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令和 4 年度(2022 年度)事例 Ⅲ

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# 令和 4 年度(2022 年度)事例 Ⅲ

## 与件文

【企業概要】
C 社は 1964 年創業、資本金 2,500 万円、従業員 60 名の金属製品製造業である。製品は、売上の 7 割を占めるアルミニウムおよびステンレス製プレス加工製品(以下「プレス加工製品」という)と、残り 3 割のステンレス製板金加工製品(以下「板金加工製品」という)である。プレス加工製品は金型を使用して成形する鍋、トレー、ポットなどの繰返受注製品で、板金加工製品は鋼材を切断や曲げ、溶接加工して製作する調理台、収納ラック、ワゴンなどの個別受注製品である。どちらもホテル、旅館、外食産業などの調理場で使用される製品で、業務用食器・什器の卸売企業 2 社を販売先としている。

C 社は、卸売企業が企画する業務用什器の板金加工製品を受託生産する企業として創業した。その後金属プレスや金型製作設備を導入してプレス加工製品の生産を始めている。難易度の高い金型製作技術の向上に努めて、ノウハウを蓄積してきたため、コスト低減や生産性向上に結びつく提案などが可能である。

近年は観光需要で受注量は毎年増加していたが、2020 年からの新型コロナウイルス感染拡大による外国人の新規入国規制や、外食産業の営業自粛による影響を受けて減少している。

【生産の現状】
生産部門は、生産管理課、資材課、設計課、金型製作課、プレス加工課、製品仕上課、板金加工課、品質管理課で構成されている。

プレス加工製品の生産プロセスには、金型を製作する金型製作工程と、その金型を利用して同じ製品の繰返受注生産を行う製品量産工程がある(次ページの図参照)。C 社の金型製作工程は、発注元から提示される形状やサイズの概要を表したデザイン図を基に仕様を確認した後に「金型設計」を行い、金型を構成する部品を製作する「金型部品加工」、加工した部品を組み立てる「金型組立」、その後の調整や研磨などを行う「金型仕上」を経て、「試作確認」を行い、さらに試作品の品質を発注元との間で確認して完成する。設計開始から完成までの金型製作期間は、難易度によって異なるが、短いもので約 2 週間、長いもので約 1 か月を要する。

「金型設計」は、設計課が 2 次元 CAD を活用し担当している。発注元との仕様確認が遅くなることや、発注元からの設計変更、仕様変更の要請があり、設計期間が長くなることもある。また設計課では、個別受注の板金加工製品の製品設計も担当するため、設計業務の混乱が生じ金型製作期間全体に影響することもしばしば生じている。

「金型組立」、「金型仕上」は、プレス加工技術にも習熟するベテラン技能者が担当しているが、高齢化している。担当者は、金型の修理や改善作業も兼務し、製品の品質や製造コストに影響を及ぼす重要なスキルが必要なことから、若手の養成を検討している。

図 C社のプレス加工製品の生産プロセス

```mermaid

sequenceDiagram
    participant 顧客
    participant 営業課
    participant 生産管理課
    participant 資材課
    participant 品質管理課
    participant 設計課
    participant 金型製作課
    participant プレス加工課
    participant 製品仕上課

    顧客->>営業課: デザイン図
    営業課->>生産管理課: 仕様確認
    生産管理課->>資材課: 連絡
    資材課->>品質管理課: 連絡
    品質管理課->>設計課: 品質・仕様確認
    設計課->>金型製作課: 金型設計
    金型製作課->>金型製作課: 金型部品加工
    金型製作課->>金型製作課: 金型組立
    金型製作課->>金型製作課: 金型仕上
    金型製作課->>品質管理課: 試作確認
    品質管理課->>営業課: 品質評価
    営業課->>顧客: 品質確認

    顧客->>営業課: 量産発注
    営業課->>生産管理課: 量産受注
    生産管理課->>資材課: 月度生産計画
    資材課->>プレス加工課: 資材発注
    プレス加工課->>製品仕上課: プレス加工
    製品仕上課->>製品仕上課: 製品部品組付
    製品仕上課->>品質管理課: 製品仕上
    品質管理課->>顧客: 納品

```

金型が完成した後の製品量産工程は、発注元から納品月の前月中旬に製品別の生産依頼数と納品指定日が通知され、それに基づいて前月月末までに「月度生産計画」を作成して「資材発注」する。プレス加工課では「プレス加工」を行い、製品仕上課で取っ手などの部品を組み付ける「製品部品組付」と製品の最終調整をする「製品仕上」を行い、通常月 1 回発注元へ納品する。

