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令和 3 年度(2021 年度)事例 Ⅱ 回答と解説

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第 1 問(配点 20 点)

設問文

2021 年(令和 3 年)8 月末時点の B 社の状況を、移動販売の拡大およびネット販売の立ち上げを目的として SWOT 分析によって整理せよ。①〜④ の解答欄に、それぞれ 30 字以内で述べること。

回答例

  • ① 強み(29 字):良質な水と地元産大豆、京都で磨いた職人技による商品開発力。
  • ② 弱み(28 字):ネット販売のノウハウ不足と、主婦層など若年顧客層の弱さ。
  • ③ 機会(30 字):Y 社 EC サイトとの連携可能性と、内食や食育への関心の高まり。
  • ④ 脅威(30 字):コロナ禍による対面販売の制約と、ネット販売における競争激化。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • ① 強み: 「清流を水源とする地下水は良質な軟水」「地元産大豆、水にこだわった豆腐は評判」「京都での修行を終えて」「手作り豆腐セットを開発」
    • ② 弱み: 「ノウハウもなく、投資に見合った利益が見込めないとの判断」「主婦層の顧客が少ないという課題」
    • ③ 機会: 「Y 社サイトのお得意さまに限定販売」「Y 社サイトでコラボ企画と称して販売」「食べ物が多くの人の努力を経て食卓に届くことを孫に教えたいという声」「リモートワークの浸透を受け、自宅での食事にこだわりを持つ家庭が増え」
    • ④ 脅威: 「人的接触を避けるために、戸別訪問を断ったりする顧客が増えてきた」「全国に多数展開される豆腐 EC サイト」
  • 答案作成の根拠 設問要求である「移動販売の拡大およびネット販売の立ち上げ」という目的を踏まえ、B 社の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理する。

    • ① 強み: B 社の競争優位性の源泉は、創業以来のこだわりである「地元産大豆」と「良質な水」、そして社長が「京都での修行」で身につけた技術力である。これらが「手作り豆腐セット」などの独自商品開発力の基盤となっているため、これを強みとした。
    • ② 弱み: B 社はネット販売について「ノウハウもなく」「投資に見合った利益が見込めない」と判断した過去があり、明確な弱みである。また、今後の成長市場として主婦層を狙う上で「主婦層の顧客が少ない」ことは克服すべき課題であるため、これを弱みとした。
    • ③ 機会: 外部環境として、既に協力関係にあり全国に販路を持つ「Y 社サイト」との連携はネット販売立ち上げの最大の好機である。また、コロナ禍を背景とした「内食需要」や、収穫祭への子連れ参加者の増加に見られる「食育への関心」の高まりは、新たな顧客層獲得の機会となるため、これを機会とした。
    • ④ 脅威: コロナ禍による「人的接触の回避」は、B 社の主力である移動販売にとって直接的な脅威である。また、ネット販売に参入する上では、「全国に多数展開される豆腐 EC サイト」との競争は避けられない脅威となるため、これを脅威とした。
  • 使用した経営学の知識

    • SWOT 分析: 企業の外部環境(機会・脅威)と内部環境(強み・弱み)を分析し、戦略立案に活かすフレームワーク。本問では、このフレームワークに基づき B 社の現状を整理する能力が問われている。

第 2 問(配点 25 点)

設問文

B 社社長は社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたいと考えている。そのためには、どの商品を、どのように販売すべきか。ターゲットを明確にした上で、中小企業診断士の立場から 100 字以内で助言せよ。

回答例(99 字)

Y 社の顧客である全国の食通を対象に、豆腐丼手作りセットを開発。Y 社の良質な水と地元産大豆を使い、レシピは京都で修行した職人が考案したことを伝える動画と共に販売し、高付加価値化を図りファンを獲得する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたい」
    • 「グルメ雑誌で Y 社サイトの新米、佃煮が紹介されたのをきっかけに、全国の食通を顧客として獲得し、サイトでの売上が拡大している。」
    • 「清流を水源とする地下水は良質な軟水」「地元産大豆、水にこだわった豆腐は評判」
    • 「現社長が、京都での修行を終えて B 社を継承した」
  • 答案作成の根拠 この回答は、B 社の持つ有形・無形の資産を最大限に活用し、オンラインで「いかに価値を伝えるか」という課題に具体的に答えるものです。

    1. ターゲットの明確化 : Y 社の EC サイトの既存顧客である 「全国の食通」 にターゲットを絞っています。この層は、価格よりも品質、産地、作り手の哲学といった 背景にあるストーリー を重視するため、B 社のこだわりを最も理解してくれる顧客層と言えます。

