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平成 27 年度(2015 年度)事例 Ⅳ 回答と解説

第 1 問(配点 28 点)

(設問 1)

D 社および同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較した場合において、D 社が優れていると判断できる財務指標を 1 つ、課題となる財務指標を 2 つあげ、(a)欄に名称、(b)欄に算定した数値を、それぞれ記入せよ。なお、優れている指標については ① の欄に、課題となる指標については ②、③ の欄に、それぞれ記入すること。また、数値については、(b)欄のカッコ内に単位を明記し、小数点第 3 位を四捨五入すること。

回答例

(a) 名称(b) 算定した数値
① 優れている指標有形固定資産回転率5.00(回)
② 課題となる指標売上高営業外費用率1.12(%)
③ 課題となる指標自己資本比率22.12(%)

解説

  • 問題文の該当箇所

    • D 社および同業他社の貸借対照表、損益計算書全体
  • 答案作成の根拠 D 社と同業他社の財務諸表から各種経営指標を算出し、比較検討します。

    1. 収益性分析

      • 売上高総利益率:D 社 17.7%、同業他社 17.1%
      • 売上高営業利益率:D 社 2.8%、同業他社 2.5%
      • → 本業の収益性は同業他社と同水準か、わずかに優れています。
      • 売上高営業外費用率:D 社 (営業外費用 24 ÷ 売上高 2,150) × 100 = 1.12%、同業他社 (13 ÷ 2,800) × 100 = 0.46%
      • → D 社は同業他社の 2 倍以上の比率です。(注)より営業外費用は全額が支払利息であるため、D 社は借入金の金利負担が収益を圧迫しているという課題が読み取れます。
    2. 効率性分析

      • 総資本回転率:D 社 1.90 回、同業他社 2.20 回
      • 有形固定資産回転率:D 社 2,150 百万円 ÷ 430 百万円 = 5.00 回、同業他社 2,800 百万円 ÷ 600 百万円 = 4.67 回
      • → D 社は少ない有形固定資産で効率的に売上を上げており、優れている指標と判断できます。
    3. 安全性分析

      • 自己資本比率:D 社 (純資産 250 ÷ 資産合計 1,130) × 100 = 22.12%、同業他社 (640 ÷ 1,270) × 100 = 50.39%
      • → D 社は自己資本比率が同業他社の半分以下であり、財務基盤が脆弱で長期的な安定性に課題があると判断できます。
  • 使用した経営学の知識

    • 経営分析: 収益性、効率性、安全性の 3 つの観点から企業の経営状態を評価する手法。各指標を算出し、競合他社と比較することで、自社の強みと弱みを客観的に把握します。

(設問 2)

D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴を 60 字以内で述べよ。

回答例(51 字)

有形固定資産の効率性は高いが、自己資本比率が低く借入金への依存度が高い。支払利息が収益を圧迫している。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 設問 1 の経営分析結果
  • 答案作成の根拠 設問 1 で分析した指標を基に、D 社の特徴を要約します。

    • 経営成績の強み: 有形固定資産回転率の高さから「有形固定資産の効率性は高い」と評価できます。
    • 財政状態の課題: 自己資本比率の低さから、財務基盤が脆弱であることがわかります。これは「借入金への依存度が高い」ことの裏返しでもあります。
    • 収益性の課題: 売上高営業外費用率の高さ(支払利息負担の大きさ)から「支払利息が収益を圧迫している」と指摘できます。
    • これら設問 1 で導き出した強み 1 点と課題 2 点を簡潔にまとめることで、D 社の財政状態と経営成績の特徴を的確に表現できます。
  • 使用した経営学の知識

    • 財務分析: 財務諸表の数値を用いて企業の財政状態(安全性)と経営成績(収益性・効率性)を分析・評価すること。設問 2 は、その分析結果を解釈し、企業の全体像を記述する能力を問うています。

第 2 問(配点 34 点)

(設問 1)

以下の損益予測に基づいて、第 ×3 期の予測損益計算書を完成させよ。なお、利益に対する税率は 30%とし、損失の場合には税金は発生しないものとする。

回答例

損益計算書

(単位:百万円)

