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平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅳ
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# 平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅳ
## 与件文
D 社は資本金 5,000 万円、従業員 55 名、売上高約 15 億円の倉庫・輸送および不動産関連のサービス業を営んでおり、ハウスメーカーおよび不動産流通会社、ならびに不動産管理会社およびマンスリーマンション運営会社のサポートを事業内容としている。同社は、顧客企業から受けた要望に応えるための現場における工夫をブラッシュアップし、全社的に共有して一つ一つ事業化を図ってきた。
D 社は、主に陸上貨物輸送業を営む E 社の引越業務の地域拠点として 1990 年代半ばに設立されたが、新たなビジネスモデルで採算の改善を図るために、 2 年前に家具・インテリア商材・オフィス什器等の大型品を二人一組で配送し、開梱・組み立て・設置までを全国で行う配送ネットワークを構築した。
同社は、ハウスメーカーが新築物件と併せて販売するそれらの大型品を一度一カ所に集め、このネットワークにより一括配送するインテリアのトータルサポート事業を開始し、サービスを全国から受注している。その後、E 社の子会社 F 社を吸収合併することにより、インテリアコーディネート、カーテンやブラインドのメンテナンス、インテリア素材調達のサービス業務が事業に加わった。
さらに、同社は、E 社から事業を譲り受けることにより不動産管理会社等のサポート事業を承継し、マンスリーマンションのサポート、建物の定期巡回やレンタルコンテナ点検のサービスを提供している。定期巡回や点検サービスは、不動産巡回点検用の報告システムを活用することで同社の拠点がない地域でも受託可能であり、全国の建物を対象とすることができる。
D 社は受注した業務について、協力個人事業主等に業務委託を行うとともに、配送ネットワークに加盟した物流業者に梱包、発送等の業務や顧客への受け渡し、代金回収業務等を委託しており、協力個人事業主等の確保・育成および加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素になっている。
また、D 社は顧客企業からの要望に十分対応するために配送ネットワークの強化とともに、協力個人事業主等ならびに自社の支店・営業所の拡大が必要と考えている。同社の事業は労働集約的であることから、昨今の人手不足の状況下で、同社は事業計画に合わせて優秀な人材の採用および社員の教育にも注力する方針である。D 社と同業他社の今年度の財務諸表は以下のとおりである。
### 貸借対照表
(単位:百万円)
| | D 社 | 同業他社 | | D 社 | 同業他社 |
| :------------------- | ---: | -------: | :--------------- | ---: | -------: |
| <資産の部> | | | <負債の部> | | |
| 流動資産 | 388 | 552 | 流動負債 | 290 | 507 |
| 現金及び預金 | 116 | 250 | 仕入債務 | 10 | 39 |
| 売上債権 | 237 | 279 | 短期借入金 | 35 | 234 |
| たな卸資産 | 10 | 1 | 未払金 | - | 43 |
| 前払費用 | 6 | 16 | 未払費用 | 211 | 87 |
| その他の流動資産 | 19 | 6 | 未払消費税等 | 19 | 50 |
| 固定資産 | 115 | 64 | その他の流動負債 | 15 | 54 |
| 有形固定資産 | 88 | 43 | 固定負債 | 34 | 35 |
| 建物 | 19 | 2 | 負債合計 | 324 | 542 |
| リース資産 | - | 41 | <純資産の部> | | |
| 土地 | 66 | - | 資本金 | 50 | 53 |
| その他の有形固定資産 | 3 | - | 資本剰余金 | 114 | 3 |
| 無形固定資産 | 18 | 6 | 利益剰余金 | 15 | 18 |
| 投資その他の資産 | 9 | 15 | 純資産合計 | 179 | 74 |
| 資産合計 | 503 | 616 | 負債・純資産合計 | 503 | 616 |
### 損益計算書
(単位:百万円)
| | D 社 | 同業他社 |
| :------------------- | ----: | -------: |
| 売上高 | 1,503 | 1,815 |
| 売上原価 | 1,140 | 1,635 |
| 売上総利益 | 363 | 180 |
| 販売費及び一般管理費 | 345 | 121 |
| 営業利益 | 18 | 59 |
| 営業外収益 | 2 | 1 |
| 営業外費用 | 2 | 5 |
| 経常利益 | 18 | 55 |
| 特別損失 | - | 1 |
