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令和 6 年度(2024 年度)事例 Ⅰ

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# 令和 6 年度(2024 年度)事例 Ⅰ

## 与件文

A 社は、1975 年創業の物流サービス企業で、従業員数は 120 名、売上高は 30 億円である。創業者はトラック 1 台から事業を立ち上げた。地元での地道な経営が功を奏し、徐々に売上高を伸ばし、トラック台数を増やすとともに営業所を開設した。しかし、A 社が創業当時、営業区域が規制により限られており、1 顧客にトラック 1 台(貸切り)で対応する必要があった。他の荷主との混載ができなかったため、積載効率が悪く収益性が低かった。また、当時の主要顧客は中小零細の事業者であり、長期的な契約ではなくスポット取引が中心であり、取扱品の種類も顧客によってさまざまであった。

創業後 10 年が経過する頃、取扱量が急速に増加したことに伴い、A 社では、それに対応するため、2 カ所目の営業所を設置した。さらに、自社保有のトラックでは取扱量に対応できなかったため、協力企業に輸送業務を委託することにした。A 社では、自社でトラック運転手を雇用する運送部を設置するとともに、地域の小規模トラック運送企業をメンバーとする協力会を組織して対応した。創業経営者は、この協力会の運営を、この頃 A 社に入社した非一族の経営幹部に任せることにした。

1990 年に参入規制が緩和されたことにより、新規参入事業者が急増し、価格競争が激化した。A 社では、料金の値下げ要請や新たなライバルの出現の影響を受け、取引量が減少した。そのため A 社では、地元顧客のニーズにきめ細かく対応することで、価格競争を避け地元密着型の質の高い輸送サービスを志向した。A 社は協力会事業者の参加条件を定め、条件に適合するメンバーのみに輸送業務を委託する仕組みを構築した。A 社の経営幹部は、地元特有の荷主のニーズを収集するとともに、その情報を協力会の事業者間で共有することで、地元の生産者や食品卸などの多様な荷主からの信頼を獲得した。A 社は、地域物流のコーディネーターとしての役割を果たし、協力会事業者との連携関係を築いた。

2000 年に、A 社は倉庫管理事業に参入した。A 社の近隣地域に中小製造業が立地し、倉庫保管ニーズの高まりを見せていた。この頃、競合の物流事業者も相次いで物流拠点を建設したが、荷主からの仕分け作業を行う輸送拠点に過ぎず保管機能を持っていなかった。それに対して、A 社では自社で倉庫を保有し、流通加工や適切な温度・湿度で管理するサービスを提供することで、地元顧客のニーズに対応することができた。一方で組織に関しては、旧態依然の管理体質が温存されていた。

同じ頃、県内で食品スーパーを展開する X 社から引き合いがあり、A 社の倉庫を拠点にして X 社の各店舗への輸送業務を長期契約で請け負うことになった。A 社にとって、企業の物流機能の一部を担う初めての経験となった。A 社は、X 社との取引を通じて、入荷・ピッキング・梱包・仕分けや温度管理といった一連の保管業務や流通加工の能力を高めた。一方、物流取扱量の増加に伴い、紙の伝票管理など受注管理面において非効率が生じていた。元々、創業経営者は地元密着型の営業方針であったことから、A 社に入社した従業員たちも地元志向が強かった。また、この頃の A 社は既存顧客との関係が強い反面、顧客の新規開拓力が弱かった。

他方、2010 年頃、県外との輸送の引き合いが増加してきた。そのような中、大手物流企業で物流企画部門や営業部門を経験してきた創業経営者の長女から A 社に入社したい意向が示された。長女は、首都圏での物流需要に可能性を見出していた。創業経営者は、長女をプロジェクトリーダーに任命し、若手社員 1 名、首都圏での新規採用社員 1 名とともにプロジェクトチームを組織させて新市場開拓を担わせた。

プロジェクトチームは、当初スポット取引で首都圏の荷主企業より物流企画業務を少しずつ受託していった。2011 年に、プロジェクトチームは解散し首都圏事業部として再出発することになった(本社の運送部と倉庫部は県内事業部として発足)。首都圏事業部は、企業の物流業務の一部を受託し、トラック車両や倉庫を保有せず、首都圏の運送事業者や倉庫事業者を外部委託先としてコーディネートしてサービスを提供する業務を始めた。その結果、長女と同窓であった外食チェーン Y 社の経営者から案件を受託した。Y 社との取引を通じて、首都圏事業部は、受注処理の効率化や各店舗の在庫管理のノウハウを蓄積することができた。他方、県内事業部との業務の連携は、ほとんどなされていない状況であった。

2020 年に、長女が 2 代目経営者に就任した。しかし、長女が事業部長を務めた首都圏事業部と異なり、県内事業部は年功序列的で古い慣習が残る組織体質であった。そのため、長女は、古くからいる経営幹部に県内事業部のマネジメントを一任していた。

この時期、受注管理や在庫管理の高度化が要請されるようになった。従来、首都圏事業部では、情報システム構築や保守は外注していたが、情報システム自体が汎用品であり、コストが高い割に首都圏事業部の物流ノウハウに適合しないこともあった。

