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平成 24 年度(2012 年度)事例 Ⅳ
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# 平成 24 年度(2012 年度)事例 Ⅳ
## 与件文
D 旅館は大都市圏からのお客も多い温泉地に立つ、創業 85 年の小〜中規模旅館である。この地は、秋の紅葉シーズンが人気で、毎年この時期、多くの観光客が訪れることで知られている。D 旅館は木造の旧館と 20 年前に新築した新館の 2 棟からなり、客室数は 25 室:旧館 8 室、新館 17 室;、収容人数 125 名:旧館 30 名、新館 95 名;である。客室のほか、大広間 2、内湯 2、露天風呂 1、貸し切り可能な家族風呂などを有している。スタッフは 3 代目であるオーナー夫妻、正社員 19 名、常勤のパート 13 名の計 34 名で構成されている。D 旅館の人気の 1 つは各室に担当が 1 名付き、細やかなサービスを提供することにある。また、部屋出しの食事は、地元の食材を用いた創作料理が評判を集めている。
宿泊客の大半が旅行代理店またはインターネットからの予約である。年間宿泊者数は毎年 18,000 名を超える水準で推移してきたが、近年、周辺旅館では施設のリニューアルがみられ、その影響もあり、稼働率は低下し、昨年度は年間宿泊者数が 17,000 名、今年度は 16,500 名と減少し、2 年連続で赤字を記録した。
宿泊者数減少の原因については様々な理由が考えられるが、最大の理由としては、老朽化した旧館に問題がある、とオーナー夫妻は分析している。旧館は収容人数も少なく、設備も古いため、新館に比べて稼働率が低い。そこで、旧館での営業を取りやめ、新館のみでの営業に切り替えるか、旧館を改修することが検討されている。
この問題と並行して、オーナー夫妻には子供がなく、後継者並びに事業承継問題が悩みの種である。これらの課題に関しても、オーナー夫妻から中小企業診断士に対しアドバイスが求められている。D 旅館の今年度の財務諸表は次のとおりである。
### 損益計算書
(単位:千円)
| | |
| :----------------- | :--------- |
| 売上高 | 330,000 |
| 売上原価 | 92,400 |
| 売上総利益 | 237,600 |
| 販売費・一般管理費 | 251,090 |
| 営業損失 | △13,490 |
| 営業外収益 | 500 |
| (うち受取利息) | (500) |
| 営業外費用 | 19,160 |
| (うち支払利息) | (17,960) |
| 経常損失 | △32,150 |
| 当期純損失 | △32,150 |
### 固定費・変動費の内訳
(単位:千円)
| | |
| :--------------------- | :------ |
| 変動売上原価 | 92,400 |
| 食材費他 | 92,400 |
| 変動販売費・一般管理費 | 43,890 |
| 販売手数料 | 34,815 |
| リネン・消耗品費 | 9,075 |
| 固定費 | 207,200 |
| 水道光熱費 | 40,000 |
| 事務通信費 | 6,000 |
| 広告宣伝費 | 6,500 |
| 設備保守点検・修繕費 | 10,000 |
| 人件費 | 119,300 |
| 減価償却費(定額法) | 25,400 |
### その他補足情報
| | |
| :----------- | :-------- |
| 平均客単価 | 20,000 円 |
| 借入金の金利 | 平均 4% |
### 貸借対照表
(単位:千円)
| 資産の部 | | 負債の部 | |
| :----------- | :------ | :------------------- | :------ |
| 流動資産 | 67,175 | 流動負債 | 18,300 |
| 現金 | 8,500 | 仕入債務 | 6,500 |
| 預金 | 50,000 | 短期借入金 | 9,000 |
| 売上債権 | 8,000 | 未払金 | 1,600 |
| 未収金 | 675 | 預り金 | 1,200 |
| 固定資産 | 505,700 | 固定負債 | 440,000 |
| 有形固定資産 | 504,700 | 長期借入金 | 440,000 |
| 建物他 | 426,000 | **負債合計** | 458,300 |
| 構築物 | 47,200 | **純資産の部** | |
| 土地 | 31,500 | 資本金 | 50,000 |
| 投資その他 | 1,000 | 剰余金 | 64,575 |
| | | **純資産合計** | 114,575 |
| **資産合計** | 572,875 | **負債・純資産合計** | 572,875 |
## 第 1 問(配点 40 点)
オーナー夫妻から、旧館の改修後の財務内容の変化について意見を求められた。老朽化した旧館の改修は、大浴場の改修、客室専用の露天風呂を新たに設置することを含めた客室の改修などが中心であり、これにより、周辺旅館との競争力が回復できると考えられている。この改修には 180,000 千円の支出が見積もられている。このうち、50,000 千円は手持ちの預金でまかない、残額は金融機関から現在と同じ金利で借り入れることとする。減価償却については定額法により 10 年(10 年後の残存価額はゼロとする)で償却する予定である。
