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平成 19 年度(2007 年度)事例 Ⅱ 回答と解説

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第 1 問(配点 20 点)

設問文

B 社は近隣への大手ホームセンター進出に対抗するための戦略を模索している。 それについて、以下の設問に答えよ.

設問 1

大手ホームセンターに対抗するためには、B 社の持つ経営資源の中で、どのような強みを生かせばよいか。30 字以内で 2 つ答えよ.

回答例

  • プロ需要に対応できる専門性の高い品揃え。(20 字)
  • 専門知識が豊富で提案力・指導力の高い従業員。(22 字)

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「大工、工務店、配管工事業者などの業務(プロ)用需要にも対応できる専門性重視の品揃え」
    • 「社員を技術研修に参加させている。各種技能資格取得者に対しては、報奨制度を設け」
    • 「園芸教室」「木工教室」で「正社員」が指導
    • 「建築士やインテリアコーディネーターの資格を持つ社員が、...プランを提案するサービス」
  • 答案作成の根拠 大手ホームセンターがチェーンオペレーションによる規模の経済を武器に、日用品なども含む幅広い品揃えで攻勢をかけてくるのに対し、B 社が対抗するためには、大手にはない独自の強みを活かす必要があります。 与件文から B 社の強みとして、以下の 2 点が明確に読み取れます。

    1. 商品(モノ)の強み: 創業以来のプロ顧客との取引に裏打ちされた、専門性の高い品揃え。これは、単に商品を並べるだけでなく、プロの厳しい要求に応えられる品質と専門知識が伴っていることを意味します。
    2. 人材(ヒト)の強み: 専門知識の習得を奨励する制度と、教室やプラン提案で実践経験を積んだ、提案力・指導力の高い従業員の存在。これは、単なる販売員ではなく、顧客の課題を解決するコンサルタントとしての役割を果たせることを示します。 これら 2 点は、大手が模倣しにくい、B 社ならではの経営資源であり、競争優位の源泉となります。
  • 使用した経営学の知識

    • SWOT 分析: 自社の内部環境である「強み (Strengths)」を分析し、外部環境である「脅威 (Threats)」(大手ホームセンターの進出)に対抗するための戦略の基盤とします。
    • 競争戦略(差別化戦略): 競合他社(大手)との直接的な価格競争などを避け、自社の独自性を打ち出すことで競争優位を築く戦略です。ここでは「商品の専門性」と「人材の専門性」が差別化の軸となります。

設問 2

大手ホームセンターに対抗するためには、どのような品揃え戦略を採用すべきか。80 字以内で述べよ.

回答例(78 字)

大手と競合する日用品等を縮小し、プロ向け建材や専門工具、特定分野の DIY 関連商品に特化する。これにより、価格競争を避け、専門性を求める顧客層を固定客化する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「大手ホームセンターは日常的な家庭生活に不可欠な日用品・雑貨に加え、レジャー用品、ペット関連商品までも取扱商品として取り込む」
    • 「B 社は...プロ用需要にも対応できる専門性重視の品揃え」
  • 答案作成の根拠 設問 1 で特定した「専門性」という強みを、具体的な品揃え戦略に落とし込みます。大手ホームセンターは、豊富な資金力とバイイングパワーを活かして日用品などを安価に提供する「価格競争」と、幅広い商品分野を網羅する「フルライン戦略」で市場シェアを狙ってきます。B 社が同じ土俵で戦うのは得策ではありません。 したがって、B 社は逆の戦略、すなわち「集中戦略」または「ニッチ戦略」をとるべきです。具体的には、

    1. 絞り込み: 大手が扱うような、価格競争に陥りやすい日用品や一般雑貨の取り扱いを縮小・中止する。
    2. 特化・深掘り: 自社の強みが活かせる「プロ向け商品」や、一般消費者向けでも専門知識が必要となるような「高度な DIY 関連商品」に経営資源を集中させ、品揃えの「幅」ではなく「深さ」で勝負します。 これにより、大手との直接競争を回避し、「専門的な商品やアドバイスが欲しい」という特定の顧客層からの強い支持を得て、安定した収益基盤を築くことを目指します。
  • 使用した経営学の知識

    • 競争戦略(集中戦略): 特定の顧客セグメント、製品ライン、または地理的市場に経営資源を集中させることで、そのニッチ市場において競争優位を確立する戦略です。ここでは「専門性を求める顧客層」と「専門性の高い商品」に集中します。
    • 製品・市場マトリクス: 既存市場(X 市)において、既存製品(プロ向け商品)を深掘りし、市場浸透をさらに強化する戦略と位置づけられます。

第 2 問(配点 30 点)

設問文

B 社が店舗数と店舗面積を増やさずに、売り上げを拡大するには、どのような方法が B 社に適していると考えられるか。100 字以内で 2 つ答えよ.