C 社の「プレス加工」は、生産能力に制約があり、C 社全体の生産進捗に影響している。プレス加工機ごとに担当する作業員が材料の出し入れと設備操作を行い、加工製品を変えるときには、その作業員が金型交換作業と材料準備作業など長時間の段取作業を一人で行っている。

プレス加工製品の生産計画は「プレス加工」の計画だけが立案され、「製品部品組付」、「製品仕上」はプレス加工終了順に作業する。生産計画は、各製品の 1 日間の加工数量でそれぞれの基準日程を決めて立案する。以前は発注元もこれを理解して、C 社の加工ロットサイズを基本に発注し、C 社で生産した全量を受領して、発注元で在庫対応していた。しかし、最近は発注元の在庫量削減方針によって発注ロットサイズが減少している。ただ C 社では、基準日程によって設定しているロットサイズで加工を続け、確定受注量以外は C 社内で在庫している。

C 社の受注から納品に至る社内業務では、各業務でパソコンを活用しているが、情報の交換と共有はいまだに紙ベースで行われている。

【新規製品事業】
数年前 C 社では受注拡大を狙って、雑貨・日用品の商談会に出展したことがある。その際商談成立には至らなかったが、中堅ホームセンター X 社から品質を高く評価された。今回その X 社から新規取引の商談が持ち込まれた。

X 社では、コロナ禍の 2020 年以降も売上が順調に推移しているが、その要因の一つとしてアウトドア商品売上の貢献がある。しかし新型コロナウイルスのパンデミックにより、中国や東南アジア諸国企業に生産委託している PB 商品の納品に支障が生じて、生産、物流など現在のサプライチェーンの維持が難しくなっている。また今後も海外生産委託商品の仕入れ価格の高騰が懸念されることから、生産委託先を C 社へ変更することについて C 社と相互に検討を行った。

C 社社長は、当該事業の市場成長性と自社の強みを考慮して戦略とビジネスプロセスを見直し、積極的にこの事業に取り組むこととした。

X 社の要請は、X 社のアウトドア用 PB 商品のうち、中価格帯の食器セット、鍋、その他調理器具などアルミニウム製プレス加工製品の生産である。ただ C 社社長は、今後高価格な製品に拡大することも期待している。

X 社からの受注品は、商品在庫と店舗仕分けの機能を持つ在庫型物流センターへの納品となり、商品の発注・納品は、次のようになる。まず四半期ごとに X 社が商品企画と月販売予測を立案し、C 社に情報提供される。確定納品情報については、X 社各店舗の発注データを毎週月曜日に X 社本社で集計する。在庫量からその集計数を差し引いて発注点に達した製品について X 社の発注データが C 社に送付される。納期は発注日から 7 日後の設定である。1 回の発注ロットサイズは、現状のプレス加工製品と比べるとかなり小ロットになる。

## 設問文

### 第 1 問(配点 20 点)

2020 年以降今日までの外部経営環境の変化の中で、C 社の販売面、生産面の課題を 80 字以内で述べよ。

### 第 2 問(配点 20 点)

C 社のプレス加工製品の新規受注では、新規引合いから量産製品初回納品まで長期化することがある。しかし、プレス加工製品では短納期生産が一般化している。C 社が新規受注の短納期化を図るための課題とその対応策を 120 字以内で述べよ。

### 第 3 問(配点 20 点)

C 社の販売先である業務用食器・什器卸売企業からの発注ロットサイズが減少している。また、検討しているホームセンター X 社の新規取引でも、1 回の発注ロットサイズはさらに小ロットになる。このような顧客企業の発注方法の変化に対応すべき C 社の生産面の対応策を 120 字以内で述べよ。

### 第 4 問(配点 20 点)

C 社社長は、ホームセンター X 社との新規取引を契機として、生産業務の情報の交換と共有についてデジタル化を進め、生産業務のスピードアップを図りたいと考えている。C 社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動はどのように進めるべきか、120 字以内で述べよ。

### 第 5 問(配点 20 点)

C 社社長が積極的に取り組みたいと考えているホームセンター X 社との新規取引に応えることは、C 社の今後の戦略にどのような可能性を持つのか、中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。