売上高1,935
売上原価1,695
売上総利益240
販売費及び一般管理費300
営業損益△60
営業外収益13
営業外費用24
経常損益△71
特別利益0
特別損失0
税引前当期純損益△71
法人税等0
当期純損益△71

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「第 ×3 期の売上高は、X 社からの受注減少によって第 ×2 期と比較して 10%減少」
    • 「売上原価に含まれる固定費は 1,020 百万円、販売費及び一般管理費に含まれる固定費は 120 百万円」
    • 「利益に対する税率は 30%とし、損失の場合には税金は発生しない」
  • 答案作成の根拠

    1. 変動費率と固定費の算定(第 ×2 期ベース)

      • 変動費(売上原価):1,770 - 1,020 = 750 百万円
      • 変動費(販管費):320 - 120 = 200 百万円
      • 変動費合計:750 + 200 = 950 百万円
      • 変動費率:950 ÷ 2,150 = 0.44186...
      • 固定費合計:1,020 + 120 = 1,140 百万円
    2. 第 ×3 期の予測損益計算書の作成

      • 売上高: 2,150 × (1 - 0.1) = 1,935
      • 売上原価:
        • 変動費:1,935 × (750 ÷ 2,150) = 675
        • 固定費:1,020
        • 合計:675 + 1,020 = 1,695
      • 売上総利益: 1,935 - 1,695 = 240
      • 販売費及び一般管理費:
        • 変動費:1,935 × (200 ÷ 2,150) = 180
        • 固定費:120
        • 合計:180 + 120 = 300
      • 営業損益: 240 - 300 = △60(営業損失)
      • 経常損益: △60 + 13 - 24 = △71(経常損失)
      • 税引前当期純損益: △71
      • 法人税等: 損失のため 0
      • 当期純損益: △71
  • 使用した経営学の知識

    • 固変分解: 費用を固定費と変動費に分解する手法。損益分岐点分析(CVP 分析)の基礎となります。
    • 予測損益計算書: 将来の経営成績を予測するために作成される損益計算書。売上高の予測と固変分解の結果を用いて作成します。

(設問 2)

設問 1 の予測損益計算書から明らかなる傾向を(a)欄に 40 字以内で、そのような傾向が生じる原因を(b)欄に 60 字以内で述べよ。

回答例

  • (a) 明らかなる傾向(40 字)
    売上高の減少により営業利益、経常利益ともに赤字に転落し、収益性が大幅に悪化する。
  • (b) そのような傾向が生じる原因(55 字)
    売上高に比して固定費の割合が高いため、売上減少時に利益が大幅に減少し、営業損失を計上する構造となっているため。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 設問 1 で作成した予測損益計算書
    • 与件文「受注状況を見ると、...需要変動や...生産数量の変動が大きくなっている」
  • 答案作成の根拠

    • (a) 傾向: 設問 1 で作成した予測 PL を見ると、営業損益と経常損益がともにマイナス(赤字)になっています。これは、前期(第 ×2 期)の黒字から大きく悪化していることを示しており、「赤字転落」や「収益性の大幅な悪化」が明確な傾向です。
    • (b) 原因: 売上高が 10%減少したのに対し、営業利益は 60 百万円の黒字から 60 百万円の赤字へと 120 百万円も減少しています。これは、売上が減っても固定費(1,140 百万円)は減らないため、売上減少の影響が利益に大きく響く「経営レバレッジが高い」財務構造であることを意味します。この「固定費の割合の高さ(費用構造の硬直性)」が赤字転落の根本原因です。
  • 使用した経営学の知識

    • CVP 分析 (Cost-Volume-Profit Analysis): コスト・操業度・利益の関係を分析する手法。
    • 経営レバレッジ: 固定費の存在により、売上高の変動が利益の変動を拡大させる効果。固定費の割合が高い企業は経営レバレッジが高く、好況期には大きな利益を得られますが、不況期には大きな損失を被るリスクがあります。

(設問 3)

設問 1 の予測損益計算書をもとに CVP 分析を行うことによって、以下の金額を求め、(a)欄にその金額を、(b)欄に計算過程を、それぞれ記入せよ。なお、解答にあたっては、金額単位を百万円とし、百万円未満を四捨五入すること。