回答例

  • 1. 建築士等の資格を持つ社員による施主へのプラン提案サービスを強化・拡充する。住宅設備や建材等の高単価商品を販売し、提携業者による施工までを一括で請け負い客単価を向上させる。(85 字)
  • 2. 長年の取引があるプロ顧客やリフォームを希望する一般顧客に対し、訪問営業や出張相談サービスを展開する。店舗外での修理や工事の受注機会を創出し、新たな売上の柱を構築する。(83 字)

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「店舗数と店舗面積を増やさずに、売り上げを拡大する」という制約条件
    • 「建築士やインテリアコーディネーターの資格を持つ社員が...プランを提案するサービス」
    • 「各種リフォーム工事、造園工事、外溝工事、各種修理などの見積り、施工を請け負っている」
    • 「これら工事の施工業者も、顧客として長年付き合いのある業者を活用している」
  • 答案作成の根拠 「店舗数・面積を増やさない」という制約は、店舗でのモノ売り(小売)だけに依存するのではなく、店舗を拠点とした「サービス」や「ソリューション」の提供によって売上を拡大する必要があることを示唆しています。B 社の強みである「専門知識を持つ人材」と「プロ顧客とのネットワーク」を最大限に活用できる方法を考えます。

    1. 高付加価値サービスの強化(客単価向上策): 与件文には、建築士やインテリアコーディネーターによるプラン提案サービスが、施主から高い支持を得ているとあります。これは、単なる商品販売ではなく、顧客の家づくりというプロジェクト全体に関わる「ソリューション提供」です。このサービスを正式な事業の柱として強化し、高単価なシステムキッチンやユニットバス、床材などの販売から、信頼できる地元のプロ業者による施工までを一括で請け負うことで、一顧客あたりの売上(客単価)を大幅に引き上げることが可能です。これは店舗面積に依存しません。

    2. 店舗外での売上機会創出(顧客接点拡大策): B 社の売上は、現在、来店客に依存する「待ち」のビジネスが中心と考えられます。売上を拡大するためには、店舗外へ積極的に出ていく「攻め」の営業活動が必要です。具体的には、既存のプロ顧客(工務店など)へのルートセールスを強化したり、リフォームや修理を検討している一般家庭へ専門スタッフが出向いて相談に応じたりする「訪問サービス」です。これにより、店舗という物理的な制約を超えて商圏を広げ、新たな売上機会を創出できます。

  • 使用した経営学の知識

    • 事業ドメインの再定義: 単なる「ホームセンター(小売業)」から、「住まいに関するソリューションプロバイダー(サービス業)」へと事業の定義を広げることで、新たな成長機会を見出します。
    • チャネル戦略: 既存の店舗(プル戦略)に加えて、訪問営業(プッシュ戦略)を組み合わせることで、多角的な顧客アプローチを実現します。
    • サービス・マーケティング: モノの販売に、専門知識や施工といった無形のサービスを組み合わせることで付加価値を高め、売上を拡大する考え方です。

第 3 問(配点 30 点)

設問文

B 社と大手ホームセンターの流通活動について、以下の設問に答えよ.

設問 1

B 社と大手ホームセンターとの流通活動の違いは何か。80 字以内で述べよ.

