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令和元年度(2019 年度)事例 Ⅱ

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# 令和元年度(2019 年度)事例 Ⅱ

## 与件文

B 社は資本金 200 万円、社長を含む従業者 2 名の完全予約制ネイルサロンであり、地方都市 X 市内の商店街に立地する。この商店街は県内では大規模であり、週末には他地域からも来街客がある。中心部には小型百貨店が立地し、その周辺には少数ではあるが有名ブランドの衣料品店、宝飾店などのファッション関連の路面店が出店している。中心部以外には周辺住民が普段使いするような飲食店や生鮮品店、食料品店、雑貨店、美容室などが出店している。X 市は県内でも有数の住宅地であり、中でも商店街周辺は高級住宅地として知られる。X 市では商店街周辺を中核として 15 年前にファミリー向け宅地の開発が行われ、その頃に多数の家族が入居した(現在の人口分布は 4 ページの図 1 参照)。当該地域は新興住宅地であるものの、桜祭り、七夕祭り、秋祭り、クリスマス・マーケットなどの町内会、寺社、商店街主催のイベントが毎月あり、行事が盛んな土地柄である。

B 社は 2017 年に現在の社長が創業した。社長と社員 Y さんは共に 40 代の女性で、美術大学の同級生であり、美大時代に意気投合した友人でもある。社長は美大卒業後、当該県内の食品メーカーに勤務し、社内各部署からの要望に応じて、パッケージ、販促物をデザインする仕事に従事した。特に在職中から季節感の表現に定評があり、社長が提案した季節限定商品のパッケージや季節催事用の POP は、同社退職後も継続して利用されていた。Y さんは美大卒業後、X 市内 2 店を含む 10 店舗を有する貸衣装チェーン店に勤務し、衣装やアクセサリーの組み合わせを提案するコーディネーターとして従事した。2 人は同時期の出産を契機に退職し、しばらくは専業主婦として過ごしていた。やがて、子供が手から離れた頃に社長が、好きなデザインの仕事を、家事をこなしながら少ない元手で始められる仕事がないかと思案した結果、ネイルサロンの開業という結論に至った。Y さんも社長の誘いを受け、起業に参加した。なお、Y さんはその時期、前職の貸衣装チェーン店が予約会(注)を開催し、人手が不足する時期に、パートタイマーの同社店舗スタッフとして働いていた。Y さんは七五三、卒業式、結婚式に列席する 30〜50 代の女性顧客に、顧客の要望を聞きながら、参加イベントの雰囲気に合わせて衣装の提案を行う接客が高く評価されており、同社に惜しまれながらの退職であった。2 人は開業前にネイリスト専門学校に通い始めた。当初は絵画との筆遣いの違いに戸惑いを覚えたが、要領を得てからは持ち前の絵心で技術は飛躍的に向上した。

技術を身に付けた 2 人は、出店候補地の検討を開始した。その過程で空き店舗が見つかり、スペースを改装して営業を開始した。なお、当該店舗は商店街の中心部からは離れた場所にあり、建築から年数がたっており、細長いスペースが敬遠されていた。そのため、商店街の中では格安の賃貸料で借りることができた。また、デザインや装飾は 2 人の得意とするところであり、大規模な工事を除く内装のほとんどは手作業で行った。2 人が施術すれば満員となるような狭いスペースではあるものの、顧客からは落ち着く雰囲気だと高い評価を得ている。また、Y さんが商店街の貸衣装チェーン店で勤務していた経緯もあり、商店街の他店ともスムーズに良好な関係を築くことができた。  
ネイルサロンとは、ネイル化粧品を用いて手および足の爪にネイルケア、ネイルアートなどを施すサービスを行う店舗を指す。一般にネイルサロンの主力サービスは、ジェルネイルである(4 ページの図 2 参照)。ジェルネイルでは、ジェルと呼ばれる粘液状の合成樹脂を爪に塗り、LED ライトもしくは UV(紫外線)ライトを数十秒から 1 分程度照射してジェルを固める。この爪にジェルを塗る作業と照射を繰り返し、ネイルを完成させる。おおむね両手で平均 1 時間半の時間を要する(リムーブもしくはオフと呼ばれるジェルネイルの取り外しを含める場合は平均 2 時間程度である)。サービスを提供する際に顧客の要望を聞き、予算に基づき、要望を具体化する。ただし、言葉で伝えるのが難しいという顧客もおり、好きな絵柄や SNS 上のネイル写真を持参する場合も多くなっている。また B 社の価格体系は表のようになっている(表 B 社の価格体系参照)。