| 税引前当期純利益 | 18 | 54 |
| 法人税等 | 5 | 30 |
| 当期純利益 | 13 | 24 |
## 第 1 問(配点 24 点)
### (設問 1 )
D 社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較して D 社が優れていると考えられる財務指標を 1 つ、D 社の課題を示すと考えられる財務指標を 2 つ取り上げ、それぞれについて、名称を ⒜ 欄に、その値を ⒝ 欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を ① の欄に、課題を示すと考えられる指標を ②、③ の欄に記入し、⒝ 欄の値については、小数点第 3 位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。
### (設問 2 )
D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較して D 社が優れている点と D 社の課題を 50 字以内で述べよ。
## 第 2 問(配点 31 点)
D 社は今年度の初めに F 社を吸収合併し、インテリアのトータルサポート事業のサービスを拡充した。今年度の実績から、この吸収合併の効果を評価することになった。以下の設問に答えよ。なお、利益に対する税率は 30 %である。
### (設問 1 )
吸収合併によって D 社が取得した F 社の資産及び負債は次のとおりであった。
(単位:百万円)
| 資産 | | 負債 | |
| :------- | --: | :------- | --: |
| 流動資産 | 99 | 流動負債 | 128 |
| 固定資産 | 91 | 固定負債 | 10 |
| 合計 | 190 | 合計 | 138 |
今年度の財務諸表をもとに ① 加重平均資本コスト(WACC)と、② 吸収合併により増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。なお、株主資本に対する資本コストは 8 %、負債に対する資本コストは 1 %とする。また、⒜ 欄の値については小数点第 3 位を四捨五入すること。
### (設問 2 )
インテリアのトータルサポート事業のうち、吸収合併により拡充されたサービスの営業損益に関する現金収支と非資金費用は次のとおりであった。
(単位:百万円)
| 項目 | 詳細 | 金額 |
| :--- | :--------- | ---: |
| 収益 | 収入 | 400 |
| 費用 | 支出 | 395 |
| | 非資金費用 | 1 |
企業価値の増減を示すために、吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。⒜ 欄の値については小数点第 3 位を四捨五入すること。また、吸収合併によるインテリアのトータルサポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問 1 )で求めた値も用いて理由を示して ⒞ 欄に 70 字以内で述べよ。なお、運転資本の増減は考慮しない。
### (設問 3 )
(設問 2 )で求めたキャッシュフローが将来にわたって一定率で成長するものとする。その場合、キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の金額に一致するのは、キャッシュフローが毎年度何パーセント成長するときか。キャッシュフローの成長率を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。なお、⒜ 欄の成長率については小数点第 3 位を四捨五入すること。
## 第 3 問(配点 30 点)
D 社は営業拠点として、地方別に計 3 カ所の支店または営業所を中核となる大都市に開設している。広域にビジネスを展開している多くの顧客企業による業務委託の要望に応えるために、D 社はこれまで営業拠点がない地方に営業所を 1 カ所新たに開設する予定である。
今年度の売上原価と販売費及び一般管理費の内訳は次のとおりである。以下の設問に答えよ。
(単位:百万円)
| | | | 金額 |
| :----- | :------------------- | :----------------- | ----: |
| 変動費 | 売上原価 | | 1,014 |
| | | 外注費 | 782 |
| | | その他 | 232 |
| | 販売費及び一般管理費 | | 33 |
| | 計 | | 1,047 |
| 固定費 | 売上原価 | | 126 |
| | 販売費及び一般管理費 | | 312 |
| | | 支店・営業所個別費 | 99 |
| | | 給料及び手当 | 79 |
| | | 賃借料 | 16 |
| | | その他 | 4 |
| | | 本社費・共通費 | 213 |
| | 計 | | 438 |
### (設問 1 )
来年度は外注費が 7 %上昇すると予測される。また、営業所の開設により売上高が 550 百万円、固定費が 34 百万円増加すると予測される。その他の事項に関しては、今年度と同様であるとする。