    2. 商品の体験価値化 : ただの豆腐ではなく「豆腐丼手作りセット」とすることで、家庭で出来たての味を再現する 「体験(コト)」 を提供します。これにより、単なる食品販売から脱却し、顧客に楽しみや満足感といった付加価値を与えます。

    3. 強みの映像化による価値伝達: オンライン販売の最大の課題は、商品のこだわりや品質を直接伝えられない点です。この課題を克服するため、動画コンテンツを活用します。

      • 素材の真正性: 「良質な水」や「地元産大豆」の映像は、品質の高さと産地へのこだわりに強力な説得力を持たせます。
      • 技術の権威性: 「京都で修行した職人」が考案したという事実は、商品の信頼性と専門性を担保し、価格への納得感を醸成します。 この映像を通じて、設問にある社長の「地元産大豆の魅力を伝えたい」という想いを、言葉以上に雄弁に語ることができます。
    4. 最終目標の設定: 目的を単なる売上向上ではなく、 「高付加価値化」「ファン獲得」 に置いています。これは、価格競争に陥らず、B 社のブランドを長期的に愛してくれる優良顧客を全国に育成するという、持続可能な成長戦略を描くものです。

  • 使用した経営学の知識

    • STP マーケティング: 市場の中から「全国の食通」という、B 社の価値観と合致する層をターゲットに設定し、「職人が素材からこだわって作る、本物の食体験」としてポジショニングする戦略です。
    • コンテンツマーケティング: 顧客にとって価値のある情報(こだわりを伝える動画)を提供することで、信頼関係を築き、購買やファン化を促進する手法です。EC サイト上で動画を配信することは、この手法の実践にあたります。
    • ブランディング: 動画を通じて B 社の哲学やこだわりを一貫して伝えることは、顧客の頭の中に「B 社=高品質で信頼できる職人の工房」というブランドイメージを構築する活動です。ファン獲得は、ブランディングの成功によってもたらされます。

第 3 問(配点 30 点)

設問文

B 社のフランチャイズ方式の移動販売において、置き配を導入する場合に、それを利用する高齢者顧客に対して、どのような取り組みを実施すべきか。中小企業診断士の立場から ⒜ フランチャイザー、⒝ フランチャイジーに対して、それぞれ 50 字以内で助言せよ。

回答例

  • ⒜ フランチャイザー(50 字):冷蔵ボックスの無償貸与や利用方法と安全性を図解したチラシを作成し、フランチャイジーの活動を支援する。
  • ⒝ フランチャイジー(49 字):従来通り電話で注文を受け、安否確認や世間話を行う。置き配時に手紙を添え、関係性を維持・深化させる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「B 社はその他のマーケティング活動、支援活動を担当する」
    • 「フランチャイジーは担当地域での販売に専念」
    • 「冷蔵ボックスを使った置き配の開始も検討」
    • 「人的接触を控えたい」「自宅を不在にする日にも届けてほしいという高齢層や主婦層の声」
    • 「フランチャイジーと高齢者顧客とのやり取りは来店前の電話での通話が主体」
    • 「駐車場での販売は高齢者が知り合いを電話で呼び、井戸端会議のきっかけとなることも多い」
  • 答案作成の根拠 設問要求であるフランチャイズの役割分担を踏まえ、置き配導入にあたって高齢者顧客のニーズと不安に対応する具体的な取り組みを提案する。

    • ⒜ フランチャイザー(B 社)の役割: B 社の役割は、フランチャイジー全体の「マーケティング活動、支援活動」である。したがって、置き配という新しい販売方法を円滑に導入するための仕組みづくりと、全顧客に向けた統一的な情報提供を担うべきである。

      • 取り組み: 高齢者でも安心して利用できるよう、初期投資の負担がない 「冷蔵ボックスの無償貸与」 や、利用方法や防犯面での安全性を誰にでも分かりやすく伝達するための 「図解チラシの作成」 が有効な支援策となる。
    • ⒝ フランチャイジーの役割: フランチャイジーの役割は、「担当地域での販売に専念」し、顧客と直接的な関係を構築することである。高齢者顧客は、B 社の商品だけでなく、販売員とのコミュニケーションにも価値を見出している(井戸端会議など)。置き配による関係性の希薄化は、顧客離反につながるリスクがある。