## 出題の趣旨

### 第 1 問(配点 20 点)

新型コロナウイルスのパンデミックや急激な円安など 2020 年以降今日までの外部経営環境変化の中で、C 社に生じている販売面と生産面の課題について、分析する能力を問う問題である。

### 第 2 問(配点 20 点)

プレス加工製品の金型製作工程と製品量産工程の生産プロセスにおいて、新規受注の際に長期化する要因を整理し、短納期化するための課題とその対応策について、助言する能力を問う問題である。

### 第 3 問(配点 20 点)

顧客企業の発注ロットサイズの小ロット化への変化に対応するための C 社の製品量産工程の課題を整理し、その対応策について、助言する能力を問う問題である。

### 第 4 問(配点 20 点)

生産業務のスピードアップを図り、生産リードタイムを短縮するための C 社の生産業務の課題を整理し、そのために優先すべきデジタル化の対象、業務内容と、デジタル化構築のために必要となる社内活動について、助言する能力を問う問題である。

### 第 5 問(配点 20 点)

ホームセンター X 社との新規取引に応えることによって、C 社の今後の戦略に影響する製品や市場、業績などに生じる新たな可能性について、助言する能力を問う問題である。

# 令和 4 年度(2022 年度)事例 Ⅲ 回答と解説

**目次は画面右上の「<span style="color: cornflowerblue;">On this page</span>」をタップしてください。**

## 第 1 問(配点 20 点)

### 設問文

2020 年以降今日までの外部経営環境の変化の中で、C 社の販売面、生産面の課題を 80 字以内で述べよ。

### 回答例(80 字)

**販売面の課題は、既存の業務用市場への依存から脱却し新たな市場を開拓すること。生産面の課題は、小ロット生産に対応できる体制へ移行し、過剰な製品在庫を削減すること。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「2020 年からの新型コロナウイルス感染拡大による…影響を受けて(受注量が)減少している。」
  - 「最近は発注元の在庫量削減方針によって発注ロットサイズが減少している。ただ C 社では…確定受注量以外は C 社内で在庫している。」

- **答案作成の根拠**
  診断士試験では「問題(現状の悪い状態)」と「課題(解決すべき方向性・テーマ)」を区別して捉えることが重要です。

  1.  **販売面の課題設定**: 与件文には、コロナ禍で主要顧客である業務用市場の需要が減少し、売上が低迷しているという**問題**が記述されています。この問題を解決するための方向性、すなわち**課題**は、特定の市場に依存する経営体質から脱却し、新たな販路を確保することで売上の安定化を図る「新規市場の開拓」となります。
  2.  **生産面の課題設定**: 与件文には、顧客の小ロット発注に対応できず、従来のロットサイズで生産を続けた結果、過剰な在庫を抱えているという**問題**が記述されています。この問題を解決するための方向性、すなわち**課題**は、顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる「小ロット生産体制の構築」と、それによる「在庫の削減」です。

- **使用した経営学の知識**
  - **成長戦略(アンゾフの成長マトリクス)**: 販売面の課題は、既存市場の深耕だけでなく、新たな市場を開拓する必要性を示唆しており、「市場開拓戦略」の方向性を示しています。
  - **リーン生産方式**: 生産面の課題は、顧客の要求に応じて必要なものを必要なだけ生産する体制への転換を意味します。これは、ムダ(この場合は作りすぎのムダ=過剰在庫)を徹底的に排除するリーン生産やジャストインタイム(JIT)の考え方に基づいています。

## 第 2 問(配点 20 点)

### 設問文

C 社のプレス加工製品の新規受注では、新規引合いから量産製品初回納品まで長期化することがある。しかし、プレス加工製品では短納期生産が一般化している。C 社が新規受注の短納期化を図るための課題とその対応策を 120 字以内で述べよ。

### 回答例(113 字)

**課題は、金型設計業務を効率化し製作リードタイムを短縮することである。対応策は、① 営業に設計担当者が同行して顧客と直接仕様摺合せを行い手戻りを防止する、② プレスと板金の設計担当を分離・専門化し、業務の混乱を防ぎ効率を向上させる。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - (プロセス図において、顧客とのやり取りを「営業課」が担当している点)
  - 「発注元との仕様確認が遅くなることや、発注元からの設計変更、仕様変更の要請があり、設計期間が長くなることもある。」
  - 「また設計課では、個別受注の板金加工製品の製品設計も担当するため、設計業務の混乱が生じ金型製作期間全体に影響することもしばしば生じている。」