予測される以下の数値を求め、その値を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。
- ① 変動費率(小数点第 3 位を四捨五入すること)
- ② 営業利益(百万円未満を四捨五入すること)
### (設問 2 )
D 社が新たに営業拠点を開設する際の固定資産への投資規模と費用構造の特徴について、60 字以内で説明せよ。
### (設問 3 )
(設問 2 )の特徴を有する営業拠点の開設が D 社の成長性に及ぼす当面の影響、および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60 字以内で説明せよ。
## 第 4 問(配点 15 点)
D 社が受注したサポート業務にあたる際に業務委託を行うことについて、同社の事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があるのはどのような場合か。また、それを防ぐにはどのような方策が考えられるか。70 字以内で説明せよ。
# 平成 30 年度(2018 年度)事例 Ⅳ 解答解説
## 第 1 問(配点 24 点)
### (設問 1)
#### ①:優れている指標
- (a) **自己資本比率**
- (b) **35.59 (%)** (計算過程:179 ÷ 503 × 100 = 35.59%、同業他社:12.01%)
- 解説:D 社は総資本に占める返済不要の自己資本の割合が高く、借入金への依存度が低い。したがって、**財務の安全性が高く、長期的な安定経営が可能**である。
#### ②:劣っている指標 1
- (a) **売上高販管費率**
- (b) **22.95 (%)** (計算過程:345 ÷ 1,503 × 100 = 22.95%、同業他社:6.67%)
- 解説:販売費及び一般管理費が高く、収益を圧迫している。与件文にある「協力個人事業主等の確保・育成」「社員教育」などの人材投資、事業拡大に伴う管理コストが増加要因と考えられる。**高い売上高総利益率を販管費が相殺している**状況である。
#### ③:劣っている指標 2
- (a) **有形固定資産回転率**
- (b) **17.08 (回)** (計算過程:1,503 ÷ 88 = 17.08、同業他社:42.21 回)
- 解説:D 社は自社保有の土地(66 百万円)を含む固定資産を多く抱えており、**資産の活用効率が低い**。事業拡大や配送ネットワークの拠点整備に伴う固定資産の増加が、効率性の低下を招いている。
### 【別解】
#### ①:優れている指標(別解)
- (a) **売上高総利益率**
- (b) **24.15 (%)** (計算過程:363 ÷ 1,503 × 100 = 24.15%、同業他社:9.92%)
- 解説:D 社は付加価値の高い「インテリアトータルサポート事業」などを展開し、同業他社に比べて高い粗利益率を確保している。
### 【補足:売上高営業利益率を採用しない理由】
営業利益率は一見すると有用な指標であるが、**利益の減少要因が原価によるものか販管費によるものかが区別できない**。
本問では、D 社のように売上高総利益率(=原価構造)と売上高販管費率(=管理コスト構造)のいずれも差異が大きい場合、営業利益率のみでは原因を特定できない。
したがって、 **問題の所在をピンポイントで指摘できる「売上高販管費率」** を採用する方が適切である。
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### (設問 2)
D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較して D 社が優れている点と D 社の課題を 50 字以内で述べよ。
### 回答例(50 字)
**自己資本比率が高く財務は安定し、粗利率も高い。販管費が多く営業利益率が低く、固定資産の活用効率が課題**
#### 解説
- **問題文の該当箇所**: D 社および同業他社の貸借対照表・損益計算書全体、および(設問 1)の分析結果。
- **答案作成の根拠**: (設問 1)の分析結果を要約する。
- **優れている点(財政状態)**: 自己資本比率を計算すると、D 社は 179 ÷ 503 = 35.6% であり、同業他社の 74 ÷ 616 = 12.0% を大きく上回る。これは財務の安定性が高いことを示す。
- **優れている点(経営成績)**: (設問 1)で分析した通り、売上高総利益率(粗利率)が高い。
- **課題(経営成績・効率性)**: (設問 1)で分析した通り、高い販管費により売上高営業利益率が低い。また、有形固定資産回転率が低く、資産活用の効率性に課題がある。
## 第 2 問(配点 31 点)
D 社は今年度の初めに F 社を吸収合併し、インテリアのトータルサポート事業のサービスを拡充した。今年度の実績から、この吸収合併の効果を評価することになった。以下の設問に答えよ。なお、利益に対する税率は 30 %である。
