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Gemini 2.5 Pro による回答と解説( 平成 22 年度(2010 年度)事例 Ⅲ)

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第 1 問(配点 20 点)

設問文

自動車業界における C 社の強みを(a)欄に、弱みを(b)欄に、2 つずつ、それぞれ 20 字以内で述べよ。

回答例

  • (a)(24 字):金属・樹脂の複合加工技術と金型内製化による技術力
  • (b)(24 字):営業・開発の専門部署がなく、企画提案力が弱いこと

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 強み:
      • 「金属プレス加工および樹脂成形加工の両部門を有していること、それらの金型が内製化されていること、そして生産設備の改良・改善技術を有していることなどが評価された。」
      • 「ISO 9001 の要求事項に従った品質マネジメントシステムを構築して品質保証の標準化を、そして ISO 14001 の要求事項に従った環境マネジメントシステムを構築して環境管理の標準化をそれぞれ達成している。」
    • 弱み:
      • 「製品開発や営業を専任する部門はなく、新規営業開拓は社長自ら担当し、受注後の開発・設計、日常の受注などの業務は、金属プレス部および樹脂成形部がそれぞれ担当している。」
      • 「C 社の売り上げの構成は、X 社約 40%、Y 社約 30%」
      • 「受注量の減少傾向が続いている。また、ハイブリッド車、電気自動車の普及によって、金属プレス部品である駆動制御系部品の需要が減少する恐れもある。」
  • 答案作成の根拠

    • (a) 強み: C 社が自動車部品業界へ転換する際に取引先 X 社から評価された点を直接的な強みとして抽出する。具体的には、① 金属プレスと樹脂成形の両方を手掛ける「複合加工技術」、② 品質とコスト競争力の源泉である「金型の内製化」と「設備改善技術」である。これらをまとめて「金属・樹脂の複合加工技術と金型内製化による技術力」とする。また、ISO 認証取得による「標準化された品質・環境管理体制」も強みである。
    • (b) 弱み: C 社は組織的に「製品開発や営業を専任する部門」を持たない。これは、顧客の潜在ニーズを発掘したり、技術提案を積極的に行ったりする機能が弱いことを意味する。これを「営業・開発の専門部署がなく、企画提案力が弱いこと」と要約する。また、売上が X 社と Y 社の 2 社に 70%も依存している「特定取引先への高い売上依存」も経営上の弱みである。
  • 使用した経営学の知識

    • SWOT 分析: 企業の内部環境である強み (Strengths) と弱み (Weaknesses)、外部環境である機会 (Opportunities) と脅威 (Threats) を分析するフレームワーク。本問は内部環境分析に該当する。C 社の持つ技術力や組織体制を評価する。
    • コア・コンピタンス: 競合他社に真似されにくく、複数の市場で活用でき、顧客価値に貢献する企業独自の強み。C 社にとって、金属と樹脂の複合加工技術や金型内製化技術はコア・コンピタンスに繋がりうる。

第 2 問(配点 40 点)

設問文

Y 社から迫られている生産設備および工程の移管計画は、現在具体的な協議が進められている。

(設問 1)

この計画で最も大きな問題は、Y 社から提示されている厳しい契約単価である。この計画でコストダウンを行い、利益を確保するために必要な具体的方法を 120 字以内で述べよ。

回答例(101 字)

Y 社と連携して製品設計変更を含む VE 提案を完成車メーカーに行い材料費を削減する。併せて、強みの金型内製化技術で材料歩留まりを改善し、設備改善技術で多工程の組立作業の自動化・省人化を図り加工工数を削減する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「Y 社から提示されている厳しい契約単価である。」
    • 「以前からこの部品加工時の材料歩留まりが悪いことも指摘されており、現状の生産方法を続けるだけでは C 社が十分な利益を確保するのは難しい状況にある。」
    • 「製品設計変更なども含む VE 提案を完成車メーカーに対して行うことも検討している。」
    • 「加工工数が多く、しかも高度な技術を要する組立工程である。」
    • (C 社の強みとして)「プレス金型の内製化」「設備の改良・改善によるコストダウン」
  • 答案作成の根拠 コストダウンと利益確保という課題に対し、与件文中のヒントから具体的な方法を導き出す。

