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2025 年度 事例 Ⅲ C 社(紙パイプ製造業) 口述試験想定問答集
1. 経営戦略・SWOT に関する質問
Q1. C 社を取り巻く外部環境として、最大の追い風(機会)は何だと考えますか?
「サステナビリティ意識の高まりによる、脱プラスチック需要」 です。 ペーパーレス化で紙需要全体は縮小傾向ですが、環境負荷の低い紙素材への回帰が進んでおり、特に C 社の製品は再生紙を利用し、リサイクル可能な循環型製品であるため、このトレンドが大きな機会となります。
Q2. C 社が新規事業(食品・医療用)に参入する上で、既存事業のどのような強みを活かせると考えますか?
「多様な用途への対応力」と「製品設計のノウハウ」 です。 C 社は製紙用から産業用、建築用へと用途を広げてきた実績があり、顧客の要望に応じて仕様(強度や抜き取りやすさなど)を実現する技術があります。この技術基盤は、食品・医療用という新たな厳格な基準に対応する際にも活用できると考えます。
2. 生産管理(工程管理・在庫管理)に関する質問
Q3. 社長は「製品在庫を持たずに」納期対応することを決めました。なぜ在庫を持つべきではないと考えますか?
「多品種少量生産かつ受注生産という特性」と「キャッシュフローの悪化防止」 のためです。 C 社は顧客ごとに仕様が異なるため、見込み生産で作った在庫が売れ残る(死蔵在庫化する)リスクが高いです。また、新たな倉庫建設や在庫維持にかかるコストは、資金繰りを圧迫するため、在庫ではなく「リードタイム短縮」で対応すべきだという判断は妥当です。
Q4. 現在、特急注文や仕様変更で現場が混乱しています。これを防ぐために生産計画(計画統制)をどう見直すべきですか?
「計画サイクルの短縮」と「進捗情報のリアルタイム共有」 が必要です。 現在の「週次計画」では日々の変動に対応しきれません。「日次計画」への変更や、計画変更をホワイトボードや紙メモではなく、タブレット等の IT ツールを用いて全工程で即時共有する仕組みを導入し、混乱を未然に防ぐべきです。
Q5. 原材料の欠品による作業停滞が発生しています。どのような発注方式に切り替えるべきですか?
現在の「不足に気づいた時(作業員任せ)」の発注から、 「発注点方式」または「定期発注方式」 へ切り替えるべきです。 具体的には、原材料ごとに在庫基準(発注点)を定め、その量を下回ったら自動的に発注する仕組みを作るか、生産計画に基づいて所要量を計算(MRP 的な考え方)し、計画的に発注する体制を整える必要があります。
3. 品質管理(QC)・技術継承に関する質問
Q6. 顧客からのクレームが増加している最大の原因は何であり、どう対処すべきですか?
原因は、 「作業の属人化(ベテランの勘・コツへの依存)」 です。 接着剤の塗布や巻き取り作業が標準化されておらず、作業者によって品質にばらつきが出ています。対処策として、ベテランの作業を動画や数値(定量基準)でマニュアル化し、誰が作業しても一定の品質が出せる「標準作業」を確立すべきです。
Q7. 現在のクレーム対応は「作り直して再納品」だけですが、品質管理体制として何が不足していますか?
「再発防止の仕組み(PDCA)」 が欠落しています。 不適合品が発生した際、その場しのぎの対応で終わらせず、発生原因を分析(なぜなぜ分析など)し、対策を講じて標準書を改訂するというプロセスが必要です。また、クレーム情報を全社で共有し、組織的な品質向上活動につなげる必要があります。
4. 新規事業・組織変革に関する質問
Q8. 食品・医療用分野へ参入する際、従来の産業用・建築用とは異なる、どのような管理体制が必要ですか?
「衛生管理(衛生基準の遵守)」と「トレーサビリティの確保」 が不可欠です。 食品や医療用は、異物混入や汚染が許されません。工場内のゾーニング(清潔区と汚染区の区分け)、防虫・防塵対策、作業員の衛生教育を徹底する必要があります。また、万が一の際に原材料や製造履歴を追跡できる体制整備も求められます。
Q9. ベテラン社員の引退に伴う技術継承について、OJT 以外にどのような取り組みが有効ですか?
「技術の形式知化」と「多能工化」 です。 OJT はどうしても教える側の主観が入るため、マニュアル作成による形式知化を進めます。また、特定の人が特定ラインしか担当できない状況を解消するため、ジョブローテーションを行い、若手が複数の工程を経験できる仕組み(多能工化)を作ることで、組織全体のスキル底上げを図ります。
Q10. 生産性向上のために IT(デジタル技術)を導入するとしたら、C 社はまず何から始めるべきですか?
「生産指示と進捗管理のデジタル化」 から始めるべきです。 アナログなホワイトボードや紙メモでの伝達が混乱の元凶となっているため、安価な工程管理システムやチャットツール等を導入し、指示変更や進捗状況をリアルタイムで「見える化」することが、最も投資対効果が高いと考えられます。
事例 Ⅲ(生産管理)口述試験のアドバイス
事例 Ⅲ の口述試験では、以下のキーワードや視点を意識すると、診断士らしい回答になります。
- 「QCD(品質・コスト・納期)」のバランス
- 「コストを下げてください」と聞かれても、「品質を維持しつつ」という枕詞を入れるなど、QCD のバランスを意識していることを示してください。
- 「3S(標準化・単純化・専門化)」
- C 社のような中小製造業の改善策は、ほぼ間違いなく「標準化(マニュアル化)」に行き着きます。困ったら「標準化が不足しているため~」という切り口が有効です。
- 「4M(Man, Machine, Material, Method)」
- 問題の原因を分析する際、「人(Man)のスキル不足」「方法(Method)の不備」など、4M の視点で整理して話すと論理的です。
事例 Ⅲ は論理的な整合性がとりやすい科目ですので、自信を持って、 「現状の問題点」→「あるべき姿」→「そのギャップを埋める具体策」 の順で話すように心がけてください。