### (設問 1)
① 加重平均資本コスト(WACC)と、② 吸収合併により増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。
#### ⒜-① 加重平均資本コスト(WACC)
**3.30 (%)**
#### ⒝-① 計算過程
$\frac{179}{503} \times 8 + \frac{324}{503} \times 1 \times (1 - 0.3) = 3.297... \approx 3.30$
#### ⒜-② 要求されるキャッシュフロー
**6.27 (百万円)**
#### ⒝-② 計算過程
$190 \times 3.30 = 6.27$
|
#### 解説
- **答案作成の根拠**:
- **① 加重平均資本コスト(WACC)**:
- WACC は、負債コストと株主資本コストをそれぞれの時価構成比で加重平均して算出する。税率を考慮し、負債コストの節税効果を反映させる。
- 株主資本(E) = 純資産合計 = 179 百万円
- 負債(D) = 負債合計 = 324 百万円
- 総資本(D+E) = 503 百万円
- 株主資本コスト ($r_E$) = 8%
- 負債コスト ($r_D$) = 1%
- 税率(t) = 30%
- WACC の公式 $WACC = \frac{E}{D+E} r_E + \frac{D}{D+E} r_D (1-t)$ に代入して計算する。
- **② 要求されるキャッシュフロー**:
- これは、投資した資産(今回は吸収合併により増加した資産)が、最低限生み出すべきキャッシュフローを示す。
- 「増加した資産額 × WACC」で計算できる。
- 増加した資産 = F 社から取得した資産合計 = 190 百万円
- 要求 CF = 190 百万円 × 3.297...% ≒ 6.27 百万円。計算過程では ① で求めたパーセント表示の WACC をそのまま使用してよい。
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### (設問 2)
吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その値を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。また、吸収合併によるインテリアのトータルサポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問 1 )で求めた値も用いて理由を示して ⒞ 欄に 70 字以内で述べよ。
#### ⒜ 吸収合併により増加したキャッシュフロー
**3.80 (百万円)**
#### ⒝ 計算過程
**営業利益:400 - (395 + 1) = 4\<br\>キャッシュフロー:4 × (1 - 0.3) + 1 = 3.8**
#### ⒞ 記述(63 字)
**吸収合併による CF(3.8 百万円)が、要求される CF(6.27 百万円)を下回るため、現時点では企業価値向上につながっていない。**
#### 解説
- **答案作成の根拠**:
- **増加したキャッシュフローの計算**:
- 事業が生み出すフリー・キャッシュフロー(FCF)を計算する。運転資本の増減は考慮しないため、FCF = 税引後営業利益 + 非資金費用(減価償却費など)で求める。
- 営業利益 = 収益 - 費用 = 400 - (現金支出 395 + 非資金費用 1) = 4 百万円
- 税引後営業利益 = 4 × (1 - 30%) = 2.8 百万円
- キャッシュフロー = 税引後営業利益 + 非資金費用 = 2.8 + 1 = 3.8 百万円
- **企業価値向上への評価**:
- 投資の経済性を評価するには、その投資が生み出すキャッシュフロー(実績値)と、投資に対して要求されるキャッシュフロー(ハードル・レート)を比較する。
- 実績 CF (3.8 百万円) \< 要求 CF (6.27 百万円)
- この結果から、投資額に対して期待されるリターンを生み出せておらず、このままでは企業価値を毀損していると判断できる。この論理を 70 字以内で記述する。
---
### (設問 3)
キャッシュフローの成長率を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。
#### ⒜ キャッシュフローの成長率
**1.30 (%)**
#### ⒝ 計算過程
**$190 = \frac{3.8}{0.033 - g}$ <br/> $g = 0.033 - \frac{3.8}{190} = 0.013 = 1.3\%$**
#### 解説
- **答案作成の根拠**:
- 将来のキャッシュフローが一定率 (g) で永久に成長する場合、その現在価値合計 (PV) は、定率成長配当割引モデル(ゴードン・グロース・モデル)を用いて計算できる。
- 公式: $PV = \frac{CF_1}{r - g}$
- PV:現在価値合計 = 増加した資産額 = 190 百万円
- $CF_1$:初年度のキャッシュフロー = 3.8 百万円
- r:割引率 = WACC ≒ 3.30% (0.033)
