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2025 年度 事例 Ⅳ D 社(仏壇・仏具製造販売) 口述試験想定問答集

1. 財務分析・経営分析に関する質問

Q1. D 社の財務諸表から読み取れる、同業他社と比較した際の「最大の強み」と「最大の弱み」は何だと分析しましたか?

強みは 「財務の安全性」 です。自己資本比率が高く(または負債比率が低く)、借入金への依存度が低いため、不況や環境変化に対する抵抗力が高いといえます。 弱みは 「収益性の低さ」 です。同業他社に比べて売上高営業利益率が著しく低く、高コスト体質であることが伺えます。これは職人の手作業にこだわることによる人件費や製造コストの高さが要因と考えられます。

Q2. D 社の収益性が低い要因として、原価構成や費用構造の観点から具体的にどのような点が挙げられますか?

売上原価率の高さに加え、販売費及び一般管理費の負担が重い点が挙げられます。特に、伝統的な製造工程における職人の人件費や、直営店維持にかかる固定費が収益を圧迫しています。また、原材料費の高騰に対して、製品価格への転嫁が十分に進んでいない可能性も考えられます。

2. CVP 分析・利益計画に関する質問

Q3. D 社は伝統的な製品 X から、現代風の製品 Y へ販売の比重を移そうとしています。利益管理の観点から、この戦略にはどのようなメリットがありますか?

「限界利益率の改善」 が期待できます。 製品 Y は製品 X に比べて 1 基あたりの変動費が低く(または限界利益率が高く)設定されているため、販売数量を伸ばすことで、会社全体の利益創出力を高めることが可能です。また、インテリア型は若年層や海外客など新規市場にリーチできるため、売上高の拡大も見込めます。

Q4. 製品 Y のモデルチェンジに伴い、新たに専属デザイナー契約(固定費の増加)を行いました。CVP(損益分岐点)の観点から、どのようなリスク管理が必要ですか?

固定費の増加は損益分岐点売上高を引き上げるため、 「販売数量の確保」 がより重要になります。 デザイン料に見合うだけの増収効果が得られなければ赤字リスクが高まります。したがって、デザイナーの知名度を活用したプロモーションや、ターゲット層への確実な訴求により、計画通りの数量を売り切る販売努力が不可欠です。

Q5. 「健康経営」のため製造時間に制約(700 時間)を設けました。制約がある中で利益を最大化するためには、どのような指針で製造・販売を行うべきですか?

「制約条件(単位時間)あたりの限界利益」が高い製品を優先して製造・販売 すべきです。 単に 1 個あたりの利益が高い製品ではなく、1 時間あたりでどれだけ利益を生み出せるかを比較し、効率の良い製品 Y に経営資源を集中させることが、限られた時間内での利益最大化につながります。ただし、技術継承の観点から製品 X の最低数量は守る必要があります。

3. 設備投資・意思決定に関する質問

Q6. 海外向け新製品の投資案において、現在賃貸している倉庫を自社利用することにしました。この「家賃収入がなくなる」ことは、投資の意思決定計算においてどのように扱うべきですか?

「機会原価(Opportunity Cost)」 として考慮すべきです。 新事業を行わなければ得られたはずの家賃収入(キャッシュインフロー)が失われることになるため、これを新事業のマイナスのキャッシュフロー(または費用の増加)として計算に組み込み、投資の正味現在価値(NPV)を算出する必要があります。

Q7. 投資計算の結果がプラス(投資すべき)であったとしても、海外展開には財務数値に表れないリスクがあります。どのようなリスクを考慮すべきですか?

主に 「為替変動リスク」「カントリーリスク(法的・政治的リスク)」 です。 特に円高に振れた場合、円換算での売上高が目減りし、回収計画が狂う可能性があります。また、現地の商習慣の違いによる債権回収の遅延や、輸送コストの予期せぬ上昇などもリスクとして考慮し、撤退基準などを予め定めておく必要があります。

4. 資金調達・その他に関する質問

Q8. 海外展開のための設備資金(6,000 万円)について、D 社はどのような方法で調達するのが最適だと助言しましたか?

「自己資金(内部留保)」 の活用を推奨します。 D 社は現預金を豊富に持っており、流動比率も高いため、借入による金利負担を負うよりも手元資金を活用する方が経済合理的です。 (※もし「借入」と答える場合は、「低金利環境を活かし、手元流動性を温存するために長期借入を行うべきです」と答えても正解です。論理が通っていれば OK です)

Q9. 職人の高齢化が進む中、機械化を進めることに対して、財務面・非財務面の両方からどのような影響があると考えますか?

財務面では、人件費(変動費的性質)が減る一方で、減価償却費(固定費)が増加し、 損益分岐点が上昇する(ハイリスク・ハイリターン化する) 影響があります。 非財務面では、生産効率や品質の均一化が図れる反面、D 社の強みである 「伝統的工芸技術」の希薄化 や、職人のモチベーション低下のリスクがあります。手仕事の付加価値と機械の効率性のバランスが重要です。

Q10. 昨今の原材料高騰に対して、中小企業診断士として D 社にどのような財務的対策を助言しますか?

単なるコスト削減には限界があるため、 「高付加価値化による価格転嫁」 が必要です。 海外向け製品やデザイナーコラボ製品のように、価格競争に陥らない独自性のある製品を開発し、原材料高騰分を適切に販売価格に上乗せできるブランド力を構築することが、収益構造の安定化につながると助言します。


事例 Ⅳ 口述試験のアドバイス

口述試験での事例 Ⅳ は、計算問題はありません。 「ファイナンス思考の理解度」 が試されます。

  • 「機会原価」(倉庫の家賃の話など)
  • 「サンクコスト(埋没原価)」(過去の投資額は無視するなど)
  • 「制約条件の理論」(ボトルネックがある時の優先順位)
  • 「貢献利益・限界利益」(固定費回収の考え方)
  • 「安全性 vs 収益性」

これらの用語を適切に使いながら、「なぜそのような判断をしたのか」を論理的に説明できれば大丈夫です。

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