Skip to content

令和 7 年度(2025 年度)事例 Ⅰ 解答解説

目次は画面右上の「On this page」をタップしてください。

令和 7 年度添削プロンプトリンク

事例 Ⅰ事例 Ⅱ事例 Ⅲ事例 Ⅳ

令和 7 年度解答解説リンク

事例 Ⅰ事例 Ⅱ事例 Ⅲ事例 Ⅳ

第 1 問(配点 20 点)

設問文

木製知育玩具の新規事業に進出した際の A 社の現状について、SWOT 分析のそれぞれの観点から、30 字以内で述べよ。


強み

回答例(29 字)

薄板加工技術等の既存ノウハウと産官学および職人との連携網。

解説

  • 問題文の該当箇所:
    • 「内装材の製造で培われた『薄板加工技術』や『美しい木目を活かすための仕上げ技術』」
    • 「同県内の林業者や製材所とのネットワーク」
    • 「同県や地元の大学との良好な関係」
    • 「地域の木工職人たちとのネットワーク」
  • 答案作成の根拠: 新規事業(木製知育玩具)を進出・推進する上で、A 社が内部資源として活用できたポジティブな要因を抽出する。与件文には、高品質な製品製造を可能にする ① 中核技術(特に薄板加工)、安定調達を可能にする ② 調達ネットワーク、製品開発や PR に貢献した ③ 県・大学との関係、デザイン性や手作業を実現する ④ 職人とのネットワーク、が明記されている。これらを「技術」と「連携(ネットワーク)」としてまとめた。

弱み

回答例(30 字)

新規事業に対する既存社員の理解不足と社長子息への過度な依存。

解説

  • 問題文の該当箇所:
    • 「X 事業を通じて消費者向けのビジネスに関心は持っていたものの、まだ実験的な段階」
    • 「既存事業に携わる社員たちは新規事業の必要性を十分には理解できなかった」
  • 答案作成の根拠: 新規事業進出時に、A 社が内部に抱えていたネガティブな要因を抽出する。主力事業は内装材(BtoB)であり、消費者向け(BtoC)事業は X 事業で実験的に展開していたに過ぎず、本格的な展開ノウハウは不足していたと考えられる。また、既存社員の新規事業への理解不足は、事業推進の障壁となる内部的な弱みである。

機会

回答例(29 字)

自然素材志向の高まりと保育・教育現場での木育ニーズの増加。

解説

  • 問題文の該当箇所:
    • 「『自然素材』や『国産材』への関心の高まり」
    • 「子どもが触れるものに対して、安心・安全な素材を求める傾向」
    • 「木材と触れ合う中で子どもたちの豊かな心を育む『木育』への...ニーズの増加」
  • 答案作成の根拠: A 社の新規事業にとって、追い風となる外部環境の変化を抽出する。与件文には、市場環境の変化として、特に子育て世代における ① 自然素材・国産材への関心(安心・安全志向)と、② 教育・子育て支援の場での「木育」ニーズ増加が明記されている。これらは木製知育玩具事業にとって直接的な市場機会となる。

脅威

回答例(29 字)

内装材市場の競争激化と景気や政策に伴う公共案件の不安定性。

解説

  • 問題文の該当箇所:
    • 「内装材市場における企業間の競争激化と公共案件の不安定性」
    • 「A 社が着目した知育玩具の市場は、既にさまざまな競合が存在していた」
  • 答案作成の根拠: A 社の事業全体にとって、マイナスとなる外部環境の要因を抽出する。① 既存の内装材事業の収益性を脅かす「競争激化」と「不安定性」は、A 社全体にとっての脅威である。加えて、② 新規参入する知育玩具市場にも「既存競合」が存在することは、新規事業の成功を阻む脅威となる。

第 2 問(配点 30 点)

設問文

A 社が木製知育玩具の新規事業を展開する際に、顧客との接点を作るために行った取り組みや工夫について、150 字以内で説明せよ。

回答例(145 字)