- g:キャッシュフロー成長率(求める値)
- 上記の公式に値を代入し、g について解く。
- $190 = \frac{3.8}{0.033 - g}$
- $0.033 - g = \frac{3.8}{190} = 0.02$
- $g = 0.033 - 0.02 = 0.013$
- パーセントに変換すると 1.3%。小数点第 3 位を四捨五入して 1.30% となる。
## 第 3 問(配点 30 点)
### (設問 1)
来年度は外注費が 7 %上昇すると予測される。また、営業所の開設により売上高が 550 百万円、固定費が 34 百万円増加すると予測される。その他の事項に関しては、今年度と同様であるとする。
予測される以下の数値を求め、その値を ⒜ 欄に、計算過程を ⒝ 欄に記入せよ。
#### ⒜-① 変動費率
**73.30 (%)**
#### ⒝-① 計算過程
**外注費以外の変動費率: (1,047 - 782) ÷ 1,503 = 0.1763...<br/>外注費率: (782 ÷ 1,503) × 1.07 = 0.5567...<br/>合計: 0.1763... + 0.5567... = 0.7330... ≒ 73.30%**
#### ⒜-② 営業利益
**76 (百万円)**
#### ⒝-② 計算過程
**売上高: 1,503 + 550 = 2,053<br/>変動費: 2,053 × 73.30% = 1,504.9<br/>固定費: (126 + 312) + 34 = 472 <br/> 営業利益: 2,053 - 1,504.9 - 472 = 76.1 ≒ 76**
#### 解説
- **答案作成の根拠**: **CVP(損益分岐点)分析**の考え方を用いて、来年度の予測損益を計算する。
- **① 変動費率**:
- 変動費は「外注費」と「その他」に分けられる。来年度は外注費の単価(比率)が 7% 上昇する。
- まず、今年度の売上高に対する各変動費の比率を計算する。
- 外注費率(今年度)= 782 ÷ 1,503
- その他変動費率 = (1,047 - 782) ÷ 1,503 = 265 ÷ 1,503
- 来年度の変動費率は、上昇する外注費率と変わらないその他変動費率の合計となる。
- 外注費率(来年度) = (782 ÷ 1,503) × 1.07 ≒ 55.67%
- その他変動費率(来年度)= 265 ÷ 1,503 ≒ 17.63%
- 合計変動費率 ≒ 73.30%
- **② 営業利益**:
- 営業利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費
- 来年度の売上高 = 1,503 + 550 = 2,053 百万円
- 来年度の変動費 = 来年度売上高 × ① で求めた来年度変動費率 = 2,053 × 73.30% ≒ 1,504.9 百万円
- 来年度の固定費 = 今年度の固定費 + 増加固定費 = (126 + 312) + 34 = 472 百万円
- 来年度の営業利益 = 2,053 - 1,504.9 - 472 = 76.1 百万円。百万円未満を四捨五入して 76 百万円。
---
### (設問 2)
D 社が新たに営業拠点を開設する際の固定資産への投資規模と費用構造の特徴について、60 字以内で説明せよ。
### 回答例(60 字)
**固定資産投資は小規模で、拠点の固定費増は軽微である。一方、事業の多くを業務委託するため、変動費比率が高い費用構造を持つ。**
#### 解説
- **問題文の該当箇所**: 与件文、第 3 問の費用内訳表と予測値。
- **答案作成の根拠**:
- **投資規模**: 新規営業所開設による固定費増加は 34 百万円。これは既存 3 拠点分の個別費 99 百万円(1 拠点あたり 33 百万円)とほぼ同水準であり、大規模な設備投資ではなく、賃借料や人件費が中心の軽微な投資であることがわかる。
- **費用構造**: 費用内訳表から、変動費が総費用の大半を占めていることがわかる(変動費 1,047 / 総費用 1,485 ≒ 70%)。特に外注費が大きく、外部への業務委託に依存した事業モデルであることが読み取れる。この結果、変動費比率が高く、固定費比率が低い費用構造となっている。
これらの特徴を指定文字数内でまとめる。
- **使用した経営学の知識**: **CVP 分析**と**財務レバレッジ**。変動費比率が高い費用構造は、損益分岐点売上高が低くなる傾向があり、売上の増減が利益に直接的に反映されやすい。これは「経営レバレッジが低い」状態ともいえる。
---
### (設問 3)
(設問 2 )の特徴を有する営業拠点の開設が D 社の成長性に及ぼす当面の影響、および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60 字以内で説明せよ。
### 回答例(49 字)
**当面は低投資で売上を伸ばし成長に貢献する。将来的には協力事業者や人材の確保・育成が制約となりうる。**
#### 解説
- **問題文の該当箇所**: 与件文全体、特に事業モデルと人的資源に関する記述。および(設問 2)の分析結果。
