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平成 27 年度(2015 年度)事例 Ⅱ 回答と解説

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第 1 問(配点 40 点)

設問 1

今後、B 商店街はどのような顧客層をターゲットとすべきか。代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。

回答例(86 字)

低価格志向の総合スーパーとの差別化を図るため、高層マンション街に居住し、可処分所得が高く品質や体験価値を重視する 30 ~ 40 代の子育てファミリー層をターゲットとすべきである。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「工場街跡地に高価格で販売される高層マンションが多数開発され、高層マンション街が形成されつつある。」
    • 図 2 の年齢別人口(2005 年比で 0 ~ 10 歳、30 ~ 40 代が増加)
    • 「総合スーパーの低価格の NB 商品や PB 商品が、低価格志向にある周辺住民の非食品需要も吸収」
    • 代表理事が「総合スーパーとのすみ分けが重要であると考えている。」
  • 答案作成の根拠 与件文より、B 商店街の商圏では高価格帯マンションの建設に伴い、新たな住民層が流入していることが読み取れる。図 2 の人口動態は、この新住民層が 0 ~ 10 歳の子供を持つ 30 ~ 40 代の子育てファミリー層であることを示唆している。「高価格」マンションの住民であることから、可処分所得が高いと推測できる。

    一方、競合である総合スーパーは「低価格」を強みとしており、過去に商店街の非食品需要を奪った経緯がある。代表理事もこの総合スーパーとの「すみ分け」を課題と認識している。したがって、価格競争を避け、持続的な発展を目指すためには、総合スーパーの顧客層とは異なる、品質や専門性、体験価値を重視する高所得層を狙うべきである。この新住民層をターゲットとすることで、競合との差別化と、商店街の新たな価値創造が可能になると判断できる。

  • 使用した経営学の知識

    • セグメンテーション(市場細分化): 人口動態変数(年齢、家族構成)や地理的変数(居住地域)、心理的変数(価値観)を用いて市場を細分化し、最も魅力的なセグメントを特定するものである。
    • ターゲティング(標的市場の設定): 自社の強みを活かし、競合との差別化が可能な市場セグメントを標的として選定するプロセスである。ここでは、新たに流入した「高所得ファミリー層」を標的市場としている。
    • ポジショニング: 競合(総合スーパー)との差別化を図るため、「低価格」ではなく「高品質・高付加価値」という独自のポジションを顧客の心の中に築く戦略である。

設問 2

設問 1 で解答したターゲット顧客層向けに、新たにどのようなサービス業の業種を誘致すべきか。代表理事への助言内容を 50 字以内で述べよ。

回答例(48 字)

子供向けの学習塾や習い事教室、親子で楽しめるカフェ等、子育て支援に関連するサービス業を誘致する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 設問 1 で設定したターゲット顧客層(子育てファミリー層)
  • 答案作成の根拠 設問 1 でターゲットを「子育てファミリー層」と設定した。この層のニーズに応えるためには、子供自身の成長や楽しみ、あるいは親子での時間に貢献するサービスが有効である。高所得層は子供の教育への関心が高い傾向があるため、学習塾や音楽・スポーツなどの習い事教室は需要が見込める。また、親子で安心して過ごせるカフェなども、日常的な来街動機に繋がりやすい。これらの業種は、ターゲット層のライフスタイルに密着しており、商店街への継続的な来訪を促す効果が期待できる。

  • 使用した経営学の知識

    • 顧客ニーズ分析: ターゲット顧客層(子育てファミリー層)が抱えるニーズ(子供の教育、親子での時間消費)を分析し、それに応えるサービスを具体化する。
    • テナント・ミックス: 商店街全体の魅力を高めるために、ターゲット顧客のニーズを満たす店舗構成を計画的に行う。

設問 3

設問 2 で解答した業種の店と B 商店街の主力である既存の飲食店とのテナント・ミックス(店舗の組み合わせ)の効果を最大化するために、個々の飲食店の店主達はどのようなマーケティング戦略をとるべきか。助言内容を 50 字以内で述べよ。

回答例(50 字)