県主催イベントへの出展や工場併設の直営店、県のアンテナショップの活用に加え、大手ECサイトへの出店で販路を広げた。さらに、社長子息の知見を活かしたSNSでの情報発信や子育てイベントの企画、大学とのワークショップを通じた製品開発により、ターゲットである教育熱心な子育て家庭との接点を創出した。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「イベントで自社の製品に目を輝かせる子どもたちや、熱心に説明を聞く保護者の姿」
    • 「自社工場併設の直営店や県のアンテナショップのみならず、大手 EC サイトへの出店も果たした」
    • 「SNS を活用した情報発信や子育てイベントへの出展なども積極的に企画・実行」
    • 「学生たちが参加するワークショップ形式で、知育玩具の新たなアイデアや既存製品の改善点などが議論」
  • 答案作成の根拠 顧客との接点(タッチポイント)を「販売チャネルの拡大」と「双方向のコミュニケーション」の 2 軸で整理した。

    1. 販売の場の多様化: リアル(直営店・アンテナショップ・イベント)とネット(EC)を組み合わせ、地理的制約を超えてターゲットにリーチした点である。
    2. 関係性の深化: SNS による情報発信や大学連携のワークショップなど、単に「売る」だけでなく、顧客やステークホルダーを巻き込みながら製品を「創る・広める」プロセス自体を接点とした点を工夫として盛り込んだ。
  • 使用した経営学の知識

    • オムニチャネル戦略: 実店舗やオンラインなど複数のチャネルを連携させ、顧客接点を広げる手法である。
    • コト消費と共創マーケティング: 顧客参加型のイベントやワークショップを通じて、製品の機能的価値だけでなく体験価値を提供し、顧客ロイヤルティを高めるアプローチである。

第 3 問(配点 20 点)

設問文

A 社社長は、木製知育玩具の新規事業を成長させていくに当たって、全社的な組織改革を検討している。それに対して、採用すべき組織体制とその理由に関して 100 字以内で助言せよ。

回答例(100 字)

内装材事業と知育玩具事業を分離し、独立採算で運営する事業部制組織を採用すべきである。理由は、市場特性や求められるスキルが異なる両事業の専門性を高め、迅速な意思決定を促し、次世代リーダーを育成するため。