- **答案作成の根拠**:
- **当面の影響**: (設問 2)で分析した通り、低投資・低固定費で拠点を展開できるため、少ないリスクで売上拡大が可能。これは企業の成長に直接的に貢献する。変動費率が高いため利益率は低いかもしれないが、売上増による利益額の増加は見込める。
- **将来的な見通し(課題)**: D 社のビジネスモデルは「協力個人事業主等」や「加盟物流業者」という外部資源に大きく依存している。与件文にも「確保・育成」「緊密な連携」が重要要素であり、「人手不足」が課題であると明記されている。したがって、事業を拡大し続けるには、この外部ネットワークを質・量ともに維持・拡大する必要があり、これが将来の成長のボトルネック(制約要因)になる可能性が高い。
- **使用した経営学の知識**: **成長戦略**と**リソース・ベースト・ビュー(RBV)**。企業成長のドライバーと制約要因を分析する視点が求められる。D 社の成長は外部資源に依存しており、その管理能力が持続的競争優位の鍵となる。
## 第 4 問(配点 15 点)
D 社が受注したサポート業務にあたる際に業務委託を行うことについて、同社の事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があるのはどのような場合か。また、それを防ぐにはどのような方策が考えられるか。70 字以内で説明せよ。
### 回答例(69 字)
**委託先の品質低下で顧客の信頼を失うことや、外注費高騰で収益が悪化する場合。マニュアル整備や研修で品質を管理し、協力会社との連携強化で防ぐ。**
#### 解説
- **問題文の該当箇所**: 与件文の「協力個人事業主等の確保・育成および加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素になっている」という記述。
- **答案作成の根拠**:
- **悪影響を及ぼす場合(リスク)**: 外部委託に依存するビジネスモデルのリスクを具体的に挙げる。
1. **品質管理リスク**: 委託先の業務品質を直接コントロールしにくいため、サービスレベルが低下し、D 社のブランドイメージや顧客からの信頼を損なう可能性がある。
2. **コストリスク**: 外部委託への依存度が高まると、委託先に対する交渉力が弱まり、外注費の高騰を招く可能性がある(第 3 問でも外注費 7%上昇が予測されている)。
3. **ノウハウ空洞化リスク**: 業務を外部に任せることで、社内にノウハウが蓄積されにくくなる。
- **対策**: 上記リスクへの対応策を記述する。
- (品質管理に対して)与件文にある「サービス水準の把握・向上」を具体化する。業務マニュアルの整備・徹底、定期的な研修や現場指導、モニタリングなどが考えられる。
- (コストや連携に対して)「緊密な連携」を強化し、パートナーとしての関係を構築することで、安定的な協力関係を築く。
- **使用した経営学の知識**: **アウトソーシングのマネジメント**。アウトソーシングはコスト削減や専門性活用といったメリットがある一方、品質管理や依存度上昇といったリスクを伴う。成功のためには、委託先との適切な関係構築と管理体制が不可欠である。
## AI への指示
あなたは、中小企業診断士二次試験(事例 Ⅳ:財務・会計)の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。
**評価の基本方針**
- **模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。**
- あなたの解答の評価は、第一に**与件文の記述・数値と設問要求に忠実であるか**、第二に**中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているか**を最優先の基準とします。
**【記述問題の評価方針】**
- 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その**独自の価値を積極的に評価**してください。
- 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という**視点を提供するもの**として活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。
**【計算問題の評価方針】**
- 計算問題は、**最終的な計算結果**だけでなく、そこに至る**計算過程(プロセス)**を重視して評価します。
- **【計算過程スキップの例外】**
- ただし、あなたの回答において `(b)計算過程 スキップ`(あるいは `#### (b)計算過程 スキップ` など、スキップの意図が明確な記載)がされている場合に限り、**(a) の計算結果のみを評価対象とします。**
- この場合、計算結果が正しければ計算過程も正しかったものとみなし、計算結果が間違っていれば計算過程にも誤りがあったものとして評価します(詳細な部分点評価は行いません)。
- **【計算過程の記載がある場合】**