改修工事の結果として、客単価は 23,000 円となり、年間宿泊者数が初年度は 17,000 名、2 年目以降は 18,000 名まで回復するとオーナー夫妻は予想している。ただし、上記の改修に伴い、年間の設備保守点検・修繕費は今年度より 20%増加、水道光熱費、広告宣伝費はそれぞれ今年度より 10%増加することが見込まれている。
### (設問 1)
改修工事の結果として、初年度(a)、2 年目(b)の年間宿泊者数がオーナー夫妻の予想通りに回復した場合の予想損益計算書を作成せよ(単位:千円)。なお、この期間、営業外収益は発生しないものとする。
### (設問 2)
改修工事の結果として年間宿泊者数が 18,000 名に回復した場合に、今年度よりも収益性が改善したか否かを判定するのに最もふさわしいと考えられる財務指標の名称を(a)欄に 3 つあげ、その数値を計算(小数点第 3 位を四捨五入すること)して(b)欄に示せ。なお、貸借対照表は次に示されたものを使用すること。
改修 2 年目の予想貸借対照表
(単位:千円)
| 資産の部 | | 負債の部 | |
| :----------- | :------ | :------------------- | :------ |
| 流動資産 | 107,455 | 流動負債 | 21,944 |
| 現金 | 85,380 | 仕入債務 | 6,500 |
| 売上債権 | 21,400 | 短期借入金 | 9,000 |
| 未収金 | 675 | 未払金 | 5,244 |
| | | 預り金 | 1,200 |
| 固定資産 | 598,900 | 固定負債 | 570,000 |
| 有形固定資産 | 597,900 | 長期借入金 | 570,000 |
| 建物他 | 519,200 | **負債合計** | 591,944 |
| 構築物 | 47,200 | **純資産の部** | |
| 土地 | 31,500 | 資本金 | 50,000 |
| 投資その他 | 1,000 | 剰余金 | 64,411 |
| | | **純資産合計** | 114,411 |
| **資産合計** | 706,355 | **負債・純資産合計** | 706,355 |
### (設問 3)
この施設改修に関して、正味現在価値法を用いてこの投資案を評価せよ(計算過程も明示すること)。ただし、2 年目以降、10 年目まで年間宿泊者数は 18,000 名で推移すると見込まれている。また、税率 40%、割引率 6%とする。計算には下記の年金現価係数表を用いよ。なお、運転資本の増減はないと仮定する。
年金現価係数表
| | 6% |
| :-- | :---- |
| 1 | 0.943 |
| 2 | 1.833 |
| 3 | 2.673 |
| 4 | 3.465 |
| 5 | 4.212 |
| 6 | 4.917 |
| 7 | 5.582 |
| 8 | 6.210 |
| 9 | 6.802 |
| 10 | 7.360 |
## 第 2 問(配点 30 点)
旧館の改修とは別の改善策として、旧館を閉鎖し、新館のみで営業した場合の収益性について、オーナー夫妻から意見を求められた。この改善策を実施した場合、客単価は変化しないものの、年間宿泊客数は 15,000 名に減少することが予想されている。これにより、人件費、減価償却費を除く固定費は今年度より 30%減少する。
### (設問 1)
この改善策を実施した場合の損益分岐点比率を求めよ(計算過程も明示すること)。なお、ここでは、営業利益をゼロとする売上高を損益分岐点とする。計算にあたっては、千円未満を四捨五入せよ。
### (設問 2)
この改善策を実施した後、損益分岐点比率 90%を目標としたい、とオーナー夫妻からの要望があった。この要望に固定費の削減で応える場合、その削減額を求めよ(計算過程も明示すること。単位:千円)。
## 第 3 問(配点 30 点)
前述したように、オーナー夫妻には後継者がなく、親族にも経営を任せられる人材が見当たらないという。場合によっては、旅館の売却を伴う事業承継も視野に入れているといい、今年度の状況を前提とした具体的なケースについて説明を求められた。
### (設問 1)
承継先にかかわらず、売却価格の算定に際しては、客観的な数値が必要となる。そこで、今年度の財務諸表をもとに企業価値を求めることになった。割引キャッシュフロー法を用いて、企業価値を求めよ(計算過程も明示すること。単位:千円、千円未満は四捨五入すること)。
ただし、算定にあたっては、オーナー夫妻に対する給与 16,000 千円は不要となることが分かっている。また、今後の株主資本コストを 5%、平均的な負債資本コストを 4%、税率は 40%、キャッシュフローは今年度の水準が将来にわたって継続するものと仮定する。
### (設問 2)
事業承継を考える際、承継先としてどのような相手が考えられるか。また、その際の留意点について中小企業診断士の立場から 200 字以内で説明せよ。
# 平成 24 年度 事例 Ⅳ 解答解説
## 第 1 問(配点 40 点)
### (設問 1)
(単位:千円)
| | (a) 初年度 | (b) 2 年目 |
| :------------------- | :---------- | :----------- |
| 売上高 | 391,000 | 414,000 |