    1. VE 提案: 与件文に「製品設計変更なども含む VE 提案を行うことも検討している」と明記されている。これを実行し、根本的な材料費削減を目指す。
    2. 材料歩留まり改善: 以前から指摘されている「材料歩留まりの悪さ」を、C 社の強みである「金型内製化技術」を活かして改善する。
    3. 加工工数削減: 「加工工数が多く」「高度な技術を要する」組立工程に対し、これも C 社の強みである「設備の改良・改善技術」を用いて自動化・省人化を推進し、労務費を削減する。 これら 3 つの施策を組み合わせることで、厳しい単価条件の中でも利益を確保できる体制を構築する。
  • 使用した経営学の知識

    • VE (Value Engineering): 製品やサービスの「価値」を、その「機能」と「コスト」の関係で捉え、最低のライフサイクルコストで必要な機能を確実に達成するための組織的な取り組み。本件では、製品設計にまで踏み込むことで価値を下げずにコストを抜本的に削減するアプローチとして有効である。
    • IE (Industrial Engineering): 生産工程における人、モノ、設備、情報の最適な組み合わせを設計・改善する科学的アプローチ。動作研究や工程分析を通じて無駄を排除し、組立工程の効率化(加工工数削減)に貢献する。

第 2 問(設問 2)

この計画の実施により C 社の生産現場に混乱が予想される。予想される混乱の内容を(a)欄に 60 字以内で、またその対策を(b)欄に 100 字以内で、それぞれ述べよ。

回答例

  • (a)(58 字):新規の多工程で高度な組立作業により、既存の部品加工工程との連携に乱れが生じ、生産計画の遅延や仕掛品の増大を招く混乱。
  • (b)(97 字):Y 社からの技術指導を円滑に進めるため、生産技術部を中心に専門チームを編成する。計画的な OJT で多能工を育成し、生産計画の一元管理と組立工程専門の品質保証体制を構築し、全社的な協力体制を整備する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「C 社で樹脂成形加工および金属プレス加工を行い別々に納品し、Y 社で組み立てをしていた」
    • 「C 社内で組立工程までも行えるようにする」
    • 「『金属プレス部品の前処理』⇒『樹脂成形部品への装着』⇒『接着』⇒『検査』の 4 工程」
    • 「加工工数が多く、しかも高度な技術を要する組立工程」
    • 「Y 社から生産技術者を派遣し、組立工程の技術指導を行う」
    • (C 社の組織)「金属プレス部」「樹脂成形部」「生産技術部」「品質保証部」
  • 答案作成の根拠

    • (a) 予想される混乱: これまで部品加工のみであった C 社が、初めて「多工程」で「高度な技術」を要する組立工程を導入することが混乱の根本原因である。具体的には、① 従来の部品加工工程と新規の組立工程との生産同期が取れず、生産計画が乱れる、② 工程間の仕掛品が増加する、③ 新しい品質基準への対応が遅れる、といった事態が想定される。これらを「既存工程との連携の乱れ」と「それに伴う生産計画の遅延や仕掛品の増大」としてまとめる。
    • (b) 対策: 混乱への対策は、技術面と管理面の両方からアプローチする。
      • 技術・人的対応: Y 社の技術指導を効果的に吸収するため、受け皿となる「専門チーム」を編成する。また、多工程に対応できる「多能工」を計画的に育成する。
      • 管理的対応: 部門間の連携を強化し、サプライチェーン全体を最適化するために「生産計画の一元管理」を行う。また、組立品という新しい製品形態に対応するため「組立工程専門の品質保証体制」を構築する。これらの施策を推進する上で、部門横断的な協力体制の整備が不可欠である。
  • 使用した経営学の知識

    • 生産管理: 生産活動を計画 (Plan) 、実施 (Do) 、統制 (Check/See) するための管理活動全般。新規工程導入時には、特に生産計画、工程管理、品質管理、人員配置といった各機能の見直しと再構築が重要となる。
    • 多能工化: 一人の作業者が複数の異なる工程や作業を遂行できる能力を持つこと。生産ラインの柔軟性を高め、欠員補充や生産量の変動に強く、少数精鋭での生産を可能にする。

第 3 問(配点 20 点)

設問文

Y 社からの生産設備および工程の移管計画には、① 生産リードタイムの短縮、② コストダウンの 2 つの目的がある。これらの目的を達成するために Y 社と共有化すべき生産管理に関する情報は何か。目的 ①、② について具体的情報データ項目をそれぞれ 20 字以内であげよ。

