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令和 4 年度(2022 年度)事例 Ⅱ 回答と解説

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第 1 問(配点 30 点)

設問文

B 社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から 150 字以内で述べよ。

回答例(127 字)

顧客はホテル・飲食店等の法人需要が激減した一方、周辺の家族層や専門店の魅力に気付いた個人客が増加。競合は大手食肉卸売業者、近隣スーパー、ネット上の同業者。自社は高品質な仕入・加工技術とメニュー提案力が強みだが、卸売依存度が高くオンライン販売に課題がある。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • Customer(顧客): 「ホテル・旅館や飲食店などを主要取引先とする B 社の経営は大打撃を受けた」、「現役世代が家族で居住する集合住宅も多い」、「料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客が、食肉専門店の魅力に気づいて足を運ぶようになった」
    • Competitor(競合): 「スーパーは大手食肉卸売業者と取引を行うようになった」、「B 社の周囲 5km 圏内には…全国チェーンのスーパーが 3 店舗」、「コロナ禍で同じことを考えた食肉販売業者は多く、B 社紹介ページはネット上で埋もれ」
    • Company(自社): 「良い食肉を仕入れられる体制」、「高い技術力を有する職人」、「飲食店に対してメニュー提案を行ったり」、「卸売事業が 9 割」、「B 社の売り上げが他社の動向に左右されている」、「ネット上で埋もれ、消費者の目にはほとんど留まらないようだった」
  • 答案作成の根拠

    1. 顧客(Customer): 主要顧客であったホテル・飲食店などの法人需要が激減した一方、商圏に多い家族層や、巣ごもり需要で価値を見出した個人客が増加したという、顧客構造の具体的な変化を明記しました。
    2. 競合(Competitor): 現在の競合である近隣スーパーネット同業者に加え、過去に取引を奪われた経緯のある大手食肉卸売業者もサプライチェーン上の競合として含め、網羅性を高めました。
    3. 自社(Company): 強みとして「高品質な仕入れ」「高い加工技術」に、飲食店へのコンサルテーションで培った「メニュー提案力」を追加しました。弱みである「卸売への高い依存度」と「オンライン販売の課題」は維持し、B 社の現状をより詳細に分析しました。
  • 使用した経営学の知識

    • 3C 分析: 企業の戦略立案の際に用いられる環境分析のフレームワーク。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の 3 つの視点から分析し、KSF(Key Success Factor:成功要因)を導き出すために用います。本回答では、より解像度の高い分析を行うことで、B 社が直面する経営環境を多角的に捉えています。

第 2 問(配点 20 点)

設問文

B 社は、X 県から「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ、県の社会経済活動の促進に力を貸してほしい」という依頼を受け、B 社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行うことにした。商品コンセプトと販路を明確にして、100 字以内で助言せよ。

回答例(94 字)

商品コンセプトは、B 社の加工技術で X 県産の山の幸・海の幸と高品質な食肉を組み合わせ、新たな地域ブランドとして確立すること。販路は、百貨店の贈答品売場や観光客が訪れる道の駅、土産物店とする。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ」
    • 「B 社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行う」
    • 山の幸、海の幸の特産品にも恵まれ」
    • 「百貨店向けには贈答用を含めた最高級品質の食肉や食肉加工品の販売」
    • 「高速道路の土産物店、道の駅などで販売している」
  • 答案作成の根拠 ご指摘に基づき、商品コンセプトをより具体的に記述しました。

    1. 商品コンセプト: B 社の強み(加工技術、高品質な食肉)と、与件文に明記されている X 県の資源「山の幸・海の幸」を組み合わせることを明示しました。これにより、どのような特産品を活用するかがより明確になります。これを単なる商品で終わらせず、「地域ブランド」として確立することで、高付加価値化と持続的な地域貢献を目指す戦略としました。
    2. 販路: 確立したいブランドイメージ(地域性、高級感)とターゲット顧客(贈答品購入者、観光客)に合致するチャネルとして、既存販路である「百貨店」や「道の駅、土産物店」を選定しました。
  • 使用した経営学の知識

    • 地域ブランディング: 地域が持つ「山の幸・海の幸」といった具体的な資源を活かして独自のブランドを構築し、差別化を図る戦略です。B 社が主体となり X 県の第一次産業と連携することで、地域の活性化に貢献します。
    • マーケティング・ミックス(4P):
      • Product(製品戦略): 地域の具体的な資源(山の幸・海の幸)を組み込み、地域ブランドという無形の価値を付与した製品開発。
      • Place(流通戦略): ブランドイメージに合致した販路限定(チャネル・マネジメント)。

第 3 問(配点 20 点)

設問文

アフターコロナを見据えて、B 社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたいと考えている。どのような施策をとればよいか、顧客ターゲットと品揃えの観点から 100 字以内で助言せよ。

回答例(86 字)