ネイルサロン市場は 2000 年代に入り需要が伸び、規模が拡大した。近年、成長はやや鈍化したものの、一定の市場規模が存在する。X 市の駅から商店街の中心部に向かう途中にも大手チェーンによるネイルサロンが出店している。また、「自宅サロン」と呼ばれる、大手チェーンのネイルサロン勤務経験者が退職後に自宅の一室で個人事業として開業しているサロンも、商店街周辺には多数存在する。

開業当初、B 社にはほとんど顧客がいなかった。あるとき、B 社社長が自分の子供の卒業式で着用した和服に合わせてデザインしたジェルネイルの写真を写真共有アプリ上にアップした。その画像がネット上で話題になり拡散され、技術の高さを評価した周辺住民が来店するようになった。そして、初期の顧客が友人達に B 社を紹介し、徐々に客数が増加していった。ジェルネイルは爪の成長に伴い、施術後から 3 週間〜1 カ月の間隔での来店が必要になる。つまり、固定客を獲得できれば定期的な来店が見込める。特に初来店の際に、顧客の要望に合ったデザイン、もしくは顧客の期待以上のデザインを提案し、その評価が高ければ固定化につながる例も多い。この際、社長や Y さんが前の勤務先で培った提案力が生かされた。結果、従業者 1 人当たり約 25 名の固定客を獲得するに至り、繁忙期には稼働率が 9 割を超える時期も散見されるようになった。なお、顧客の大半は従業者と同世代であり、そのうちデザイン重視の顧客と住宅地からの近さ重視の顧客は半数ずつとなっている。後者の場合、オプションを追加する顧客は少なく、力を発揮したい 2 人としてはやや物足りなく感じている。

B 社店舗の近隣には、数年前に小型 GMS が閉店したままの建物があった。そこを大手デベロッパーが買い取り、2019 年 11 月に小型ショッピングモールとして改装オープンすることが決定した。当初、一層の集客を期待した B 社社長であったが、当該モール内への大手チェーンによる低価格ネイルサロンの出店が明らかになった。B 社社長は、これまで自宅から近いことを理由に来店していた顧客が大幅に流出することを予想した。B 社社長と Y さんは、大幅に減少する顧客数を補うための施策について思案したが、良い案も出ず、今後の方針について中小企業診断士に相談することとした。

図 1 全国と X 市の年齢別人口構成比

| 年齢 (Age) | X 市の人口構成比 | 全国の人口構成比 |
| ---------- | ---------------- | ---------------- |
| 0-5        | 0.55             | 0.60             |
| 5-10       | 0.65             | 0.70             |
| 10-15      | 0.75             | 0.80             |
| 15-20      | 0.85             | 0.90             |
| 20-25      | 1.00             | 1.05             |
| 25-30      | 1.10             | 1.15             |
| 30-35      | 1.25             | 1.30             |
| 35-40      | 1.45             | 1.50             |
| 40-45      | 1.70             | 1.65             |
| 45-50      | 1.85             | 1.75             |
| 50-55      | 1.70             | 1.65             |
| 55-60      | 1.50             | 1.60             |
| 60-65      | 1.20             | 1.30             |
| 65-70      | 1.00             | 1.10             |
| 70-75      | 0.85             | 0.90             |
| 75-80      | 0.70             | 0.75             |
| 80-85      | 0.50             | 0.55             |
| 85-90      | 0.30             | 0.35             |
| 90-95      | 0.20             | 0.20             |
| 95-100     | 0.10             | 0.10             |