- たとえ最終的な数値が間違っていても、計算の**基本的な考え方**、**立式**、**使用した数値(与件文からのピックアップ)**が正しければ、**部分点を加点**する視点で評価します。
- **【共通事項】**
- **第 1 問設問 1**の財務分析指標の選択のように、**複数の正解(別解)が想定される場合**は、模範解答と異なっていても、与件文から妥当性が読み取れれば正解として評価します。
- **CVP**や**NPV**など、解法がほぼ一意に決まる問題は、**標準的な解法ステップ**を踏めているかを確認します。(※スキップの場合は結果から推定します)
上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、**60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点**で私の解答を添削してください。**加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイント**をバランス良く指摘してください。
評価は点数ではなく、下記の**ABCDEF 評価基準**に沿って行ってください。
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### ABCDEF 評価基準
- **A 評価 (完璧 / 80 点以上):** 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成・計算過程が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
- **B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点):** 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成・計算過程が明快な、上位合格答案レベル。
- **C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点):** 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻や計算ミスがない。安定して合格点をクリアできるレベル。
- **D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点):** 解答の方向性は合っているが、根拠の不足やケアレスミスが散見される。合否が分かれるレベル。
- **E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点):** 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。計算の前提条件を誤解している。合格には改善が必要なレベル。
- **F 評価 (不合格レベル / 49 点以下):** 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。
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### 入力情報
与件文、設問文、出題の趣旨、解説、あなたの回答を参照してください。
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### 出力項目
以下の形式で、詳細なフィードバックをお願いします。
冒頭で `ABCDEF 評価基準`の定義を説明します。
**1. 設問ごとの添削**
**模範解答(比較参考用)**
`回答例と解説`の回答例(計算問題の場合は(a)解答欄と(b)計算過程)を出力してください。
**あなたの回答**
模範回答との比較用にあなたの回答を掲載してください。
- **評価:** この設問の評価を **A / B / C / D / E / F** で端的に示してください。
- **フィードバック:**
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**【計算問題の場合】 (例:第 1 問設問 1、第 2 問、第 3 問)**
- **① 計算結果の正誤:**
最終的な数値、単位(円、千円、基など)、端数処理(切り上げ、四捨五入など)は設問要求通りで、模範解答と一致しているか。
- **② 計算過程(プロセス)の評価:**
- **【計算過程の記載がある場合】**
- **立式・アプローチ:** 問題を解くための基本的な考え方(CVP、NPV、LP、財務指標の定義など)は正しいか。
- **数値のピックアップ:** 与件文や資料から、計算に必要な数値を正しく(漏れなく、間違えなく)引用できているか。(例: NPV 計算での機会費用、運転資本、設備売却益の税金計算など)
- **計算の正確性:** 途中の計算ステップにミスはないか。
- **【計算過程が `スキップ` の場合】**
- **(a) 計算結果の正誤に基づき、本項目も評価します。**
- (a) が正解の場合:計算過程も正しかったものとみなし、高い評価(A または B 評価相当)とします。