- **答案作成の根拠**

  1.  **課題設定**: 納期長期化の**問題**の根本原因が「金型設計」工程にあるため、**課題****「金型設計業務の効率化によるリードタイム短縮」** と設定します。
  2.  **対応策の立案**:
      - **対応策 ①**: 「仕様確認の遅延や設計変更」は、営業担当者から設計担当者への情報伝達の過程で、抜け漏れや誤解が生じていることが一因と考えられます。そこで、専門知識を持つ**設計担当者が営業担当者に同行**し、顧客との仕様確認の場に直接参加します。これにより、技術的な観点からその場で質疑応答や実現可能性の判断ができ、顧客の真意を正確に汲み取ることが可能となります。結果として、仕様確定の精度とスピードが向上し、後工程での手戻りを抜本的に防止できます。
      - **対応策 ②**: 「設計課の業務混乱」に対しては、前回同様、性質の異なる業務を担当分離することで専門性を高め、業務効率を向上させる策が有効です。

- **使用した経営学の知識**
  - **コンカレント・エンジニアリング**: 設計・開発・生産準備など、本来は後工程の担当者や部門を、設計の初期段階から参加させることで、開発全体のリードタイム短縮や品質向上を図る手法です。設計担当者が初期の顧客折衝に参加することは、この考え方を実践するものです。
  - **組織の専門化**: 業務を専門性に応じて分担することで、効率性と習熟度を高める組織設計の原則。対応策 ② の根拠となります。

## 第 3 問(配点 20 点)

### 設問文

C 社の販売先である業務用食器・什器卸売企業からの発注ロットサイズが減少している。また、検討しているホームセンター X 社の新規取引でも、1 回の発注ロットサイズはさらに小ロットになる。このような顧客企業の発注方法の変化に対応すべき C 社の生産面の対応策を 120 字以内で述べよ。

### 回答例(111 字)

**対応策は、① 段取り作業の内外段取り化や協業化で段取り時間を短縮する。② プレスから仕上まで全工程を同期させ、受注量に応じた週次生産計画を立案する。③ 週次計画に連動した資材発注に見直し、サプライヤーとの連携で短納期調達を行う。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「(X 社は)納期は発注日から 7 日後の設定である。」
  - 「前月月末までに『月度生産計画』を作成して『資材発注』する。」
  - 「プレス加工製品の生産計画は『プレス加工』の計画だけが立案され…」
  - 「基準日程によって設定しているロットサイズで加工を続け…」
  - 「長時間の段取作業を一人で行っている。」

- **答案作成の根拠**
  小ロット・短納期(7 日間)発注に対応できていないという**問題**に対し、生産の物理的制約、計画手法、そして資材調達の 3 つの側面から、抜本的な対応策を立案します。

  1.  **対応策 ①(ボトルネックの解消)**: 小ロット生産を物理的に可能にするため、ボトルネックである**プレス加工の段取り時間短縮**が最優先です。SMED の考え方に基づく**内外段取り化****協業化**により、段取り時間を圧縮します。
  2.  **対応策 ②(生産計画の高度化)**: X 社の週次発注に対応するため、月次計画だけでなく**週次生産計画**を導入します。また、プレス工程だけでなく**製品仕上までの全工程を同期**させ、社内都合の基準日程を廃止し**実受注量に基づいた計画**に切り替えることで、仕掛品や製品在庫を削減します。
  3.  **対応策 ③(調達リードタイムの短縮)**: 納期 7 日間を遵守するには、生産リードタイムだけでなく調達リードタイムの短縮も不可欠です。従来の月次発注では全く間に合わないため、**週次生産計画に連動した資材発注**へと変更します。さらに、主要資材については**サプライヤーと緊密に連携**し、内示情報を共有するなどして短納期での調達を実現します。

- **使用した経営学の知識**
  - **SMED (Single Minute Exchange of Die)**: 対応策 ① の理論的根拠です。
  - **生産計画と管理 (PPC)**: 対応策 ② は、生産計画の対象範囲、基準、サイクルを見直し、より市場の需要に追従する形に高度化するアプローチです。
  - **サプライチェーンマネジメント (SCM)**: 対応策 ③ は、自社内だけでなくサプライヤーまで含めたサプライチェーン全体でリードタイム短縮と在庫削減を目指す考え方です。サプライヤーとの情報共有や連携強化が鍵となります。

