稼働率が向上する。
- 作業の標準化・マニュアル化: 熟練者の技術を形式知化し共有することで、全作業者のスキルアップと作業効率の向上を図る。
使用した経営学の知識
- 多能工化: 一人の作業員が複数の異なる工程や作業を遂行できる能力を持つこと。生産ラインの柔軟性向上や生産性向上に寄与する。
- IE(インダストリアル・エンジニアリング): 生産性向上のため、作業方法や工程を科学的に分析し、改善する手法。作業標準化はその一環である。
- ナレッジマネジメント: 個人の持つ暗黙知を、マニュアル化などを通じて組織全体で共有・活用できる形式知に転換し、組織能力を高める経営手法。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
C 社では、ホームページを活用した CNC 木工加工機の受注拡大を考えている。展示会での成功を参考に、潜在顧客を獲得するためのホームページの活用方法、潜在顧客を受注に結び付けるための社内対応策を 160 字以内で述べよ。
回答例(138 字)
HP 活用は ① 加工実演動画や事例を掲載し ②NC 未経験者向けに操作性、メンテ容易性、FAQ を充実させ潜在顧客を獲得する。社内対応は ③ 常務や設計担当が中心となり、問い合わせに迅速に対応する専門窓口を設置し ④ 顧客の要望に応じた加工プログラム提供やサンプル加工の提案で受注に結び付ける。
解説
問題文の該当箇所
- 「展示会では、...CNC 木工加工機の実演を行ったが、それによって多くの来展者の注目を集めることができた。」
- 「特に、NC 機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木工加工関係者から、プログラムの作成方法、...メンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、...評価され...」
答案作成の根拠 本設問は、「展示会の成功」を参考にすることが求められている。展示会の成功要因は、① 実演による製品性能の視覚的アピールと、② 対話による潜在顧客(特に NC 未経験者)の疑問や不安の解消であった。この成功体験を Web 上で再現し、受注に繋げるための方策を考える。
ホームページの活用方法(潜在顧客の獲得):
- 実演の再現: 加工の様子を動画コンテンツとして掲載し、製品の魅力を視覚的に伝える。
- 疑問・不安の解消: 展示会で受けた質問(プログラム、メンテナンス、材質等)を基に FAQ ページを充実させる。これにより、NC 未経験者が抱くであろう不安を事前に解消し、興味を喚起する。
社内対応策(受注への結びつけ):
- 迅速な対応体制: Web からの問い合わせは、対面と異なり顧客の熱量が冷めやすい。専門知識を持つ常務や設計担当者が迅速かつ的確に対応できる専門窓口を設け、機会損失を防ぐ。
- 具体的な提案: 問い合わせてきた顧客に対し、要望に応じた加工プログラムの提供やサンプル加工の提案といった、購入を後押しする具体的なアクションを行うことで、商談化率を高め、受注に結びつける。
使用した経営学の知識
- Web マーケティング: ホームページや SNS などを活用して製品やサービスを宣伝し、顧客を獲得する活動。動画コンテンツや FAQ の充実は、コンテンツマーケティングの一環である。
- CRM(Customer Relationship Management): 顧客との関係を管理し、長期的な関係を構築することで収益の最大化を目指す手法。問い合わせへの迅速な対応や、その後のフォローアップ体制の構築が重要となる。
- セールスプロセス管理: 見込み客の獲得から商談、受注、納品、アフターフォローまでの一連の流れを管理し、各段階でのコンバージョン率を高めるための活動。
第 4 問(配点 30 点)
設問文
C 社社長は、今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な CNC 木工加工機事業を進めたいと思っている。これを実現するためには、製品やサービスについてどのような方策が考えられるか、140 字以内で述べよ。
回答例(135 字)
方策は、ハード販売に加えてソフトとサービスで高付加価値化を図る。① 常務の CAD 技能を活かし、NC 未経験者向けに加工プログラムの作成代行やデザインデータを提供し、② 導入後の操作研修や保守・メンテナンス等のアフターサービスを充実させ、継続的な収益確保と顧客の囲い込みを図る。
解説
問題文の該当箇所
- 「今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な CNC 木工加工機事業を進めたい」
- 「3 次元 CAD で作成した 3 次元データを用いて、3 次元形状の加工ができる」
- 「(来展者から)プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性...に関する質問が多くあり」
答案作成の根拠 「大きな設備投資や人員増をしない」という制約条件の下で「高付加価値化」を実現するには、製品(ハードウェア)の大量生産に頼るのではなく、C 社の既存の強みを活かした付加的なサービス(ソフトウェア、サービス)で収益性を高める「ソリューション提供」の発想が求められる。
ソフトウェア・コンテンツによる付加価値向上:
- 展示会で NC 未経験者から「プログラム作成」に関する質問が多かったことから、これが顧客の大きな課題(ペイン)であることがわかる。
- 一方、C 社には常務を中心に「3 次元 CAD」のスキルという強みがある。
- この両者を結びつけ、加工プログラムの作成代行や、すぐに使えるデザインデータ(テンプレート)を有料で提供する。これは新たな設備投資を必要とせず、C 社の知的資産を収益化する高付加価値なサービスとなる。
アフターサービスによる付加価値向上:
- 製品導入後の操作研修や、定期的な保守・メンテナンスサービスを有料で提供する。
- これにより、製品本体の売上だけでなく、継続的な収益(ストック収益)を確保できる。
- また、手厚いサポートは顧客満足度を高め、他社への乗り換えを防ぐ「顧客の囲い込み(ロックイン)」効果も生み出し、事業の安定化に貢献する。
これらの施策は、いずれも既存の人員とスキルで対応可能であり、限られた経営資源の中で事業の高付加価値化を実現する有効な方策である。
使用した経営学の知識
- ソリューション営業: 単に製品を売るのではなく、顧客の抱える課題を解決するための方法(ソリューション)を、製品とサービスを組み合わせて提供する営業スタイル。
- サービス・ドミナント・ロジック: 価値は製品(モノ)に内在するのではなく、顧客がサービス(コト)を利用する過程で共創されるという考え方。本問では、加工機というモノと、プログラム提供や教育というコトを組み合わせることで価値を高める。
- 顧客ロックイン: 顧客が特定企業の製品やサービスを継続的に利用するように仕向ける戦略。スイッチングコストを高めることで実現される。