2 代目は、大手情報システム会社で物流システム構築に従事していた長男を A 社に呼び戻した。首都圏事業部にて新たに情報システム部を設立し、入社早々の長男を部長に任命するなど異例の抜擢を行った。さらに、長男の要望に基づいてプロパーの専門職を数名雇用した。

以下の図は、2020 年当時の A 社の組織図を示している。

図 2020 年当時の A 社組織図

```mermaid
graph TD
    A[2020年当時の A 社組織図]

    subgraph "A 社"
        subgraph "県内事業部(約 100 名)"
            運送部[運送部]
            倉庫部[倉庫部]
        end
        subgraph "首都圏事業部(約 20 名)"
            物流企画部[物流企画部]
            情報システム部[情報システム部]
        end
    end
```

首都圏事業部は、比較的小さな組織であったため、2 代目と長男との間でさまざまな意思決定がなされた。長男は、やや独断的な面もあったが、持ち前の物流システム提案力を活かし、首都圏企業向けに営業を展開した。近年、首都圏で展開する大手スーパー Z 社から県内進出に当たっての案件が A 社に持ち込まれた。ただし、取引が始まると、各店舗の適正在庫管理や機動的な商品補充が A 社県内事業部で対応できていないなどの問題が顕在化し、Z 社からの物流業務の受託は部分的なものにとどまった。

2024 年、A 社では創業経営者の助言に基づいて配置転換を行った。経営幹部が専門取締役として 2 代目経営者を支える体制とし、2 代目の長男を経営幹部の直下の運送部と倉庫部の統括マネージャーに配置する体制をとった。

一方で、A 社を取り巻く課題もいくつか生じてきている。第 1 に、大手物流企業を中心とする 3PL(サードパーティーロジスティックス)事業者との競争が激化してきたことである。2 つ目には、首都圏事業部において「物流の 2024 年問題」を背景に外部委託先の運送事業者の人手不足の問題が深刻化してきたことである。3 つ目には、A 社の専門人材が多様化したが、創業時から人事処遇制度はほとんど変更がなされないままであり、処遇面で不満が出ていることである。また、今後、物流の多様化や複雑化への対応が事業者にとって急務になっている。

2 代目経営者は、今後、A 社が 3PL 事業者として事業展開を行う上で、中小企業診断士に相談を求めている。

## 設問文

### 第 1 問(配点 20 点)

A 社の 2000 年当時における ⒜ 強みと ⒝ 弱みについて、それぞれ 30 字以内で答えよ。

#### ⒜ 強み

#### ⒝ 弱み

### 第 2 問(配点 20 点)

なぜ、A 社は、首都圏の市場を開拓するためにプロジェクトチームを組織したのか。また、長女(後の 2 代目)をプロジェクトリーダーに任命した狙いは何か。100 字以内で答えよ。

### 第 3 問(配点 20 点)

なぜ、Z 社は A 社に案件を持ちかけたのか。100 字以内で答えよ。

### 第 4 問(配点 40 点)

今後、A 社が 3PL 事業者となるための事業展開について、以下の設問に答えよ。

#### (設問 1)

2024 年の創業経営者の助言による配置転換の狙いは何か。80 字以内で答えよ。

#### (設問 2)

A 社が Z 社との取引関係を強化していくために必要な施策を、100 字以内で助言せよ。

## 出題の趣旨

### 第 1 問(配点 20 点)

2000 年当時における A 社の内部環境を分析する能力を問う問題である。

### 第 2 問(配点 20 点)

A 社が地域を離れ新たな市場を開拓する際に、既存組織から独立した組織を形成する意義と、一族を任命する理由を問う問題である。

### 第 3 問(配点 20 点)

Z 社が県内に事業展開をするにあたって、A 社がどのような点において貢献できるのかを問う問題である。

### 第 4 問(配点 40 点)

#### (設問 1)

今後の事業展開に伴う配置転換における A 社の目的を問う問題である。

#### (設問 2)

Z 社との取引関係を強化するために、A 社には県内事業部と首都圏事業部の連携や情報システムの構築などが求められる。本問はその対応策について助言する能力を問う問題である。

## あなたの回答

### 第 1 問(配点 20 点)

#### ⒜ 強み

#### ⒝ 弱み

### 第 2 問(配点 20 点)

### 第 3 問(配点 20 点)

### 第 4 問(配点 40 点)

#### (設問 1)

#### (設問 2)

## AI への指示

以下の情報に基づいて、フィードバックをお願いします。

この試験問題は成績上位 10%しか合格できないのでかなり厳しく指摘して欲しいです。

1. **模範解答**  
   各設問に対して与件文、設問文、出題の趣旨、経営学の知識に基づき模範解答してください。

2. **フィードバック**  
   回答が与件文、設問文、出題の趣旨、経営学の知識に沿っているかどうか指摘してください。
   与件文の単語や経営学の知識を列挙しただけで因果関係が成立していない場合や抽象的な回答があった場合は指摘してください。

3. **改善点**  
   どのように回答を改善すればよいか、具体的な提案をしてください。

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