  • (1) 第 ×3 期において 100 百万円の経常利益を達成するために必要となる売上高はいくらか。
  • (2) 第 ×3 期において 100 百万円の経常利益を達成するために固定費の削減を検討している。必要な固定費削減を行った場合、経常利益がゼロとなる損益分岐点売上高はいくらか。

回答例

  • (1) 第 ×3 期において 100 百万円の経常利益を達成するために必要となる売上高
    (a) 金額: 2,241(百万円)
    (b) 計算過程:
    貢献利益率 = 1 - (変動費 950 ÷ 売上高 2,150) = 0.5581...
    必要売上高 = (固定費 1,140 + 目標経常利益 100 + 営業外費用 24 - 営業外収益 13) ÷ 貢献利益率 = 1,251 ÷ 0.5581... ≒ 2,241.38...
    (百万円未満を四捨五入)
  • (2) 第 ×3 期において 100 百万円の経常利益を達成するために固定費の削減を検討している。必要な固定費削減を行った場合、経常利益がゼロとなる損益分岐点売上高
    (a) 金額: 1,756(百万円)
    (b) 計算過程:
    ① 必要な固定費削減額 = 目標経常利益 100 - 予測経常損失(△71) = 171
    ② 削減後の固定費 = 1,140 - 171 = 969
    ③ 損益分岐点売上高 = (削減後固定費 969 + 営業外費用 24 - 営業外収益 13) ÷ 貢献利益率 = 980 ÷ 0.5581... ≒ 1,755.8...
    (百万円未満を四捨五入)

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 設問 1 で作成した予測損益計算書およびその計算過程
  • 答案作成の根拠

    • (1) 目標利益達成売上高の公式 (固定費 + 目標利益) ÷ 貢献利益率 を用います。本問では「経常利益」が目標なので、分母に営業外損益(支払利息 24 - 受取利息 13 = 11)を加える必要があります。
    • (2) 二段階の計算が必要です。
      1. まず、売上高が予測通り 1,935 百万円のままで経常利益 100 百万円を達成するために、いくら固定費を削減すべきか計算します。予測では 71 百万円の損失なので、100 百万円の利益を出すには 100 - (-71) = 171 百万円の利益改善、すなわち 171 百万円の固定費削減が必要です。
      2. 次に、この削減後の固定費 1,140 - 171 = 969 百万円をベースに、経常利益がゼロとなる損益分岐点売上高を計算します。公式は(1)と同様ですが、目標利益がゼロになります。
  • 使用した経営学の知識

    • CVP 分析: 目標利益達成売上高や損益分岐点売上高を計算するための公式を用います。営業外損益を考慮する応用問題です。

第 3 問(配点 26 点)

(設問 1)

プロジェクト Z を採用したことによって増加する各期のキャッシュ・フロー(当初投資時点の投資額を含まない)を、以下の 2 つのケースについて計算せよ。

  • ケース 1:各期におけるプロジェクト Z 以外の事業活動からの税引前当期純利益がゼロである。
  • ケース 2:各期におけるプロジェクト Z 以外の事業活動からの税引前当期純損失が 10 百万円である。

回答例

  • ケース 1

    • 第 ×3 期:19(百万円)
    • 第 ×4 期:24(百万円)
    • 第 ×5 期:24(百万円)
  • ケース 2

    • 第 ×3 期:22(百万円)
    • 第 ×4 期:27(百万円)
    • 第 ×5 期:27(百万円)

解説

  • 問題文の該当箇所

    • プロジェクト Z の損益予測、機械設備 g の情報
    • ケース 1:「税引前当期純利益がゼロ」
    • ケース 2:「税引前当期純損失が 10 百万円」
  • 答案作成の根拠 キャッシュ・フローは 税引後利益 + 減価償却費 または (現金収入 - 現金支出) × (1 - 税率) + 減価償却費 × 税率 で計算します。ここでは、プロジェクト実施による「税金の増減」を考慮する考え方が重要です。