子供が習い事等のサービス利用中に、親が安心して食事を楽しめるよう、子供向けメニューや個室を用意する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「“大人が落ち着いて食事ができる食事処”といった趣の店に変わっていった。」
    • 設問 1 で設定したターゲット顧客層(子育てファミリー層)
    • 設問 2 で誘致を提案した業種(子供向けサービス業)
  • 答案作成の根拠 設問 2 で誘致した子供向けサービス(学習塾や習い事)の利用者(親)は、子供がサービスを受けている間、待ち時間が発生する。この時間を商店街の飲食店で過ごしてもらうことで、新たな需要を創出できる。既存の飲食店の強みである「大人が落ち着ける」雰囲気は維持しつつ、子連れの親が利用しやすいように、子供向けメニューの提供や、周りを気にせず過ごせる個室を用意するといった配慮が求められる。これにより、新規サービス業と既存飲食店の間に相乗効果(シナジー)が生まれ、テナント・ミックスの効果が最大化される。

  • 使用した経営学の知識

    • シナジー効果: 複数の事業や店舗が連携することで、それぞれが単独で活動する以上の成果を生み出すこと。ここでは、サービス業(集客)と飲食店(収益化)の連携による相乗効果を狙う。
    • インストア・マーケティング: 店舗内での品揃えやサービス内容を工夫し、顧客の利用価値を高める戦略。

第 2 問(配点 20 点)

設問文

物産市当日における非食品小売店の売上向上を実現するためには、非食品小売店の店主達へどのような助言をすべきか。B 商店街の主な非食品小売店である家具店、食器店、スポーツ用品店の中からひとつの業種店を対象に選択し、(a)欄の該当する業種店の番号に ○ 印を付けるとともに、(b)欄に助言内容を 100 字以内で述べよ。

回答例(食器店を選択)

(a) 業種店

食器店

(b) 助言内容(95 字)

物産市の出店者と連携し、販売されているこだわりの農水産物や加工食品に合う食器を店頭で展示・提案販売する。料理の盛り付け例など具体的な使用場面を見せることで、来街者の食への関心を購買に繋げる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「物産市」は「県内の農水産物および加工品」「こだわりの商品を販売する小売店」が出店。
    • 「イベント当日は飲食店、サービス業の売り上げは大幅に増加するが、非食品小売店の店主からは『売上増加効果が現れていない』といった不満の声が挙がっている。」
    • 選択肢:家具店、食器店、スポーツ用品店
  • 答案作成の根拠 物産市の来街者は「こだわりの食」への関心が高い層だと考えられる。この来街者の関心事と、非食品小売店の商品を最も効果的に結びつけられるのは「食器店」である。物産市で販売される高品質な食材や料理を、さらに引き立てる「器」として食器を提案することで、自然な形で購買意欲を喚起できる。具体的には、物産市の出店者と協力し、彼らの商品を実際に盛り付けた食器を展示するなど、使用シーンを具体的に見せることが有効である。「こだわりの食」を「こだわりの器」で楽しむというライフスタイルを提案することで、イベントの集客を売上に繋げることができる。家具店やスポーツ用品店では、「食」との直接的な関連性を見出すのが難しく、即時的な購買には結びつきにくい。

  • 使用した経営学の知識

    • 関連販売(クロスマーチャンダイジング): ある商品(物産市の食品)に関連する別のカテゴリーの商品(食器)を同時に提案し、合わせ買いを促進する手法。
    • VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング): 商品の視覚的な演出によって顧客の購買意欲を高める手法。ここでは、料理の盛り付け例という具体的な VMD を提案している。

回答例(家具店を選択)

(a) 業種店

家具店

(b) 助言内容(95 字)

物産市の出店者と連携し、その食材を実際に使った食卓空間を店頭で演出する。家族で食事を愉しむ上質なライフスタイルを具体的に提案し、高所得ファミリー層の関心を惹きつけ、後日の相談や受注に繋げる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「物産市」は「こだわりの商品を販売する小売店」が出店。
    • 「非食品小売店の店主からは『売上増加効果が現れていない』」
    • 商圏のターゲット層として想定される「高価格で販売される高層マンション」の住民。
  • 答案作成の根拠 家具は高価格な耐久消費財であり、物産市当日の衝動的な購買は期待できない。そのため、その場での直接的な売上向上ではなく、将来の販売機会を創出する見込み客獲得を目的とすることが、現実的かつ効果的な戦略である。

