Gemini 2.5 Pro による回答と解説( 令和 4 年度(2022 年度)事例 Ⅱ)
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第 1 問(配点 30 点)
設問文
B 社の現状について、3C(Customer:顧客、Competitor:競合、Company:自社)分析の観点から 150 字以内で述べよ。
回答例(112 字)
顧客はコロナ禍でホテル等法人が激減し直営店の個人客が増加。競合は近隣スーパーやネット上の同業者である。自社は高品質な仕入・加工技術と多様な顧客対応力が強みだが、売上の卸依存度が高く経営が不安定で、オンライン販売に課題がある。
解説
問題文の該当箇所
- Customer(顧客): 「ホテル・旅館や飲食店などを主要取引先とする B 社の経営は大打撃を受けた」、「コロナ禍の巣ごもり需要拡大の影響で、…食肉売店での販売だけが急上昇した」、「料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客が、食肉専門店の魅力に気づいて足を運ぶようになった」
- Competitor(競合): 「B 社の周囲 5km 圏内には広大な駐車場を構える全国チェーンのスーパーが 3 店舗あり、食肉も取り扱っている」、「コロナ禍で同じことを考えた食肉販売業者は多く、B 社紹介ページはネット上で埋もれ、消費者の目にはほとんど留まらないようだった」
- Company(自社): 「良い食肉を仕入れられる体制が整っている」、「高い技術力を有する職人を B 社に招き入れ、良質でおいしい食肉加工品を製造できる体制を整えた」、「個々の顧客の要望に応じた納品が可能になった」、「卸売事業が 9 割、直営小売事業が 1 割」、「B 社の売り上げが他社の動向に左右されている」
答案作成の根拠 設問の指示通り、B 社の現状を 3C 分析のフレームワークで整理する。
- 顧客(Customer): 主要顧客であったホテル・旅館などの法人需要がコロナ禍で激減した一方、巣ごもり需要を背景に直営店の個人顧客が急増したという顧客構造の変化を指摘する。
- 競合(Competitor): 日常使いの食肉を扱う近隣の大手スーパーと、ネット販売で多数存在する同業者が主な競合であることを示す。
- 自社(Company): 強みとして「高品質な仕入れ」「高い加工技術」「多様な顧客ニーズへの対応力」を挙げる。一方、弱みとして「卸売事業への高い依存度」とそれに伴う経営の不安定性、そして「オンライン販売のノウハウ不足」という課題を明確にする。 これらを指定文字数内で簡潔にまとめる。
使用した経営学の知識
- 3C 分析: 企業の戦略立案の際に用いられる環境分析のフレームワーク。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の 3 つの視点から分析し、KSF(Key Success Factor:成功要因)を導き出す。本問では、B 社の現状を客観的に分析するために用いられる。
第 2 問(配点 20 点)
設問文
B 社は、X 県から「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ、県の社会経済活動の促進に力を貸してほしい」という依頼を受け、B 社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行うことにした。商品コンセプトと販路を明確にして、100 字以内で助言せよ。
回答例(86 字)
X 県産の野菜や果物等の特産品を B 社の食肉と組み合わせた高級志向の加工品を開発。生産者の顔が見える物語性を付与し、贈答品として百貨店や観光客向けに道の駅、土産物店で販売する。
解説
問題文の該当箇所
- 「地元事業者と協業し、第一次産業を再活性化させ」
- 「B 社の製造加工技術力を生かして新たな商品開発を行う」
- 「X 県は、…野菜・果物・畜産などの農業、漁業…がバランスよく発展している。山の幸、海の幸の特産品にも恵まれ」
- 「百貨店向けには贈答用を含めた最高級品質の食肉や食肉加工品の販売」
- 「高速道路の土産物店、道の駅などで販売している」
答案作成の根拠 設問で求められている「商品コンセプト」と「販路」を明確にすることが必要である。
- 商品コンセプト: X 県の依頼である「第一次産業の再活性化」と B 社の強みである「製造加工技術力」を掛け合わせる。具体的には、X 県産の特産品(野菜、果物など)と B 社の高品質な食肉を組み合わせた、付加価値の高い新商品を考案する。スーパーの商品と差別化するため、高級志向とし、「生産者の物語」を加えてブランド価値を高める。
- 販路: 開発する商品が「高級志向」「贈答品」としての性格を持つことから、既存の販路である「百貨店」が適している。また、「観光客」も重要なターゲットとなるため、「道の駅」や「高速道路の土産物店」も有効な販路となる。
使用した経営学の知識
- 6 次産業化: 第一次産業(生産)、第二次産業(加工)、第三次産業(販売)を融合させ、新たな価値を創出する経営形態。本件では、B 社(第二次・第三次)が X 県の第一次産業事業者と連携することで、地域資源の価値向上と活性化を目指す。
- マーケティング・ミックス(4P):
- Product(製品戦略): 地域特産品を活用した高付加価値商品の開発。
- Place(流通戦略): 商品コンセプトに合った販路(百貨店、道の駅など)の選定。
第 3 問(配点 20 点)
設問文
アフターコロナを見据えて、B 社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたいと考えている。どのような施策をとればよいか、顧客ターゲットと品揃えの観点から 100 字以内で助言せよ。