- (a) が不正解の場合:計算過程のいずれかのステップ(立式、数値ピックアップ、計算正確性)に誤りがあったものとみなし、評価を下げます。この場合、具体的な誤り箇所の特定は行いませんが、推定される原因を「④ 改善提案」で指摘します。
- **③ 指標選択の妥当性 (第 1 問設問 1 のみ):**
模範解答と異なる指標を選択した場合、その指標が D 社の特徴(優れている点・劣っている点)を示す上で妥当か、与件文から根拠を見いだせるか(別解として成立するか)を評価する。
- **④ 改善提案(失点・部分点分析):**
- **失点箇所:** どこで間違えたか(数値の誤用、立式の誤り、計算ミス、端数処理ミスなど)を具体的に指摘する。(※ `スキップ` されていて結果が不正解の場合、推定される誤りの原因を指摘します)
- **部分点獲得可能性:** 「ここまでは合っているので、配点〇点中 △ 点は期待できる」という視点で評価する。(※ `スキップ` の場合は適用されません)
- **改善点:** 次に同じミスをしないために、どの数値に着目すべきか、どの公式を確認すべきかを具体的にアドバイスする。
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**【記述問題の場合】 (例:第 1 問設問 2、第 4 問)**
- **① 設問解釈と方向性:**
設問の意図(問われていること)を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。
- **② 与件文・財務諸表の活用:**
解答の根拠として、与件文中のどの記述(SWOT)や、どの財務数値(計算した指標など)を効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。
- **③ 知識と論理構成:**
診断士としての財務・会計知識を適切に応用できているか。「A(財務状況)だから B(助言)」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。
- **④ 具体性と表現:**
抽象論に終始せず、D 社の状況に合わせた具体的な記述ができているか。設問の字数制限(例: 80 字)の中で、要点を簡潔にまとめられているか。
- **⑤ 改善提案:**
どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、**「どの与件文(または財務指標)のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。
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**2. 総評**
- **総合評価:** 全ての設問を考慮した最終評価を **A / B / C / D / E / F** で示してください。
- **全体を通しての強み:** 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点(計算の正確性、与件文の読み取り、論理構成など)を挙げてください。
- **全体を通しての課題:** 合格のために、最も優先的に改善すべき点(ケアレスミス、時間配分、特定の分野の知識不足など)を指摘してください。
- **合格に向けたアドバイス:** 今後の学習方針について、特に事例 Ⅳ の学習(計算練習、過去問演習の方法など)について具体的なアドバイスをお願いします。
# あなたの回答(平成 30 年度 事例 Ⅳ)
**スキップ機能について**
計算過程の記載が求められる設問((b)計算過程)で「スキップ」と記入した場合、(a) の計算結果のみをもって採点します。計算結果が正しければ過程も正とみなし、誤っていれば過程も誤りとして評価します(部分点はありません)。
## 第 1 問(配点 24 点)
### (設問 1)
#### ①:優れている指標
- (a)
- (b)(単位:)
#### ②:劣っている指標 1
- (a)
- (b)(単位:)
#### ③:劣っている指標 2
- (a)
- (b)(単位:)
### (設問 2)50 字以内
## 第 2 問(配点 31 点)
### (設問 1)
#### ⒜-① 加重平均資本コスト(WACC)
(%)
#### ⒝-① 計算過程
スキップ
#### ⒜-② 要求されるキャッシュフロー
(百万円)
#### ⒝-② 計算過程
スキップ
### (設問 2)
#### ⒜ 吸収合併により増加したキャッシュフロー
(百万円)
#### ⒝ 計算過程
スキップ
#### ⒞ 記述(70 字以内)
### (設問 3)
#### ⒜ キャッシュフローの成長率
(%)
#### ⒝ 計算過程
スキップ
## 第 3 問(配点 30 点)
### (設問 1)
#### ⒜-① 変動費率
(%)
#### ⒝-① 計算過程
スキップ
#### ⒜-② 営業利益
(百万円)
#### ⒝-② 計算過程
スキップ
### (設問 2)60 字以内
### (設問 3)60 字以内
## 第 4 問(配点 15 点)
### 設問(70 字以内)