料理好きの顧客と周辺の現役世代家族を標的とする。品揃えは希少部位や対面での調理法提案に加え、加工技術を生かした時短調理可能なミールキットや栄養バランスの良い惣菜を強化する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「アフターコロナを見据えて、B 社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたい」
    • 「料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客が、食肉専門店の魅力に気づいて足を運ぶようになった」
    • 「現役世代が家族で居住する集合住宅も多い」
    • 「対面接客による買物客のニーズに合わせた販売」
    • 「高い技術力を有する職人を B 社に招き入れ、良質でおいしい食肉加工品を製造できる体制」
  • 答案作成の根拠 設問の指示通り、「顧客ターゲット」と「品揃え」の観点から施策を助言する。

    1. 顧客ターゲット: コロナ禍で増加した「料理の楽しさに目覚めた客」の固定客化を図るとともに、商圏の特性である「現役世代が家族で居住する集合住宅」を新たなターゲットとして設定する。これにより、専門店ならではの価値を求める層と、利便性を求める層の両方を取り込む。
    2. 品揃え: 各ターゲットのニーズに応える品揃えを提案する。
      • 料理好き向け: スーパーでは手に入らない「希少部位」や、専門知識を活かした「調理法提案」といった、専門性を活かした付加価値を提供する。
      • 現役世代家族向け: 多忙な生活をサポートするため、B 社の「高い加工技術」を活用した「ミールキット」や、栄養面も考慮した「惣菜」を充実させ、時間的価値(時短)を提供する。
  • 使用した経営学の知識

    • STP 分析:
      • セグメンテーション/ターゲティング: 顧客を「料理好き層」「ファミリー層」などに細分化し、狙うべきターゲットを明確にする。
      • ポジショニング: 品揃えの工夫により、価格競争に陥りがちなスーパーとの差別化を図り、専門店の独自の地位を築く。
    • アンゾフの成長マトリクス: 「市場浸透戦略」にあたる。既存市場(直営店周辺顧客)に対して、既存技術(加工技術)を活かした新商品(ミールキット等)を投入し、売上拡大を図る。

第 4 問(配点 30 点)

設問文

B 社社長は、新規事業として、最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出すつもりである。ただし、コロナ禍で試した大手ネットショッピングモールでの自社単独の食肉販売がうまくいかなかった経験から、オンライン販売事業者との協業によって行うことを考えている。

中小企業診断士に相談したところ、B 社社長は日本政策金融公庫『消費者動向調査』(令和 4 年 1 月)を示された。これによると、家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は「献立の考案」(29.4%)、「調理」(19.8%)、「後片付け」(18.2%)、「食材の購入」(10.7%)、「容器等のごみの処分」(8.5%)、「盛り付け・配膳」(3.3%)、「特にない」(10.3%)とのことであった。

B 社はどのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するために B 社はどのような提案を行うべきか、150 字以内で助言せよ。

回答例(140 字)

協業先はレシピ付きミールキット宅配事業者。B 社は高品質な食肉と加工技術を生かしたミールキットの共同開発を提案する。直営店で収集した顧客ニーズに基づいたメニュー開発のコンサルテーションや献立考案や調理の負担軽減のためのメニュー開発や半加工も担い、協業の成功と長期的関係構築を目指す。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「オンライン販売事業者との協業によって行う」
    • 「家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は『献立の考案』、『調理』」
    • 「取引先へのコンサルテーションも手がけるようになった。…飲食店に対してメニュー提案を行ったり、その半加工を請け負ったりすることも増えている。」
    • 「コロナ禍の巣ごもり需要拡大の影響で、…食肉売店での販売だけが急上昇した」
  • 答案作成の根拠 この回答は、B 社が単なる製造委託先ではなく、事業成功に不可欠なソリューションパートナーであることを協業先に示す、戦略的な提案となっています。

    1. 協業相手と中核提案: 消費者調査の結果から協業相手を「レシピ付きミールキット宅配事業者」と特定し、B 社の本業の強みである「高品質な食肉と加工技術」を活かした「ミールキットの共同開発」を提案の核に据えています。
    2. 独自の付加価値提案: B 社の提案価値を最大化するため、以下の点を統合しました。
    • 消費者課題の解決: 協業の目的を、消費者最大の不満である「献立考案や調理の負担軽減」の解決と明確に位置づけています。
    • 独自資源の活用: その解決策として、BtoB で培った「コンサルテーション」能力と、直営店という BtoC 接点から得られる「顧客ニーズ」という独自の情報資源を組み合わせ、メニュー開発から半加工まで一貫して担うことを提案しています。 これにより、B 社は協業先にとって代替困難なパートナーとなり、持続的で強固な「長期的関係」の構築を目指します。
  • 使用した経営学の知識

    • アライアンス(戦略的提携): B 社の強み(製造技術、情報収集力、企画提案力)と協業先の強み(オンライン販路、顧客基盤)を組み合わせ、シナジーを創出します。B 社は単なるサプライヤーではなく、企画開発から関与するパートナーとしての地位を確立します。
    • バリューチェーン: B 社が「メニュー開発」という上流工程から「半加工」という下流工程まで関与することで、協業先のバリューチェーンに深く入り込み、関係性を強化します。
    • コア・コンピタンス: 企業の核となる強み(本件では「コンサルテーション能力」や「加工技術」)を、オンラインという新たな事業領域に展開し、競争優位を築く戦略です。

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