図 2 ジェルネイルの参考イメージ

表 B 社の価格体系

| 価格説明                     | 内容                                                                        |
| ---------------------------- | --------------------------------------------------------------------------- |
| 10 本当たり                  | 基本料金 ケア+単色のジェルネイル 7,000 円                                  |
| 1 本当たり                   | グラデーションなどの 2 色以上デザイン・オプション 500 円〜2,000 円          |
| システムストーン・オプション | 1 本当たりガラスやストーンなどを爪に乗せるオプション 300 円〜1,000 円       |
| アート・オプション           | 1 本当たりより凝ったデザインの絵を爪にアート・オプション 1,000 円〜6,000 円 |

### 表記補足

(注)貸衣装業界で行われるイベント。百貨店、ホール、ホテル、大学、結婚式場などの大規模な会場で、顧客が会場でサンプルを確認、試着し、気に入ったものがあれば商品を予約することができる。支払いは後日行う。

## 設問文

### 第 1 問(配点 20 点)

小型ショッピングモール開業を控えた 2019 年 10 月末時点の B 社の状況について、SWOT 分析をせよ。各要素について、①〜④ の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明すること。

### 第 2 問(配点 30 点)

B 社社長は初回来店時に、予約受け付けや確認のために、インスタント・メッセンジャー(インターネットによるメッセージ交換サービス)のアカウント(ユーザー ID)を顧客に尋ねている。インスタント・メッセンジャーでは個別にメッセージを配信できる。  
このアカウントを用いて、デザインを重視する既存顧客の客単価を高めるためには、個別にどのような情報発信を行うべきか。100 字以内で助言せよ。

### 第 3 問(配点 50 点)

B 社社長は 2019 年 11 月以降に顧客数が大幅に減少することを予想し、その分を補うために商店街の他業種との協業を模索している。

#### (設問 1)

B 社社長は減少するであろう顧客分を補うため、協業を通じた新規顧客のトライアルが必要であると考えている。どのような協業相手と組んで、どのような顧客層を獲得すべきか。理由と併せて 100 字以内で助言せよ。

#### (設問 2)

協業を通じて獲得した顧客層をリピートにつなげるために、初回来店時に店内での接客を通じてどのような提案をすべきか。価格プロモーション以外の提案について、理由と併せて 100 字以内で助言せよ。

## 出題の趣旨

### 第 1 問(配点 20 点)

B 社内外の経営環境を分析する能力を問う問題である。

### 第 2 問(配点 30 点)

B 社顧客個々の状況に合わせたコミュニケーション方法を提言する能力を問う問題である。

### 第 3 問(配点 50 点)

#### (設問 1)

B 社の状況や目的に応じて、協業相手やターゲットを提言する能力を問う問題である。

#### (設問 2)

B 社の強みを活かし、新規顧客との長期的関係性を築く施策を提言する能力を問う問題である。

# 令和元年度(2019 年度)事例 Ⅱ 回答と解説

## 第 1 問(配点 20 点)

### 設問文

小型ショッピングモール開業を控えた 2019 年 10 月末時点の B 社の状況について、SWOT 分析をせよ。各要素について、①〜④ の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明すること。