解説

  • 問題文の該当箇所:
    • 「内装材事業と知育玩具事業では、求められるスキルセットや思考様式も異なる」
    • 「内装材事業は...ベテラン社員...が支えている。一方、知育玩具事業は、市場のトレンド変化が早く、ビジネスのスピード感が求められる」
    • 「事業規模の拡大に伴い、彼(子息)一人の力には限界」
    • 「次世代のリーダー候補をどのように育成し...」
  • 答案作成の根拠: 既存の内装材事業(BtoB、安定志向、ベテラン中心)と、新規の知育玩具事業(BtoC、スピード重視、トレンド対応)は、事業特性が大きく異なる。現在の機能別組織的な体制では、両事業の運営効率が悪く、スキルセットの違いにも対応しにくい。そこで、製品・市場別に組織を分割する事業部制組織が適している。これにより、① 各事業の市場環境に合わせた迅速な意思決定、② 専門性の向上、③ 事業部長(子息など)への権限委譲による次世代リーダー育成、といった課題に対応できるため、これを理由として挙げた。
  • 他の組織形態が不適切である理由:
    • 機能別組織(現状維持)の不適切性: A 社の現状はこの形態に近いが、これを維持・強化する案は不適切である。なぜなら、① スキルセットや思考様式が全く異なる 2 事業(例:法人営業と SNS マーケティング)が同一部門に混在し、専門性が高まらない。② トレンド変化の早い知育玩具事業の「スピード感」ある意思決定が、既存事業中心の部門論理に阻害される(イノベーションのジレンマ)。③ 社長の課題である「次世代リーダー育成」(権限委譲と P/L 責任)が進まないためである。
    • マトリックス組織の不適切性: 機能(縦軸)と事業(横軸)で人材を共有するこの形態は、社員 30 名という限られた資源の有効活用に見えるが、不適切である。なぜなら、① 指揮命令系統が二重化(ワンマン・ツーボス)し、現場が混乱しやすい。② 機能部門長と事業リーダー間の調整コストが膨大となり、かえって意思決定の「スピード感」を著しく損なう危険性が高いためである。
    • プロジェクト組織の不適切性: 特定の目的のために一時的に編成されるため、新規事業の「立ち上げ」には有効だが、事業を「成長させていく」ための持続的な組織体制としては不適切である。
    • カンパニー型組織の不適切性: 事業部制をさらに進め、独立会社のように扱う形態だが、社員 30 名の規模で管理部門まで完全に分離・重複させることは、管理コストが過大となり「限られた経営資源」の配分として非効率である。
    • チーム型組織の不適切性: フラットで自律的な体制は新規事業の「スピード感」には合うが、安定志向の既存事業も含む「全社的な」組織改革として、特性の異なる 2 事業を単一のルールで運営することは困難であるため。
  • 使用した経営学の知識:
    • 組織構造論: 企業の戦略や環境に適した組織形態を選択する理論。
    • 機能別組織: 製造、営業、管理といった職能(機能)ごとに部門を編成する組織。A 社の現状はこれに近い。
    • 事業部制組織: 製品別、市場別、地域別などに事業部を分け、各事業部に大幅な権限を委譲し、独立採算制をとる組織形態。戦略の異なる複数の事業を抱える企業に適している。
    • 両利きの経営(Ambidexterity): 既存事業の「深化(Exploitation)」と新規事業の「探索(Exploration)」という相反する活動を両立させる経営。本事例のように特性が異なる場合は、組織的に分離(事業部制など)することが有効とされる。

第 4 問(配点 30 点)

設問文

A 社は、木製知育玩具の新規事業を拡大させるに当たり、自社の創業以来の企業理念をどのようなものへと再定義したり、それを関係者に浸透させたりすればよいのか。150 字以内で助言せよ。

回答例(146 字)

理念を「木の恵みと匠の技で、子供の未来と地域の豊かさを育む」と再定義し、教育や地域貢献への姿勢を明確化する。浸透には、社長と子息が社員との対話集会を重ね、新規事業が既存技術の伝承と地域活性化に直結する意義を共有する。また、顧客の喜びを直接共有する場を設け、全社員の意識改革と帰属意識を高める。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 既存理念:「自然から頂いた木を、生活する人々が豊かになるよう社会にお返しする」
    • 課題:「既存事業を支えてきた社員たちは新規事業の必要性を十分には理解できなかった」
    • 背景:「木育」「地域資源の活用」「技術職には A 社での勤務経験の長い社員が多い」
  • 答案作成の根拠 理念の「再定義」と「浸透策」について、ベテラン社員の納得感を重視して構成した。

    1. 再定義: 既存理念の「社会貢献」を具体化し、「匠の技(ベテランの誇り)」と「子供の未来(新規事業の価値)」を融合させることで、両事業の統合を図る内容とした。
    2. 浸透策: トップダウンの伝達にとどまらず、対話集会による「意味づけ(センスメイキング)」と、顧客の喜び(子供の笑顔など)を直接フィードバックする場を設けることで、社員の感情面・実体験に訴えかけ、内発的な動機づけを促す助言とした。
  • 使用した経営学の知識

    • コーポレート・アイデンティティ (CI) の再構築: 環境変化に合わせて理念体系を見直し、社内外に統一したイメージを発信する戦略である。
    • インターナル・ブランディング: 理念を社員に浸透させ、行動変容を促す活動である。特に「顧客からのフィードバック」は、職務重要性を認識させ、モチベーション向上(ハックマン&オルダムの職務特性モデル)に有効である。

© 2024 AIで中小企業診断士二次試験 | All Rights Reserved