    • ケース 1: プロジェクト Z の利益(20)がそのまま課税対象となります。

      • CF = (現金収入 100 - 現金支出 70) - (税引前利益 20 × 税率 0.3) = 30 - 6 = 24 百万円
    • ケース 2: 他の事業で 10 百万円の損失が出ているため、プロジェクト Z の利益 20 と損益通算され、課税対象は 20 - 10 = 10 百万円となります。

      • プロジェクト Z がなければ法人税は 0 円です。
      • プロジェクト Z を実施することで、全社の税金が 10 × 0.3 = 3 百万円発生します。
      • したがって、プロジェクト Z が生み出すキャッシュ・フローは、税引前キャッシュ・フローから、この増分税額を差し引いたものになります。
      • CF = (現金収入 100 - 現金支出 70) - 増分税額 3 = 27 百万円
  • 使用した経営学の知識

    • キャッシュ・フロー計算: 投資評価の基本となるキャッシュ・フローの算出方法。減価償却費のような非現金支出費用の扱いや、損益通算によるタックス・シールド効果を正しく理解しているかが問われます。

(設問 2)

両プロジェクトの正味現在価値を計算して(a)欄に記入し、採用すべきプロジェクトについて(b)欄に ○ 印を付けよ。なお、計算においてはかねてより同社が採用している資本コスト 10%を適用し、プロジェクト以外の事業活動からの税引前当期純利益はゼロであるとする。解答にあたっては、金額単位を百万円とし、小数点第 2 位を四捨五入すること。

回答例

  • (a) 正味現在価値
正味現在価値(百万円)
プロジェクト Z35.1
プロジェクト E64.8
  • (b) 採用すべきプロジェクト
採用
プロジェクト Z
プロジェクト E

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 両プロジェクトの投資額、損益予測
    • 「資本コスト 10%」「プロジェクト以外の事業活動からの税引前当期純利益はゼロ」
  • 答案作成の根拠 各プロジェクトの各期のキャッシュ・フローを算出し、資本コスト 10%で現在価値に割り引いて合計し、初期投資額を差し引いて NPV を計算します。

    • プロジェクト Z の CF
      • 初期投資: -20
      • 第 3 期 CF: 24 (設問 1 ケース 1) - 5 (追加投資) = 19
      • 第 4 期 CF: 24
      • 第 5 期 CF: 24
      • NPV = -20 + 19×0.9091 + 24×0.8264 + 24×0.7513 = -20 + 17.27 + 19.83 + 18.03 ≒ 35.1 百万円
    • プロジェクト E の CF
      • 機械 h の減価償却費 = 80 ÷ 5 年 = 16
      • 初期投資: -90
      • 第 3 期:
        • 税引前利益 = 100-70-10(機 g)-16(機 h) = 4
        • CF = (100-70) - (4×0.3) - 20(追加投資) = 30 - 1.2 - 20 = 8.8
      • 第 4 期:
        • 税引前利益 = 250-150-10-16 = 74
        • CF = (250-150) - (74×0.3) = 100 - 22.2 = 77.8
      • 第 5 期:
        • CF = 77.8 + 32(機械 h 売却) = 109.8
      • NPV = -90 + 8.8×0.9091 + 77.8×0.8264 + 109.8×0.7513 = -90 + 8.00 + 64.30 + 82.49 ≒ 64.8 百万円
    • 結論: NPV(E) > NPV(Z)であるため、経済合理性の観点からプロジェクト E を採用すべきです。
  • 使用した経営学の知識

    • 正味現在価値(NPV)法: 将来生み出されるキャッシュ・フローの現在価値合計から初期投資額を差し引いた値。NPV がプラスの投資案は企業価値を高めるため採用すべきと判断されます。複数の投資案がある場合は、NPV がより大きい案を優先します。

(設問 3)

設問 2 においては正味現在価値によってプロジェクトの収益性を評価したが、D 社の財務状況に鑑みて、プロジェクトの流動性を検討すべきである。適切なプロジェクトの評価指標を計算し、両プロジェクトについて比較せよ。