### 回答例

- **① 強み(40 字):社長と従業員が美大出身で、季節感や行事に合わせた高いデザイン力と提案力を有する。**
- **② 弱み(34 字):顧客の半数が近さ重視であり、提案力とデザイン力を活かせていない点。**
- **③ 機会(38 字):高級住宅地に隣接し、季節イベントが多くデザイン需要が見込める。SNS の普及。**
- **④ 脅威(37 字):自宅サロン増加や近隣 SC への低価格ネイルサロン出店による、価格競争の激化。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - **強み**:「社長と社員 Y さんは共に 40 代の女性で、美術大学の同級生」「社長は(中略)季節感の表現に定評があり」「Y さんは(中略)衣装やアクセサリーの組み合わせを提案するコーディネーターとして従事」「顧客の期待以上のデザインを提案し、その評価が高ければ固定化につながる例も多い」
  - **弱み**:「そのうちデザイン重視の顧客と住宅地からの近さ重視の顧客は半数ずつとなっている」「後者の場合、オプションを追加する顧客は少なく、力を発揮したい 2 人としてはやや物足りなく感じている」
  - **機会**:「商店街周辺は高級住宅地として知られる」「桜祭り、七夕祭り、秋祭り、クリスマス・マーケットなどの(中略)イベントが毎月あり、行事が盛んな土地柄」「ジェルネイルの写真を写真共有アプリ上にアップした。その画像がネット上で話題になり拡散され、技術の高さを評価した周辺住民が来店」
  - **脅威**:「『自宅サロン』と呼ばれる(中略)サロンも、商店街周辺には多数存在する」「当該モール内への大手チェーンによる低価格ネイルサロンの出店が明らかになった」「これまで自宅から近いことを理由に来店していた顧客が大幅に流出することを予想した」

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- **答案作成の根拠**
  与件文から B 社の内部環境(リソース、ケイパビリティ)と外部環境(市場、競合、地域特性)を抽出し、2019 年 10 月末時点での状況を整理する。

  - **強み**:B 社の競争優位性の源泉は、単なるネイル技術ではなく、経営者 2 名の経歴に裏打ちされた**高度なデザイン力と提案力**にあります。社長の季節感を捉える感性や、Y さんのコーディネート能力は、顧客の漠然とした要望を期待以上の形にする力となり、高い顧客満足度とリピート率を実現しています。これは他社が容易に模倣できない、B 社固有の**コア・コンピタンス**と言えます。
  - **弱み**:B 社は全顧客の半数を占める「近さ重視」層に対して、自社の最大の強みであるデザイン提案力を十分に発揮できていません。この顧客層はオプション追加が少なく**客単価が低い**傾向にあり、収益性の観点から課題となっています。さらに、この層は近隣に低価格店が出店した場合、最も**流出しやすい**ため、経営上の大きなリスク(脆弱性)となっています。
  - **機会**:B 社を取り巻く外部環境には、事業を成長させる追い風が吹いています。**高級住宅地**という立地は、デザインのような付加価値に対して支出を惜しまない顧客層の存在を示唆します。また、**豊富な地域イベント**は、B 社の強みである「行事に合わせたデザイン」を提案する絶好の機会となります。さらに、過去の成功体験から、**SNS**は低コストでデザインの魅力を伝え、これら潜在顧客にアプローチできる有効なマーケティングチャネルであることがわかります。
  - **脅威**:B 社は厳しい競争環境に直面しています。既存の**多数の自宅サロン**に加え、近隣に**資本力のある大手チェーンの低価格店**が出店することは、最も直接的で重大な脅威です。これにより、特に「近さ重視」の価格に敏感な顧客層が奪われ、地域全体で**価格競争が激化**することが必至です。デザイン力を武器とする B 社にとって、価格での勝負は不利な戦いとなります。

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- **使用した経営学の知識**
  - **SWOT 分析**:企業の外部環境(機会・脅'威)と内部環境(強み・弱み)を分析し、戦略立案に活かすフレームワーク。本設問は、このフレームワークに基づき B 社の経営環境を客観的に分析する能力を問うています。
  - **コア・コンピタンス**:競合他社に真似されにくい、自社ならではの中核的な強みを分析する際に用います。(強み)
  - **PEST 分析**:社会(Social)や技術(Technological)などのマクロ環境を分析し、事業への影響を把握します。(機会)
  - **ファイブフォース分析**:新規参入の脅威や業界内の競争など、業界の構造を分析する際に用います。(脅威)

## 第 2 問(配点 30 点)

### 設問文

B 社社長は初回来店時に、予約受け付けや確認のために、インスタント・メッセンジャー(インターネットによるメッセージ交換サービス)のアカウント(ユーザー ID)を顧客に尋ねている。インスタント・メッセンジャーでは個別にメッセージを配信できる。