    物産市の来街者が持つ「こだわりの食」への関心を、食を愉しむ「空間」や「体験」へと結びつける。具体的には、物産市で販売されている食材を実際にテーブルに並べるなど、出店者と連携して具体的な食卓シーンを演出する。これにより、来街者は商品を単なる「モノ」としてではなく、豊かなライフスタイルを実現するための「コト(体験)」の一部として認識する。

    このアプローチは、商圏に増加している高所得ファミリー層の価値観と強く合致する。彼らはモノの機能的価値だけでなく、それによってもたらされる体験や満足感を重視する傾向にあるからだ。魅力的な空間展示を通じて店舗と商品の認知度を高め、後日の来店や購入相談といった具体的な行動を促すことが、最終的な売上向上に繋がるのである。

  • 使用した経営学の知識

    • コト消費: モノの所有価値よりも、それを利用して得られる体験価値を重視する消費スタイル。ここでは、家具という「モノ」を、家族団らんという「コト」と結びつけて提案している。
    • VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング): 商品の視覚的な演出によって顧客の購買意欲を高める手法。ここでは、物産市の食材と連携したテーブルコーディネートがこれに該当する。
    • リードジェネレーション(見込み客獲得): 高額商品においては、即決を迫るのではなく、まず見込み客の情報を獲得し、継続的な関係を築いて将来の購買に繋げることが重要である。

回答例(スポーツ用品店を選択)

(a) 業種店

スポーツ用品店

(b) 助言内容(99 字)

物産市の健康志向の来街者に対し、近隣の公園等を活用したウォーキングイベントを企画・提案する。イベントを通じて参加者との関係を構築し、適切なウェアやシューズの必要性を訴求することで店舗への来店を促す。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「物産市」は「こだわりの商品を販売する小売店」が出店。
    • 「非食品小売店の店主からは『売上増加効果が現れていない』」
    • 商圏のターゲット層として想定される「高価格で販売される高層マンション」の住民。
  • 答案作成の根拠 スポーツ用品は、家具と同様に目的買いが多く、物産市当日の衝動的な購買に繋げにくい。そのため、将来の顧客を育成するという視点でのアプローチが有効である。

    物産市に来街する人々は、こだわりの食材を求めることから、「健康」への関心が高い層であると推測できる。この潜在的なニーズを掘り起こし、スポーツへの関心へと繋げることが戦略の核となる。具体的な手法として、運動を始めるきっかけとなる体験イベントを企画する。特別な施設を必要としないウォーキングは、初心者でも参加しやすく、商圏に増加しているファミリー層も親子で楽しめるため、ターゲット層に合致している。

    イベントの目的は、その場での販売ではなく、**参加者との関係構築(リレーションシップ・マーケティング)**である。専門知識を持つ店主が講師役などを務めることで、参加者からの信頼を獲得する。その上で、快適で安全な運動には適切な用具が必要であることを自然な形で訴求し、店舗への来店と将来的な購買に結びつけるのである。

  • 使用した経営学の知識

    • コト消費: モノ(商品)の購入だけでなく、それを通じて得られる体験に価値を見出す消費行動。ここでは「ウォーキングイベント」という体験を提供し、商品の必要性を実感させる。
    • コミュニティ・マーケティング: 顧客とのコミュニティを形成・活用することで、ブランドへのロイヤルティを高め、継続的な関係を築く手法。イベントの開催は、コミュニティ形成の第一歩となる。
    • リードナーチャリング(見込み客育成): 獲得した見込み客(リード)に対し、継続的に情報提供やコミュニケーションを行うことで、購買意欲を高めていくプロセス。イベント参加者を将来の優良顧客へと育成する。

第 3 問(配点 40 点)