回答例(77 字)

大手は一括大量仕入と大規模物流センターを活用した効率的なチェーン展開。 B 社は、地元のプロ顧客を販売先、講師、施工業者としても活用する循環型の関係性を構築。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 大手:「チェーンオペレーションによる多店舗展開」「店舗の大型化」
    • B 社:「単独店舗」「長年取引のあった地元を中心とする大工、工務店」「(リタイアしたプロ顧客を)講師として活用」「(プロ顧客を)施工業者も...活用」
  • 答案作成の根拠 「流通活動」を仕入から販売、およびそれに関わるプレーヤー間の関係性と捉え、両者の違いを比較します。

    • 大手ホームセンター: キーワードは「チェーンオペレーション」です。これは、本部が司令塔となり、全店舗分の商品を一括で大量に仕入れることで「規模の経済」を働かせ、コストダウンを図ります。そして、大規模な物流センターから各店舗へ効率的に商品を配送する、標準化・効率化された「線形的な流通システム」を構築しています。
    • B 社: 単独店舗である B 社は、大手のような規模の経済は追求できません。その代わり、与件文には「長年付き合いのあるプロ顧客」が、商品を「買う客」であると同時に、イベントの「講師」やリフォーム工事の「施工業者」という供給サイドの役割も担っていることが描かれています。これは、B 社を中心として、地域のプロ顧客との間に、販売・サービス提供・協業が一体となった、ユニークな「循環型の流通・協力関係」が構築されていることを意味します。
  • 使用した経営学の知識

    • チャネル戦略: 商品やサービスが生産者から消費者に届くまでの経路や仕組み。大手はメーカー → 本部 → 物流センター → 店舗 → 消費者という典型的な流通チャネルですが、B 社は顧客がチャネルの構成員にもなるという特徴的な構造を持っています。
    • サプライチェーン・マネジメント (SCM): 大手は効率性を重視した SCM を展開しているのに対し、B 社は地域内での関係性を重視した、いわば「リレーションシップ・ベースのサプライチェーン」を構築していると言えます。

設問 2

B 社が流通活動で大手ホームセンターに対抗するためには、どのような手法が考えられるか。80 字以内で述べよ.

回答例(78 字)

長年の取引があるプロ顧客と連携を強化し、彼らの施主を顧客として紹介してもらう。B 社はプラン提案と商品供給で応え、双方向の顧客紹介関係を構築し販路を拡大する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「長年取引のあった地元を中心とする大工、工務店、配管工事業者などの業務(プロ)用需要にも対応」
    • 「各種リフォーム工事...施工業者も、顧客として長年付き合いのある業者を活用」
    • 「建築士やインテリアコーディネーターの資格を持つ社員が...プランを提案するサービス」
  • 答案作成の根拠 設問 1 で明らかにした B 社独自の「循環型の関係性」を、大手に対抗するための武器としてさらに能動的に活用する手法を考えます。現状では、B 社がリフォーム工事を受注し、プロ顧客に施工を「依頼する」という一方向の流れが主です。これを発展させ、双方向の協力関係を築きます。 具体的には、B 社の主要顧客である地元の工務店などが、彼ら自身の顧客(例えば新築やリフォームの施主)を B 社に紹介してくれるような仕組みを構築します。工務店にとっては、B 社の専門スタッフ(建築士など)がプラン提案を代行してくれ、施主の満足度を高められるメリットがあります。B 社にとっては、自ら営業せずとも新規顧客を獲得できるというメリットがあります。 このように、プロ顧客を単なる「商品の買い手」や「下請け業者」としてだけでなく、「ビジネスパートナー」と位置づけ、相互に利益のある関係性を深化させることが、大手には真似のできない強力な流通戦略となります。

  • 使用した経営学の知識

    • 戦略的提携(アライアンス): 競争関係にある企業同士や、異なる業種の企業が、共通の目的のために協力関係を結ぶこと。ここでは、B 社とプロ顧客との間で、互いの顧客基盤や専門性を活用しあう販売提携を構築します。
    • リレーションシップ・マーケティング: 顧客との長期的で良好な関係を築き、維持・強化していくことで、継続的な取引を促すマーケティング手法。これをプロ顧客との関係にも適用し、Win-Win の関係を構築します。

第 4 問(配点 20 点)

設問文

B 社が行っているインターナルマーケティングについて、以下の設問に答えよ.

設問 1

B 社はインターナルマーケティングとして具体的にどのような方策を行っているか。50 字以内で 2 つ答えよ.