このアカウントを用いて、デザインを重視する既存顧客の客単価を高めるためには、個別にどのような情報発信を行うべきか。100 字以内で助言せよ。

### 回答例(99 字)

**顧客の過去の施術履歴や会話内容から、参加予定の地域のイベントや服装に合わせたオリジナルデザイン案を作成する。そのデザイン画像を事前に送信し、特別感を演出し、高価格帯のアート・オプションの利用を促す。**

### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「インスタント・メッセンジャーでは個別にメッセージを配信できる」
  - 「デザインを重視する既存顧客の客単価を高めるため」
  - 「社長が提案した季節限定商品のパッケージや季節催事用の POP」「Y さんは(中略)衣装やアクセサリーの組み合わせを提案するコーディネーターとして従事」
  - 「アート・オプション 1 本当たりより凝ったデザインの絵を爪にアート・オプション 1,000 円〜6,000 円」
  - 「行事が盛んな土地柄である」

- **答案作成の根拠**
  本設問は、既存顧客の中でも「デザイン重視」の顧客をターゲットとし、「客単価向上」を目的とした施策を問うている。手段として「インスタント・メッセンジャーでの個別配信」が指定されている。

  1.  **個別性(One to One)**:不特定多数への一斉配信ではなく、顧客一人ひとりの過去の施術履歴、会話から得た好みやライフスタイル(参加予定のイベントなど)を踏まえた「あなただけへの提案」であることが重要となる。
  2.  **強みの活用**:B 社の強みである「季節感やイベントに合わせたデザイン提案力」や「ファッションコーディネート力」を最大限に活用する。
  3.  **客単価向上への誘導**:単なるデザイン提案に留まらず、具体的な画像を送付することで顧客の購買意欲を刺激し、基本料金に上乗せされる高単価な「アート・オプション」の追加を自然に促す。これにより、目的である客単価向上を実現する。

- **使用した経営学の知識**
  - **CRM(Customer Relationship Management)**:顧客との良好な関係を構築・維持し、顧客ロイヤルティを高める経営手法。顧客情報を活用した個別アプローチは CRM の中核的な活動である。
  - **One to One マーケティング**:顧客一人ひとりのニーズや属性に合わせて、個別に最適化されたマーケティング活動を行うこと。インスタント・メッセンジャーの個別配信は、この手法を実践する有効なツールである。
  - **アップセル**:顧客が現在利用している、あるいは検討している商品よりも、さらに高価格な上位モデルの商品を購入してもらうためのアプローチ。本件では、基本ネイルから高単価なアート・オプションへの誘導がこれにあたる。

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## 第 3 問(配点 50 点)

### 設問文

B 社社長は 2019 年 11 月以降に顧客数が大幅に減少することを予想し、その分を補うために商店街の他業種との協業を模索している。

### (設問 1)

B 社社長は減少するであろう顧客分を補うため、協業を通じた新規顧客のトライアルが必要であると考えている。どのような協業相手と組んで、どのような顧客層を獲得すべきか。理由と併せて 100 字以内で助言せよ。

### 回答例(100 字)

**協業相手は Y さんの人的ネットワークを活かせる商店街の貸衣装店。七五三や卒業式等の特別な衣装に合わせるネイルという B 社の強みを活かし、デザインを重視する母親層を獲得する。これにより競合との差別化を図る。**

#### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「商店街の他業種との協業を模索」
  - 「Y さんは(中略)10 店舗を有する貸衣装チェーン店に勤務」「Y さんが商店街の貸衣装チェーン店で勤務していた経緯もあり、商店街の他店ともスムーズに良好な関係を築くことができた」
  - 「Y さんは七五三、卒業式、結婚式に列席する 30〜50 代の女性顧客に(中略)接客が高く評価」
  - 「社長が自分の子供の卒業式で着用した和服に合わせてデザインしたジェルネイルの写真が写真共有アプリ上にアップした。その画像がネット上で話題になり拡散され、技術の高さを評価した周辺住民が来店」