      • 取り組み: 置き配に移行しても、これまで通り 「電話での注文受付や世間話」 を継続することで、コミュニケーションの機会を確保し、顧客の孤立感を和らげ、安否確認という付加価値も提供する。さらに、「手紙」 を添えるといったアナログな手法で、人的接触がなくても温かみが伝わる工夫を凝らし、顧客との心理的なつながりを維持・深化させることが求められる。
  • 使用した経営学の知識

    • フランチャイズ・システム: 本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対し、商標・商号の使用権や商品・サービスの販売権、経営ノウハウなどを提供し、その見返りとして加盟店が対価(ロイヤリティなど)を支払う事業形態。それぞれの役割分担の理解が不可欠である。
    • CRM (Customer Relationship Management): 顧客との良好な関係を構築・維持し、顧客満足度と顧客ロイヤルティを高めるための経営手法。本解答では、置き配という効率的な手法を導入しつつも、電話や手書きメッセージを通じて顧客との関係性を維持する CRM の視点を取り入れている。

第 4 問(配点 25 点)

設問文

B 社では X 市周辺の主婦層の顧客獲得をめざし、豆腐やおからを材料とする菓子類の新規開発、移動販売を検討している。製品戦略とコミュニケーション戦略について、中小企業診断士の立場から 100 字以内で助言せよ。

回答例(85 字)

製品戦略は、人気の和菓子店と協業し、おから等を使ったヘルシーな和スイーツを共同開発する。コミュニケーション戦略は、両店の販売網と IM を活用し、協業の話題性で口コミを促す。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「X 市周辺の主婦層の顧客獲得をめざし、豆腐やおからを材料とする菓子類の新規開発、移動販売を検討」
    • 「新しい素材を使った菓子で人気を博す和菓子店の店主」
    • 「同地の職人には京都の老舗で修行した者が多い」(B 社社長との共通点)
  • 答案作成の根拠 B 社単独での菓子開発ではなく、与件文に登場する「人気の和菓子店」という外部資源を最大限に活用する視点で戦略を構築する。

    1. 製品戦略 (Product Strategy): B 社には豆腐製造の専門技術はあるものの、菓子開発のノウハウは不足している。そこで、X 市で「新しい素材を使った菓子で人気」の和菓子店と協業する。B 社が強みとする「地元産大豆のおから」や「良質な水」を素材として提供し、和菓子店が持つ専門的な製造技術やレシピ開発力を活かして、主婦層と子供に訴求する 「ヘルシーかつ本格的な和スイーツ」 を共同開発する。これにより、開発リスクを低減し、高品質で独自性のある製品を早期に市場投入できる。

    2. コミュニケーション戦略 (Communication Strategy): 協業のメリットをコミュニケーションにも活かす。

      • チャネル拡大: B 社の移動販売網に加え、 和菓子店の店舗という新たな販売・情報発信拠点 を確保できる。これにより、B 社がこれまでアプローチできていなかった和菓子店の顧客(主婦層を含む)にリーチできる。
      • ダイレクトな関係構築 : 与件文の「若年層には IM によるテキストでのやり取りの方が好まれ」という記述を活用する。新規獲得した主婦層顧客に IM での登録を促し、移動販売の出店情報、新商品のお知らせ、クーポン配布などを行うことで、継続的な関係を構築し、リピート購入を促進する。
      • 話題性の創出: 「地元繁盛店同士のコラボレーション」という事実は、それ自体がニュースとなり、顧客の関心を引く。この 「話題性」 を活用し、大々的な広告を打たなくても、両店の店頭告知や SNS 発信だけで 自然な口コミの発生 を促すことができる。
  • 使用した経営学の知識

    • アライアンス(協業)戦略: 互いの経営資源(B 社の素材、和菓子店の技術・ブランド)を補完し合うことで、単独では得られないシナジー(相乗効果)を生み出す戦略。本解答は、B 社の弱み(菓子開発ノウハウ不足)を補い、両社の強みを掛け合わせる典型的なアライアンス活用事例である。
    • ダイレクト・マーケティング: IM を活用し、特定の顧客セグメント(主婦層)と直接的かつ双方向のコミュニケーションを行うことで、顧客ロイヤルティを高める手法である。
    • クロスセル: 既存の顧客に対し、関連する別の商品やサービスを提案して販売を促進する手法。B 社の顧客に和スイーツを、和菓子店の顧客に豆腐関連商品を認知させる機会が生まれる。
    • パブリシティ戦略: 企業が発信する情報にニュース価値を持たせ、広告費をかけずにメディアや口コミで取り上げてもらう手法。「繁盛店との協業」という話題性は、パブリシティを獲得する上で非常に有効な要素となる。

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