設問 1

代表理事は、B 商店街の魅力向上に向け、食品小売店の誘致が必要であると考えている。B 商店街はどのような食品小売店を誘致すべきか。当該食品小売店のマーケティング戦略と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。

回答例(96 字)

総合スーパーでは扱わない高品質な生鮮三品や、世界のチーズ、ワイン等の専門性の高い嗜好品を扱う専門店を誘致する。専門知識に基づく対面販売や調理法の提案により、食にこだわる富裕層の需要を獲得する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「総合スーパーの低価格の NB 商品や PB 商品が、低価格志向にある周辺住民の非食品需要も吸収」
    • 「食品販売を提供する総合スーパー」と「飲食、非食品販売、サービスを提供する商店街」という補完関係が機能しなかった。
    • 「物産市」の成功(こだわりの商品への需要)
    • 新たなターゲット層(高所得ファミリー層)
  • 答案作成の根拠 総合スーパーの強みは「低価格」と「幅広い品揃え(NB・PB 商品)」である。これと競合を避け、差別化を図るためには、B 商店街は「高品質」「専門性」「高付加価値」を追求する必要がある。物産市の成功は、商圏内に「こだわりの商品」への潜在需要があることを示している。また、新たなターゲットである高所得層は、価格よりも品質や専門性を重視する傾向がある。したがって、総合スーパーが手薄な、高品質な生鮮品(精肉、鮮魚、青果)や、嗜好性の高い輸入食材、デリカテッセンなどを扱う専門店を誘致すべきである。さらに、店主の専門知識を活かした対面での商品説明や調理法提案といった人的サービスを組み合わせることで、価格以外の価値を提供し、固定客を獲得する戦略が有効となる。

  • 使用した経営学の知識

    • 差別化戦略: 競合他社(総合スーパー)に対して、製品の品質、サービス、ブランドイメージなどで違いを打ち出し、競争優位を築く戦略。ここでは「品質」と「専門性」で差別化を図る。
    • ニッチ戦略: 大企業が参入しにくい小規模な市場(ニッチ市場)に経営資源を集中する戦略。「高品質・専門食材」というニッチ市場を狙う。

設問 2

代表理事は、設問 1 で解答した食品小売店が長期にわたり商店街に定着するための誘致と連動した新規イベントを実施したいと考えている。どのような新規イベントを実施すべきか。期待される効果と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。

回答例(95 字)

誘致した店の店主や既存飲食店のシェフを講師とし、店の食材を使った親子料理教室を定期開催する。店主との交流による固定客化を促し、長期ビジョンである「顔見知り」の関係を構築する効果が期待できる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「長期的には、顧客と店主、店員が顔見知りとなり親しく会話を交わすような状態になることが理想」
    • 設問 1 で誘致を提案した食品小売店
    • ターゲット層(子育てファミリー層)
  • 答案作成の根拠 代表理事の長期ビジョンである「顔見知りの関係構築」を実現するためには、店主と顧客が直接コミュニケーションを取る機会を創出することが不可欠である。設問 1 で誘致した専門店の定着支援と、この長期ビジョン達成を同時に狙えるイベントとして、体験型の「料理教室」が考えられる。ターゲットがファミリー層であることから、「親子」で参加できる形式にすることで、参加のハードルを下げ、家族ぐるみの来店を促せる。専門店の店主や既存飲食店のプロの料理人が講師となることで、店の専門性やこだわり、そして店主の人柄を顧客に直接伝えることができる。これにより、単なる売買関係を超えた信頼関係が生まれ、店舗へのロイヤルティ向上(固定客化)と、商店街が目指すコミュニティ形成に繋がる効果が期待できる。

  • 使用した経営学の知識

    • リレーションシップ・マーケティング: 顧客との長期的で良好な関係を築き、維持していくことで、長期的な収益確保を目指すマーケティング手法。「顔見知り」の関係構築は、この考え方に基づいている。
    • イベント・マーケティング: イベントを通じて顧客に特別な体験を提供し、ブランドイメージの向上や顧客ロイヤルティの育成を図る手法。ここでは、コミュニティ形成という目的も担っている。

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