- **答案作成の根拠**
  低価格店の出店により流出が懸念される「近さ重視」の顧客を補うためには、価格競争を避け、B 社の強みが響く新たな顧客層を開拓する必要がある。

  1.  **協業相手の選定**:B 社の強みである「和装や特別な衣装に合わせた高いデザイン力」と最も親和性が高いのは「貸衣装店」である。また、Y さんの前職が貸衣装店であり、商店街の他店と良好な関係を築けていることから、協業の実現可能性が非常に高い。
  2.  **ターゲット顧客層の選定**:貸衣装店の主な顧客であり、B 社の従業員とも同世代である「七五三や卒業・入学式などのライフイベントを控えた 30〜50 代の母親層」をターゲットとする。この層は、特別な日のためには投資を惜しまない傾向があり、デザイン性を重視するため、B 社の強みを高く評価してくれる可能性が高い。
  3.  **理由**:この協業により、低価格を武器とする競合とは異なる土俵で勝負できる。B 社の独自性(強み)を最大限に発揮し、高単価でロイヤルティの高い新規顧客を獲得することが、持続的な成長につながる。

- **使用した経営学の知識**
  - **アライアンス戦略(協業)**:複数の企業が経営資源を出し合い、協力して事業を行うことで、単独では得られない競争優位性を築く戦略。本件では、B 社のデザイン力と貸衣装店の顧客基盤を組み合わせることでシナジー効果を狙う。
  - **ターゲティング**:市場の中から、自社の強みを最も活かせる、あるいは最も魅力的な顧客セグメントを選び出し、そこに経営資源を集中させること。ここでは、価格志向の顧客ではなく、デザイン志向のイベント需要を持つ顧客層を狙い撃ちする。
  - **差別化戦略**:競合他社に対して、製品やサービスの機能、品質、デザイン、ブランドイメージなどで違いを打ち出し、競争優位を築く戦略。

### (設問 2)

協業を通じて獲得した顧客層をリピートにつなげるために、初回来店時に店内での接客を通じてどのような提案をすべきか。価格プロモーション以外の提案について、理由と併せて 100 字以内で助言せよ。

### 回答例(97 字)

**施術中の会話から趣味やライフスタイルを把握する。毎月の地域イベントや普段の服装に合わせた日常使いのネイルデザインを具体的に提案する。特別な日以外でもネイルを楽しむ価値を伝え、継続的な来店を促す。**

#### 解説

- **問題文の該当箇所**

  - 「協業を通じて獲得した顧客層をリピートにつなげるため」
  - 「価格プロモーション以外の提案」
  - 「桜祭り、七夕祭り、秋祭り、クリスマス・マーケットなどの(中略)イベントが毎月あり」
  - 「社長や Y さんが前の勤務先で培った提案力が生かされた」
  - 「固定客を獲得できれば定期的な来店が見込める」

- **答案作成の根拠**
  協業で獲得した新規顧客は、「特定のイベント(ハレの日)」を目的として来店している。この顧客をリピート客(固定客)にするためには、「日常(ケの日)」でもネイルを楽しむ価値を伝え、継続的な関係性を築くことが不可欠である。

  1.  **提案のタイミングと方法**:初回来店時の施術中という、顧客と密にコミュニケーションが取れる時間を活用する。会話の中から顧客の趣味、仕事、ファッションの好み、今後の予定といったパーソナルな情報を自然にヒアリングする。
  2.  **提案内容**:「価格プロモーション以外」という制約があるため、B 社のコアな強みである「提案力」で勝負する。ヒアリングした情報と、地域で毎月開催されるイベント情報を掛け合わせ、「次の〇〇祭りには、こんなデザインはいかがですか?」「普段お召しの〇〇色のブラウスにも合いますよ」といった、次の来店を想起させる具体的な提案を行う。
  3.  **理由(目的)**:この提案を通じて、ネイルが「ハレの日」だけの特別なものではなく、日常を彩る楽しいものであると顧客に気づかせる。これにより、ネイルをライフスタイルの一部として取り入れてもらい、3 週間~ 1 ヶ月ごとの定期的な来店につなげ、デザインを重視する優良な固定客へと育成する。