## 第 4 問(配点 20 点)

### 設問文

C 社社長は、ホームセンター X 社との新規取引を契機として、生産業務の情報の交換と共有についてデジタル化を進め、生産業務のスピードアップを図りたいと考えている。C 社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動はどのように進めるべきか、120 字以内で述べよ。

### 回答例(117 字)

**内容は ① 設計の 3D CAD 化で手戻りを防ぎ、② 生産管理システムの導入で設計から在庫までの情報を一元管理し共有する。活動は社長主導の推進チームを組成し、業務改革を推進すると共に、デジタル人材の育成計画を策定し、OJT 等で技能伝承を進める。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「情報の交換と共有はいまだに紙ベースで行われている。」
  - 「『金型設計』は、設計課が 2 次元 CAD を活用し担当している。」
  - 「『金型組立』、『金型仕上』は、…ベテラン技能者が担当しているが、高齢化している。…若手の養成を検討している。」

- **答案作成の根拠**
  生産業務のスピードアップという目的を達成するため、具体的なデジタル化の内容と、それを成功させるための社内活動(組織・人材面)をセットで提案します。

  1.  **デジタル化の内容**:
      - **①3D CAD 化**: 2 次元 CAD では完成品のイメージ共有が難しく、手戻りの原因となります。**3D CAD を導入**することで、設計段階での顧客とのイメージ共有が容易になり、後工程での干渉チェックなども可能になるため、手戻りを防止しリードタイム短縮に貢献します。
      - **② 情報の一元管理**: 紙ベースの情報共有が業務停滞の原因です。設計情報、生産計画、進捗、在庫などの**情報を一元管理する生産管理システムを導入**し、全社でリアルタイムに共有することがスピードアップの根幹となります。
  2.  **社内活動(進め方)**:
      - **推進体制**: システム導入は全社的な業務改革を伴うため、**社長がリーダーシップを発揮**し、各部門からメンバーを選出した**推進チームを組成**することが不可欠です。
      - **人材育成**: デジタルツールを導入しても使いこなせる人材がいなければ意味がありません。若手を中心に**デジタル人材の育成計画を策定**する必要があります。また、3D データはベテラン技能者のノウハウ(技能)を形式知化し、若手に伝承するための有効なツールにもなります。OJT などを通じて、デジタルツールを活用した**技能伝承**を計画的に進めるべきです。

- **使用した経営学の知識**
  - **CAD/CAM/CAE**: 3D CAD の導入は、後工程の CAM(製造)や CAE(解析)との連携も視野に入れた、製品開発プロセス全体の効率化に繋がります。
  - **ナレッジマネジメント/技能伝承**: ベテランが持つ暗黙知(経験や勘)を、3D データなどの形式知に変換し、組織全体で共有・活用することはナレッジマネジメントの重要なテーマです。これは、事業承継における技能伝承の課題解決にも直結します。
  - **プロジェクトマネジメント**: システム導入を成功させるための推進体制の構築は、プロジェクトマネジメントの考え方に基づいています。

## 第 5 問(配点 20 点)

### 設問文

C 社社長が積極的に取り組みたいと考えているホームセンター X 社との新規取引に応えることは、C 社の今後の戦略にどのような可能性を持つのか、中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。

### 回答例(100 字)

**業務用市場依存から脱却し、成長性の高いアウトドアという BtoC 市場へ進出でき経営が安定する。また、小ロット・短納期生産への対応による生産性向上で、 PB 商品の企画提案や自社ブランド開発の可能性も拓ける。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「X 社では、コロナ禍の 2020 年以降も売上が順調に推移しているが、その要因の一つとしてアウトドア商品売上の貢献がある。」
  - 「生産、物流など現在のサプライチェーンの維持が難しくなっている。また今後も海外生産委託商品の仕入れ価格の高騰が懸念されることから、生産委託先を C 社へ変更する」
  - 「C 社社長は、当該事業の市場成長性と自社の強みを考慮して戦略とビジネスプロセスを見直し、積極的にこの事業に取り組むこととした。」
  - 「C 社社長は、今後高価格な製品に拡大することも期待している。」