回答例(86 字)
料理好きの顧客と周辺の現役世代家族を標的とする。品揃えは希少部位や対面での調理法提案に加え、加工技術を生かした時短調理可能なミールキットや栄養バランスの良い惣菜を強化する。
解説
問題文の該当箇所
- 「アフターコロナを見据えて、B 社は直営の食肉小売店の販売力強化を図りたい」
- 「料理の楽しさに目覚めた客や、作りたての揚げ物を買い求める客が、食肉専門店の魅力に気づいて足を運ぶようになった」
- 「現役世代が家族で居住する集合住宅も多い」
- 「対面接客による買物客のニーズに合わせた販売」
- 「高い技術力を有する職人を B 社に招き入れ、良質でおいしい食肉加工品を製造できる体制」
答案作成の根拠 設問の指示通り、「顧客ターゲット」と「品揃え」の観点から施策を助言する。
- 顧客ターゲット: コロナ禍で増加した「料理の楽しさに目覚めた客」の固定客化を図るとともに、商圏の特性である「現役世代が家族で居住する集合住宅」を新たなターゲットとして設定する。これにより、専門店ならではの価値を求める層と、利便性を求める層の両方を取り込む。
- 品揃え: 各ターゲットのニーズに応える品揃えを提案する。
- 料理好き向け: スーパーでは手に入らない「希少部位」や、専門知識を活かした「調理法提案」といった、専門性を活かした付加価値を提供する。
- 現役世代家族向け: 多忙な生活をサポートするため、B 社の「高い加工技術」を活用した「ミールキット」や、栄養面も考慮した「惣菜」を充実させ、時間的価値(時短)を提供する。
使用した経営学の知識
- STP 分析:
- セグメンテーション/ターゲティング: 顧客を「料理好き層」「ファミリー層」などに細分化し、狙うべきターゲットを明確にする。
- ポジショニング: 品揃えの工夫により、価格競争に陥りがちなスーパーとの差別化を図り、専門店の独自の地位を築く。
- アンゾフの成長マトリクス: 「市場浸透戦略」にあたる。既存市場(直営店周辺顧客)に対して、既存技術(加工技術)を活かした新商品(ミールキット等)を投入し、売上拡大を図る。
- STP 分析:
第 4 問(配点 30 点)
設問文
B 社社長は、新規事業として、最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出すつもりである。ただし、コロナ禍で試した大手ネットショッピングモールでの自社単独の食肉販売がうまくいかなかった経験から、オンライン販売事業者との協業によって行うことを考えている。
中小企業診断士に相談したところ、B 社社長は日本政策金融公庫『消費者動向調査』(令和 4 年 1 月)を示された。これによると、家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は「献立の考案」(29.4%)、「調理」(19.8%)、「後片付け」(18.2%)、「食材の購入」(10.7%)、「容器等のごみの処分」(8.5%)、「盛り付け・配膳」(3.3%)、「特にない」(10.3%)とのことであった。
B 社はどのようなオンライン販売事業者と協業すべきか、また、この際、協業が長期的に成功するために B 社はどのような提案を行うべきか、150 字以内で助言せよ。
回答例(115 字)
協業先はレシピ付きミールキット宅配事業者。B 社は高品質な食肉と加工技術を生かした専門店の味を楽しめるミールキットの共同開発を提案する。さらに、献立考案や調理の負担を軽減するため、メニュー開発や半加工も担い、長期的な関係を構築する。
解説
問題文の該当箇所
- 「最終消費者へのオンライン販売チャネル開拓に乗り出す」
- 「オンライン販売事業者との協業によって行う」
- 「家庭での食に関する家事で最も簡便化したい工程は『献立の考案』、『調理』」
- 「B 社は食肉販売を主な事業としていたため、…高度な加工を必要としなかった。しかし、…顧客ニーズにきめ細かく合わせることが必要となってきた。」
- 「飲食店に対してメニュー提案を行ったり、その半加工を請け負ったりすることも増えている。」
答案作成の根拠 設問で求められている「協業すべき事業者」と「B 社が行うべき提案」の 2 点を、調査データを根拠に助言する。
- 協業相手: 消費者ニーズの第 1 位「献立の考案」、第 2 位「調理」の簡便化を事業コンセプトとする「レシピ付きミールキット宅配事業者」が最適であると判断する。これにより、B 社の弱みであるオンラインでの集客を協業先に任せることができる。
- B 社の提案:
- 価値提案: B 社の強み(高品質な食肉、加工技術)を活かし、他社とは差別化された「専門店の味を楽しめる高付加価値ミールキット」の共同開発を提案する。これは協業先にとっても魅力的な商品となる。
- 役割提案: 単なる食材供給者にとどまらず、BtoB で培った「メニュー提案」や「半加工」のノウハウを提供し、消費者ニーズである「献立考案」「調理」の簡便化に直接的に貢献する役割を担うことを提案する。これにより、B 社は協業において不可欠なパートナーとなり、安定的で長期的な関係を築くことができる。
使用した経営学の知識
- アライアンス(戦略的提携): 複数の企業が互いの経営資源(技術、販路、ブランドなど)を持ち寄り、協力して事業を行うこと。B 社の弱み(オンライン販売ノウハウ)を協業先の強みで補い、B 社の強み(商品開発力、加工技術)を協業先に提供することで、Win-Win の関係を目指す。
- バリューチェーン: 企業の事業活動を価値(バリュー)の連鎖として捉える考え方。B 社が単なる「調達・製造」だけでなく、「メニュー開発(研究開発)」まで踏み込むことで、バリューチェーン全体における自社の付加価値を高め、協業における優位性を確保する。