回答例

流動性の評価指標として回収期間法を用いる。Z 案の回収期間は約 1.04 年、E 案は約 2.03 年となる。投資資金を早期に回収できるという流動性の観点からは、Z 案が優れている。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「D 社の財務状況に鑑みて、プロジェクトの流動性を検討すべき」
    • 第 1 問で明らかになった D 社の低い流動比率(短期支払能力の低さ)
  • 答案作成の根拠

    1. 指標の選択: 「流動性」を評価する指標として、投資額を何年で回収できるかを示す回収期間法が最も適切です。
    2. 計算:
      • プロジェクト Z: 投資額は期首 20 と 3 期末 5 の合計 25。
        • 3 期末までの CF は 24。投資を回収しきれない。
        • 4 期末までの累計 CF は 24+24=48。3 期と 4 期の間で回収できる。
        • 回収期間 = 1 年 + (残投資額 25-24) / 4 期 CF 24 = 1 + 1/24 ≒ 1.04 年
      • プロジェクト E: 投資額は期首 90 と 3 期末 20 の合計 110。
        • 3 期末 CF は 28.8、4 期末までの累計 CF は 28.8+77.8=106.6。まだ回収できない。
        • 5 期末までの累計 CF は 106.6+109.8=216.4。4 期と 5 期の間で回収できる。
        • 回収期間 = 2 年 + (残投資額 110-106.6) / 5 期 CF 109.8 = 2 + 3.4/109.8 ≒ 2.03 年
    3. 比較: 回収期間が短いほど、投下資本を早く回収でき流動性が高いと評価されます。Z 案(1.04 年)は E 案(2.03 年)より短いため、流動性の観点では Z 案が優位です。
  • 使用した経営学の知識

    • 回収期間法: 投資の意思決定手法の一つ。計算が簡便で、投資の流動性(リスク)を直感的に把握できる利点があります。ただし、回収期間後の CF や時間価値を考慮しない欠点もあります。

第 4 問(配点 12 点)

(設問 1)

X 社のような大口取引先の存在は、D 社にとってメリットもあるがデメリットもある。どのようなデメリットがあるか、30 字以内で述べよ。

回答例(24 字)

価格交渉力が弱く、受注動向に経営が左右される点。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「D 社の売上高全体の 7 割程度を占めている」
    • 「主要取引先の X 社は部品調達の一部を海外企業に求めることを決定しており、そのため、来期の受注数量が減少すると予想している」
  • 答案作成の根拠 与件文に示されている通り、売上の大部分を単一の取引先に依存すると、その取引先の方針転換(海外調達への切り替えなど)が自社の経営に致命的な影響を及ぼします。これは、取引先に対して交渉力が弱い立場に置かれ、一方的な価格引き下げ要求や発注削減を受け入れざるを得なくなるリスクが高いことを意味します。この「交渉力の弱さ」と「経営の不安定化」が最大のデメリットです。

  • 使用した経営学の知識

    • ポーターの 5 つの力分析: 業界の競争環境を分析するフレームワーク。その中の一つ「買い手の交渉力」に該当します。特定の大口顧客への依存度が高いと、買い手の交渉力が強まり、企業の収益性が圧迫されるリスクが高まります。

(設問 2)

設問 1 におけるデメリットを解消するための対策として、環境関連製品の製造・販売をすることの意義を 30 字以内で述べよ。

回答例(25 字)

特定取引先への依存度を下げ、経営リスクを分散する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「これまでの取扱製品とは異なる需要動向を示す環境関連製品の製造・販売を計画」
  • 答案作成の根拠 設問 1 で挙げた「特定取引先への依存」というデメリットを解消するためには、取引先や事業分野を増やすことが有効です。環境関連製品は、既存の自動車部品とは「異なる需要動向を示す」とされているため、X 社の業績や方針に左右されない新たな収益の柱を育てることにつながります。これにより、X 社への依存度を低減し、経営全体のリスクを分散させることができます。

  • 使用した経営学の知識

    • 事業ポートフォリオ・マネジメント: 企業が複数の事業をどのように組み合わせ、経営資源を配分するかを管理する手法。新たな事業に進出することは、製品や市場の多角化を通じて、特定事業への過度な依存から脱却し、全社的なリスクを低減する効果(リスク分散効果)があります。

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