Gemini 2.5 Pro による回答と解説( 平成 25 年度(2013 年度)事例 Ⅲ)
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第 1 問(配点 30 点)
設問文
C 社では、横ばいで推移している業績を改善するため、X 社のシェアが高い首都圏市場への参入を目指している。この課題について、以下の設問に答えよ。
設問 1
C 社が首都圏市場への参入で活用すべき競争優位性は何か、60 字以内で述べよ。
回答例(63 字)
ダウンサイジング化に対応した新製品開発力と提案力、及び通信建設会社の指導で培った高い製品・施工品質を活かし、X 社と差別化する。
解説
問題文の該当箇所
- 「X 社と比較して、新製品開発力・提案力、製品・施工品質については C 社の評価は高い」
- 「高速化・ダウンサイジング化が進む通信機器に対応した新製品の提案が求められ」
- 「開発部を中心にダウンサイジング化が進む通信機器に対応した通信用部材の開発を行い、通信事業者や通信建設会社へ提案し、新規取引先を獲得する営業展開を進めてきており、今後も強化する方針である」
- 「創業以来、通信建設会社の指導を受け、通信用部材事業における品質を確保するために製品の標準化や据付け施工面での保安対策技術の習得に努めた」
答案作成の根拠 首都圏市場はシェア第 1 位の X 社が中心である。この市場に参入するためには、C 社が X 社より優れている点を活用する必要がある。与件文から、C 社は X 社に比べて「新製品開発力・提案力」と「製品・施工品質」で高い評価を得ていることがわかる。また、市場からは「ダウンサイジング化に対応した新製品の提案」が求められており、これは C 社が強化している方針と合致する。したがって、これらの強みを組み合わせ、X 社との差別化を図ることが、首都圏市場参入における競争優位性となる。
使用した経営学の知識
- 競争戦略(差別化戦略): 競合他社が提供する製品やサービスに対し、機能、品質、ブランドイメージなどで独自性を打ち出し、競争優位を築く戦略。C 社は、X 社が持つ「価格・納期」の優位性とは異なる「開発力・品質」という軸で差別化を図るべきである。
設問 2
C 社が首都圏市場への参入を実現するためには、関東工場の役割をどのように変えるべきなのか、またそれを実現するためにはどのような具体的対応策が必要となるのか、120 字以内で述べよ。
回答例(97 字)
役割は首都圏市場向けの生産・物流拠点へ変える。対応策は、① 汎用機を導入し補助部材の多品種少量生産にも対応する。② 物流機能を設け、首都圏へ直接出荷し短納期化とコスト削減を図り、価格競争力を高める。
解説
問題文の該当箇所
- 「X 社と比較して、納期や価格面での評価は低い」
- 「関西本社工場では多品種少量の受注生産の補助部材を、関東工場では在庫対応が可能でロットサイズを大きくできる標準仕様部材を担当している」
- 「関東工場は、...専用機による量産体制となっており」
- 「関東工場で製造された製品は、関西本社工場の物流センターに運ばれ在庫となり、両工場で製造されたものを物件ごとに組み合わせて出荷される」
答案作成の根拠 C 社の弱みは「納期」と「価格」である。この原因の一つに、関東工場で生産した製品を一度関西本社の物流センターに輸送している非効率な物流体制がある。首都圏市場に参入するためには、この弱みを克服する必要がある。 そのためには、まず関東工場を単なる量産拠点ではなく、首都圏市場向けの生産・物流拠点と再定義することが必要である。 具体的な対応策として、以下の 2 点が挙げられる。
- 生産体制の改革: 現在の専用機による量産体制では、個別仕様である「補助部材」に対応できない。首都圏の多様なニーズに応えるため、関西本社工場のように「汎用機」を導入し、多品種少量生産を可能にする。
- 物流体制の改革: 関西への輸送を廃止し、関東工場内に物流機能を新設する。これにより、首都圏の顧客へ直接出荷する体制を整え、輸送コストの削減(価格競争力向上)とリードタイムの短縮(短納期化)を実現する。
使用した経営学の知識
- 生産管理: 生産拠点の最適配置や生産方式(多品種少量生産)の導入により、顧客ニーズへの対応力と生産効率を高める。
- サプライチェーン・マネジメント (SCM): 物流プロセスを見直し、製品が顧客に届くまでのリードタイム短縮とコスト削減を目指す。関東工場を物流拠点化することは、SCM の最適化に繋がる。
第 2 問(配点 40 点)
設問文
C 社では、顧客からの問い合わせに迅速に対応するため、また短納期化に対応するため、技術部内の情報の共有化や業務の効率化を図る計画がある。この計画について、以下の設問に答えよ。
設問 1
技術部内で共有化が必要と考える具体的情報名を 80 字以内であげよ。
回答例(76 字)
過去案件の設計図面、CAD データ、部品ライブラリ、現地調査結果、顧客との調整事項や設計変更内容の履歴、据付け施工のノウハウといった技術情報を共有化する。
解説
問題文の該当箇所
- 「通信施設での調整事項や設計変更などの内容は、担当している設計担当者しか分からない」
- 「設計業務には CAD が使われているが、部品のような設計要素のライブラリ化などは行われておらず」
- 「技術部として CAD の使用方法についての標準化やデータの共有化は図られていない」
- 「受注から据付け施工完了までの全期間に占める設計担当業務の割合は大きい」
答案作成の根拠 技術部の課題は、業務が各設計担当者に依存し、情報が属人化していることである。これにより、問い合わせへの対応遅延や業務の非効率(設計業務の割合が大きい)が生じている。この課題を解決し、迅速化・短納期化を実現するためには、属人化している情報を組織の知識として共有する必要がある。具体的に共有すべき情報は以下の通りである。