回答例

  • 1. 技術研修や資格取得報奨制度により、従業員の専門能力開発を支援し、スキル向上への意欲を高める方策。(48 字)
  • 2. 顧客対応の優秀者表彰や一日店長体験を通じ、従業員の貢献を認め、仕事への誇りと意欲を向上させる方策。(49 字)

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「積極的に社員を技術研修に参加させている」
    • 「各種技能資格取得者に対しては、報奨制度を設け、特別昇給などを行い」
    • 「顧客対応 No.1 社員を管理職が選出し、...表彰する」
    • 「月間を通じての顧客対応 No.1 社員を「スター」として...報奨金とともに翌月のイベント開催日に「一日店長」を体験させる」
  • 答案作成の根拠 インターナルマーケティングとは、「従業員は内部顧客である」という考えに基づき、従業員の満足度やモチベーションを高めることで、結果として外部の顧客へのサービス品質を向上させる一連の活動を指します。与件文から、B 社が実施している具体的な方策を抽出し、整理します。

    1. 能力開発と金銭的動機付け: B 社は、技術研修への参加奨励や、資格取得者への報奨金・特別昇給という制度を設けています。これは、従業員が専門スキルを高めること(能力開発)を直接的に支援し、金銭的なインセンティブ(報酬)を与えることで、学習意欲を促進する方策です。
    2. 承認と非金銭的動機付け: 日々の優れた顧客対応を「No.1 社員」や「スター」として全従業員の前で表彰する制度は、従業員の努力や貢献を公式に「承認」するものです。また、「一日店長」という特別な体験は、金銭では得られない名誉や、経営視点を学ぶ機会という「非金銭的な報酬」であり、従業員の自尊心や仕事への誇りを高める効果があります。 これら 2 つは、それぞれ「スキル」と「マインド」の両面から従業員に働きかける、補完的な施策となっています。
  • 使用した経営学の知識

    • インターナルマーケティング: 企業が従業員に対して行うマーケティング活動。従業員満足 (ES) が顧客満足 (CS) を生むという考え方が基本となります。
    • 動機付け理論(モチベーション理論):
      • ハーズバーグの二要因理論: 「報奨制度」は動機付け要因に、「特別昇給」は衛生要因の改善にも寄与します。
      • マズローの欲求段階説: 「表彰」や「一日店長」は、高次の「承認欲求」や「自己実現欲求」を満たす方策と言えます。

設問 2

(設問 1)で答えた方策は、B 社の行うサービスにどのような効果があるのか。100 字以内で具体的に説明せよ.

回答例(93 字)

従業員の専門知識・技術と仕事への意欲が共に向上する。これにより、専門性の高い商品説明や質の高いプラン提案、親身な顧客対応が可能となり、顧客満足度と信頼感を高め、企業の競争力向上に繋がる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 設問 1 で挙げた各種のインターナルマーケティング施策
    • 「園芸教室」「木工教室」での指導
    • 「建築士やインテリアコーディネーターの資格を持つ社員が...プランを提案するサービス」
  • 答案作成の根拠 設問 1 で分析したインターナルマーケティング方策が、最終的に B 社の「サービス」、ひいては「業績」にどのような好影響をもたらすのか、その因果関係を具体的に説明します。

    1. スキル向上 → サービス品質の向上: 資格取得や研修で得た専門知識・技術は、顧客へのアドバイスの的確さや、プラン提案の説得力に直結します。これにより、顧客は「この店員さんは信頼できる」と感じ、満足度が高まります。
    2. モチベーション向上 → サービス態度の向上: 表彰制度などによって仕事への誇りや意欲が高まった従業員は、より積極的に、そして親身になって顧客に対応するようになります。このホスピタリティあふれる接客態度は、顧客に心地よい購買体験を提供し、店舗への愛着(ロイヤルティ)を育みます。
    3. 相乗効果: 高いスキルと高いモチベーションを兼ね備えた従業員は、B 社にとって最大の財産です。彼らが提供する高品質なサービスこそが、価格や品揃えの幅では勝てない大手ホームセンターとの「差別化」を可能にする核心であり、B 社の持続的な競争優位の源泉となります。この一連の流れを論理的に記述することで、インターナルマーケティングの重要性とその効果を示すことができます。
  • 使用した経営学の知識

    • サービス・プロフィット・チェーン: 「従業員満足(ES)」が「従業員の定着と生産性の向上」を生み、それが「サービス価値の向上」に繋がり、「顧客満足(CS)」と「顧客ロイヤルティ」を高め、最終的に企業の「利益と成長」に結びつく、という一連の因果関係を示したモデル。本問の解説は、まさにこのモデルに沿った内容となっています。

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