- **答案作成の根拠**

  1.  **市場・顧客の多角化**: C 社は現在、コロナ禍で需要が落ち込んでいる業務用市場に大きく依存している。X 社との取引は、成長市場であるアウトドア市場(BtoC)への新規参入を意味し、特定の市場への依存度を下げ、**経営基盤を安定化**させる(事業ポートフォリオの改善)。
  2.  **生産能力・体質の強化**: X 社が要求する小ロット・短納期生産に対応する過程で、C 社は生産プロセスの見直し(段取り改善、生産計画の高度化、デジタル化など)を迫られる。これは、会社全体の**生産性向上**につながり、既存事業にも好影響を与える。
  3.  **新たな事業展開の可能性**: 当初は X 社の PB 商品の受託生産(OEM)から始まるが、C 社の強みである金型技術や提案力を活かせば、将来的には製品の共同開発や企画提案(ODM)へ発展する可能性がある。さらに、BtoC 市場での経験を積むことで、**自社ブランド製品を開発・販売**するという新たな戦略の道筋も見えてくる。これは、下請けからの脱却と収益性向上につながる大きな可能性を秘めている。

- **使用した経営学の知識**
  - **成長戦略 (アンゾフの成長マトリクス)**: この新規取引は、既存の技術(プレス加工)を活かして新しい市場(アウトドア市場)に参入する「市場開拓戦略」にあたる。
  - **OEM (Original Equipment Manufacturer) / ODM (Original Design Manufacturer)**: 当初は発注元の設計に基づいて生産する OEM だが、C 社の提案力を活かすことで、設計・開発から請け負う ODM へと事業モデルを進化させ、付加価値を高める可能性がある。
  - **コア・コンピタンス**: C 社の「難易度の高い金型製作技術」というコア・コンピタンスを、新たな市場で活用することで、持続的競争優位を築くことができる。

## AI への指示

あなたは、中小企業診断士二次試験の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。

**評価の基本方針**

- **模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。**
- あなたの解答の評価は、第一に**与件文の記述と設問要求に忠実であるか**、第二に**中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているか**を最優先の基準とします。
- 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その**独自の価値を積極的に評価**してください。
- 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という**視点を提供するもの**として活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。

上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、**60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点**で私の解答を添削してください。**加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイント**をバランス良く指摘してください。

評価は点数ではなく、下記の**ABCDEF 評価基準**に沿って行ってください。

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### ABCDEF 評価基準

- **A 評価 (完璧 / 80 点以上):** 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
- **B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点):** 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成が明快な、上位合格答案レベル。
- **C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点):** 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻がない。安定して合格点をクリアできるレベル。
- **D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点):** 解答の方向性は合っているが、根拠の不足や論理の飛躍が散見される。合否が分かれるレベル。
- **E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点):** 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。合格には改善が必要なレベル。
- **F 評価 (不合格レベル / 49 点以下):** 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。

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### 入力情報

与件文、設問文、出題の趣旨、解説、あなたの回答を参照してください。

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### 出力項目

以下の形式で、詳細なフィードバックをお願いします。

冒頭で `ABCDEF 評価基準`の定義を説明します。

**1. 設問ごとの添削**

**模範解答(比較参考用)**

`回答例と解説`の回答例を出力してください。

**あなたの回答**

模範回答との比較用にあなたの回答を掲載してください。

- **評価:** この設問の評価を **A / B / C / D / E / F** で端的に示してください。

- **フィードバック:**

- **① 設問解釈と方向性:** 設問の意図を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。模範解答とは違う切り口だが、与件文・設問要求に照らして有効か、といった視点で評価してください。
- **② 与件文の活用:** 解答の根拠として、与件文中のどの SWOT 情報を、どの程度効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。
- **③ 知識と論理構成:** 診断士としての経営知識を適切に応用できているか。「A だから B になる」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。模範解答とは異なる論理展開でも、それが妥当であれば評価してください。
- **④ 具体性と表現:** 抽象論に終始せず、企業の状況に合わせた具体的な記述ができているか。冗長な表現や不適切な言葉遣いはないか。
- **改善提案:**どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、**「どの与件文のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。あなたの解答の優れた点を活かす形での改善案も歓迎します。

**2. 総評**

- **総合評価:** 全ての設問を考慮した最終評価を **A / B / C / D / E / F** で示してください。
- **全体を通しての強み:** 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点を挙げてください。(模範解答にない独自の視点など)
- **全体を通しての課題:** 合格のために、最も優先的に改善すべき点を指摘してください。
- **合格に向けたアドバイス:** 今後の学習方針について、具体的なアドバイスをお願いします。

## あなたの回答

### 第 1 問(配点 20 点)

### 第 2 問(配点 20 点)

### 第 3 問(配点 20 点)

### 第 4 問(配点 20 点)

### 第 5 問(配点 20 点)

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