- 設計関連情報: 過去の設計図面や CAD データ、再利用可能な部品のライブラリ。
- 案件関連情報: 現地調査の結果、顧客(通信建設会社)との調整事項、設計変更の経緯と内容。
- 施工関連情報: 現場での据付けに関するノウハウ。 これらの情報を共有することで、担当者以外でも状況を把握でき、迅速な対応が可能となる。
使用した経営学の知識
- ナレッジマネジメント: 組織内の暗黙知(個人の経験やノウハウ)を形式知(マニュアルやデータベース)に変換し、共有・活用することで組織全体の生産性や問題解決能力を高める経営手法。
設問 2
技術部内の業務効率化を図るために必要な具体的改善内容を 120 字以内で述べよ。
回答例(107 字)
①CAD の使用方法を標準化し、部品データをライブラリ化する。② 過去の設計図面や顧客との調整事項、変更履歴などをデータベースで一元管理する。③ これにより情報の属人化を解消し、流用設計を促進して設計業務の効率化を図る。
解説
問題文の該当箇所
- 「設計担当業務の割合は大きい」
- 「通信施設での調整事項や設計変更などの内容は、担当している設計担当者しか分からない」
- 「CAD の使用方法についての標準化やデータの共有化は図られていないため、設計担当者各人がそれぞれ独自に使用している」
答案作成の根拠 技術部の業務効率化には、情報共有の仕組み作りと業務プロセスの見直しが不可欠である。設問 1 で挙げた情報を共有するための具体的な改善策を提案する。
- CAD 運用の標準化と効率化: 各担当者が独自の方法で CAD を使用している現状を改め、使用方法を標準化する。さらに、標準仕様部材や過去に設計した補助部材のデータを「部品ライブラリ」として整備する。これにより、ゼロから設計する手間が省け、流用設計が促進される。
- 情報一元管理システムの構築: 過去の設計資産(図面、CAD データ)や、案件ごとの顧客とのやり取り、変更履歴といった情報を、全担当者がアクセスできるデータベースで一元管理する。 これらの改善策により、情報の属人化が解消され、誰でも迅速に情報を参照できるようになる。結果として、設計業務のリードタイムが短縮され、部門全体の業務効率が向上する。
使用した経営学の知識
- BPR (Business Process Re-engineering): 業務プロセスを根本的に見直し、IT を活用して再設計することで、生産性やスピードを飛躍的に向上させる手法。CAD の標準化やデータベース導入は BPR の一環と言える。
- 標準化: 業務の手順や使用するツールを統一することで、業務の効率化、品質の安定、スキルの継承を容易にする。
第 3 問(配点 30 点)
設問文
C 社経営者は、これまで蓄積した生産技術のノウハウを活用し、通信用部材市場以外での新規事業開発を模索している。過去に経験した Y 社との共同開発事業の失敗の要因と、その失敗の要因を踏まえた今後の新規事業開発の留意点を、140 字以内で述べよ。
回答例(112 字)
失敗要因は、市場ニーズや競合調査が不十分なまま、販売を提携先に依存し、自社の強みを活かせなかった点。留意点は、① 自社の技術力や既存顧客との関係を活かせる事業領域を選定し、② 綿密な市場調査を行い、販売にも主体的に関与すること。
解説
問題文の該当箇所
- 「(Y 社は)自社の建材メーカーとしてのノウハウと C 社の通信用部材のノウハウを活用し、新製品として施工性が良く多機能なオフィス用 OA フロアを事業化した」
- 「事務機メーカーの、シンプルな機能で軽量化された低価格製品との競合により、Y 社の販売数量は低迷」
- 「C 社が製造、Y 社の物流センターへ納品する契約」「Y 社は…全国の販売網を活用して建設会社に営業を展開した」
- 「C 社開発部では通信用部材以外の新製品開発を多数手掛けているが、現在まで大きな成功例はなく推移している」
答案作成の根拠【失敗の要因】 Y 社との共同事業の失敗要因は、主に以下の 2 点に集約される。
- マーケティングの失敗: 競合である事務機メーカーは「シンプル・軽量・低価格」という市場ニーズに合った製品を提供していた。一方、C 社と Y 社の製品は「多機能」であり、市場ニーズとズレがあった。これは事前の市場・競合調査が不十分であったことを示唆する。
- 事業スキームの問題: C 社は製造に特化し、販売・マーケティングを Y 社に完全に依存していた。これにより、自ら市場や顧客の情報を得る機会を失い、事業環境の変化に対応できなかった。また、C 社の強みである「通信建設会社との関係」が活かせない、畑違いの市場であった点も要因の一つである。
【今後の留意点】 この失敗経験から、今後の新規事業開発では以下の点に留意すべきである。
- 自社の強みの活用: 新規事業は、自社のコア技術(金属加工・設計力)や既存の販売チャネル・顧客基盤(通信建設会社との関係)を活かせる領域で展開すべきである。
- マーケティングと主体的な関与: 事業化の前に綿密な市場調査(ニーズ、競合分析)を行うことが必須である。また、他社と提携する場合でも、販売やマーケティングに主体的に関与し、自ら市場の情報を掴む努力を怠ってはならない。
使用した経営学の知識
- コア・コンピタンス経営: 企業が持つ中核的な強みを定義し、それを活かせる事業分野に経営資源を集中させる経営手法。
- マーケティング・プロセス: 市場調査から製品開発、価格設定、プロモーション、販売チャネル構築までの一連の活動。Y 社との事業では、このプロセス、特に市場調査と販売戦略に問題があった。