回答例

  • 目的 ①(17 字):生産計画データと各工程の進捗データ
  • 目的 ②(18 字):材料歩留まり率と工程別の不良率データ

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 目的 ①:「生産リードタイムを短縮すること」
    • 目的 ②:「コストダウンを図ること」
    • 「両社間で生産管理に関する情報を共有する」
    • 「材料歩留まりが悪いことも指摘されており」
  • 答案作成の根拠

    • 目的 ①(生産リードタイム短縮): リードタイムは、主に加工時間、検査時間、運搬時間、待ち時間で構成される。特にサプライチェーン全体で短縮を図るには、後工程(Y 社)の必要数・時期に合わせて前工程(C 社)が生産する、同期生産が理想である。そのためには、お互いの「生産計画」と、計画通りに進んでいるかを示す「進捗データ」の共有が不可欠となる。
    • 目的 ②(コストダウン): コストダウンのターゲットを明確にするためには、コストの内訳と発生源を特定する必要がある。与件文で「材料歩留まりが悪い」と指摘されていることから、「材料歩留まり率」は重要な共有情報である。また、組立工程の各段階や部品加工での「不良率データ」を共有することで、品質ロスによるコスト増大の原因を両社で追究し、改善策を講じることが可能になる。
  • 使用した経営学の知識

    • サプライチェーン・マネジメント (SCM): 原材料の調達から製品が顧客に届くまでの一連のプロセスを統合的に管理し、最適化する経営手法。情報共有は SCM の根幹であり、リードタイム短縮やコスト削減(特に在庫削減)に直結する。
    • TQC (Total Quality Control) / TQM (Total Quality Management): 全社的に品質管理活動に取り組むこと。顧客(後工程も含む)と品質情報を共有し、協力して品質改善を進めることは TQC/TQM の基本的な考え方である。

第 4 問(配点 20 点)

設問文

X 社からの要請による中国進出計画が進展している。この計画に関して C 社の技術を生かした独自の経営の方向性と対応策について、中小企業診断士としてどのようなアドバイスをするか、140 字以内で述べよ。

回答例(104 字)

X 社への部品供給を基盤としつつ、強みの金型技術を活かし、中国の現地企業へ金型を外販し顧客を多角化する。将来的には現地ニーズを捉え、プレス・樹脂・組立の一貫生産体制を構築し、高付加価値なユニット製品を供給する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「X 社とともに中国進出をしようというものである。」
    • 「中国国内では得にくい金型技術が高く評価され」
    • 「C 社が金属プレス加工工場と金型工場を建設し」
    • (C 社の弱み)X 社、Y 社への高い売上依存
    • (C 社の強み)金属プレス加工、樹脂成形加工、金型内製化
  • 答案作成の根拠 このアドバイスは、C 社が単なる X 社の海外進出における下請けに留まらず、この機会を活かして独自の成長戦略を描くべき、という視点に基づいている。

    1. 方向性(独自の経営): X 社との関係を維持しつつも、特定顧客への依存リスクを低減し、自立的な経営基盤を築く方向性を示す。そのためのキーワードは「顧客の多角化」と「高付加価値化」である。
    2. 対応策(短期・中期): 中国進出の初期段階では、X 社への供給を安定させることが最優先である。しかし同時に、中国で高く評価されている「金型技術」を活かし、X 社以外の現地企業(日系・地場)へ金型を販売する事業(外販)を開始する。これにより、新たな収益源と顧客を開拓する。
    3. 対応策(長期): 金型外販で得た顧客ネットワークや市場情報を元に、C 社の強みである金属プレス・樹脂成形の複合加工技術を活かした現地ニーズ対応型の製品開発を目指す。Y 社との協業で得る組立ノウハウも活用し、部品単体ではなく「ユニット製品」としての一貫生産・供給体制を構築することで、高付加価値化を実現し、下請けからの脱却を図る。
  • 使用した経営学の知識

    • 成長戦略(アンゾフの成長マトリクス): 「市場浸透」「新製品開発」「新市場開拓」「多角化」の 4 象限で企業の成長の方向性を分析するフレームワーク。本アドバイスは、「新市場(中国)開拓」を足掛かりに、既存技術(金型)を新規顧客に展開し、将来的には「新製品(ユニット製品)開発」へと繋げる複合的な成長戦略を提案している。
    • 下請け企業の自立化戦略: 親企業への依存度を下げ、独自の技術や製品を持つことで経営の安定化と成長を目指す戦略。そのためには、① 技術力の深化・高度化、② 販路の多角化、③ 自社製品開発が重要な要素となる。

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