- **使用した経営学の知識**
  - **顧客ロイヤルティの醸成**:顧客が特定の企業やブランドに対して信頼や愛着を感じ、継続的に利用し続けてくれる状態を作り出すこと。特別な日から日常への提案を通じて、顧客との心理的なつながりを深める。
  - **LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上**:一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益の総額。リピート化を促進し、継続的にオプションを追加してもらうことで、LTV の最大化を目指す。
  - **カウンセリングセールス**:商品を一方的に売り込むのではなく、顧客との対話を通じてニーズや課題を深く理解し、その解決策として自社の商品・サービスを提案する販売手法。B 社の社長と Y さんの高い提案力は、このスタイルに適している。

## AI への指示

あなたは、中小企業診断士二次試験の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。

**評価の基本方針**

- **模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。**
- あなたの解答の評価は、第一に**与件文の記述と設問要求に忠実であるか**、第二に**中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているか**を最優先の基準とします。
- 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その**独自の価値を積極的に評価**してください。
- 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という**視点を提供するもの**として活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。

上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、**60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点**で私の解答を添削してください。**加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイント**をバランス良く指摘してください。

評価は点数ではなく、下記の**ABCDEF 評価基準**に沿って行ってください。

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### ABCDEF 評価基準

- **A 評価 (完璧 / 80 点以上):** 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
- **B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点):** 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成が明快な、上位合格答案レベル。
- **C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点):** 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻がない。安定して合格点をクリアできるレベル。
- **D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点):** 解答の方向性は合っているが、根拠の不足や論理の飛躍が散見される。合否が分かれるレベル。
- **E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点):** 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。合格には改善が必要なレベル。
- **F 評価 (不合格レベル / 49 点以下):** 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。

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### 入力情報

与件文、設問文、出題の趣旨、解説、あなたの回答を参照してください。

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### 出力項目

以下の形式で、詳細なフィードバックをお願いします。

冒頭で `ABCDEF 評価基準`の定義を説明します。

**1. 設問ごとの添削**

**模範解答(比較参考用)**

`回答例と解説`の回答例を出力してください。

**あなたの回答**

模範回答との比較用にあなたの回答を掲載してください。

- **評価:** この設問の評価を **A / B / C / D / E / F** で端的に示してください。

- **フィードバック:**

- **① 設問解釈と方向性:** 設問の意図を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。模範解答とは違う切り口だが、与件文・設問要求に照らして有効か、といった視点で評価してください。
- **② 与件文の活用:** 解答の根拠として、与件文中のどの SWOT 情報を、どの程度効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。
- **③ 知識と論理構成:** 診断士としての経営知識を適切に応用できているか。「A だから B になる」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。模範解答とは異なる論理展開でも、それが妥当であれば評価してください。
- **④ 具体性と表現:** 抽象論に終始せず、企業の状況に合わせた具体的な記述ができているか。冗長な表現や不適切な言葉遣いはないか。
- **改善提案:**どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、**「どの与件文のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。あなたの解答の優れた点を活かす形での改善案も歓迎します。

**2. 総評**

- **総合評価:** 全ての設問を考慮した最終評価を **A / B / C / D / E / F** で示してください。
- **全体を通しての強み:** 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点を挙げてください。(模範解答にない独自の視点など)
- **全体を通しての課題:** 合格のために、最も優先的に改善すべき点を指摘してください。
- **合格に向けたアドバイス:** 今後の学習方針について、具体的なアドバイスをお願いします。

## あなたの回答

### 第 1 問(配点 20 点)

### 第 2 問(配点 30 点)

### 第 3 問(配点 50 点)

#### (設問 1)

#### (設問 2)

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