| 売上原価 | 95,200 | 100,800 |
| 売上総利益 | 295,800 | 313,200 |
| 販売費・一般管理費 | 277,070 | 279,730 |
| **営業利益 (損失)** | **18,730** | **33,470** |
| 営業外収益 | 0 | 0 |
| 営業外費用 | 24,360 | 24,360 |
| **経常利益 (損失)** | **△ 5,630** | **9,110** |
#### 解説
各項目の計算過程は以下の通りである(単位:千円)。
1. **売上高**
- (a) 初年度:客単価 23,000 円 × 17,000 名 = 391,000
- (b) 2 年目:客単価 23,000 円 × 18,000 名 = 414,000
2. **売上原価(変動費)**
- 今年度の変動売上原価(食材費他)は 92,400、宿泊者数 16,500 名。
- 宿泊者 1 名あたりの変動売上原価:92,400 / 16,500 名 = 5.6
- (a) 初年度:5.6 × 17,000 名 = 95,200
- (b) 2 年目:5.6 × 18,000 名 = 100,800
3. **販売費・一般管理費**
- **変動販管費**:
- 今年度の変動販管費は 43,890、宿泊者数 16,500 名。
- 宿泊者 1 名あたりの変動販管費:43,890 / 16,500 名 = 2.66
- (a) 初年度:2.66 × 17,000 名 = 45,220
- (b) 2 年目:2.66 × 18,000 名 = 47,880
- **固定費**:
- 今年度の固定費合計:207,200
- 設備保守点検・修繕費増:10,000 × 20% = 2,000
- 水道光熱費増:40,000 × 10% = 4,000
- 広告宣伝費増:6,500 × 10% = 650
- 新規減価償却費:180,000 / 10 年 = 18,000
- 改修後の固定費合計:207,200 + 2,000 + 4,000 + 650 + 18,000 = 231,850
- **販管費合計**:
- (a) 初年度:45,220 (変動) + 231,850 (固定) = 277,070
- (b) 2 年目:47,880 (変動) + 231,850 (固定) = 279,730
4. **営業外費用**
- 既存の支払利息:17,960
- 既存のその他営業外費用:19,160 - 17,960 = 1,200
- 新規借入:180,000 (投資) - 50,000 (預金) = 130,000
- 新規支払利息:130,000 × 4% = 5,200
- 合計:17,960 + 1,200 + 5,200 = 24,360
- ※(a)(b)ともに同額。
5. **経常利益 (損失)**
- (a) 初年度:18,730 (営業利益) - 24,360 (営業外費用) = △ 5,630
- (b) 2 年目:33,470 (営業利益) - 24,360 (営業外費用) = 9,110
---
### (設問 2)
#### ①:経営指標
- (a) **売上高経常常利益率**
- (b) **2.20 %** (計算過程:9,110 ÷ 414,000 x 100、今年度:△9.74 %)
#### ②:経営指標
- (a) **総資本経常常利益率**
- (b) **1.29 %** (計算過程:9,110 ÷ 706,355 x 100、今年度:△5.61 %)
#### ③:経営指標
- (a) **有形固定資産回転率**
- (b) **0.69 回** (計算過程:414,000 ÷ 597,900、今年度:0.65 回)
### 解説
- **指標選定の視点**
D 旅館の課題は、老朽化した旧館による競争力低下と 2 年連続の赤字転落である。今回の改修投資(180,000 千円)が、この根本的な**収益性改善に寄与したか**を多角的に示すため、収益性の結果を示す指標(①, ②)と、投資効率(=収益性改善の要因)を示す指標(③)を選定する。比較対象は「今年度(改修前)」とする。
- **各指標の解説**
1. **売上高経常利益率**:改修 2 年目(2.20%)は、今年度(△9.74%)の赤字状態から大幅に改善した。これは、客単価上昇(20 千円$\to$23千円)と客数回復(16.5千人$\to$18 千人)により、本業の収益性が向上したことを示すものである。
2. **総資本経常利益率**:改修 2 年目(1.29%)は、今年度(△5.61%)から黒字転換した。投資のために借入金(130,000 千円)を増やし総資本が増加したものの、それを上回る利益改善を実現し、資本効率が改善したことを示している。
3. **有形固定資産回転率**:改修 2 年目(0.69 回)は、今年度(0.65 回)より上昇した。これは、180,000 千円の設備投資(固定資産増加)が、売上増加(330,000 千円$\to$414,000 千円)に効率的に結びついた(=収益性改善の要因となった)ことを示すものである。
---
### (設問 3)
- CF1:ΔEBIT1=32,220 → CF1=32,220×(1−0.4)+18,000=37,332
- CF2:ΔEBIT2=46,960 → CF2=46,960×(1−0.4)+18,000=46,176
- PV 算式:PV=CF2× 年金現価係数(10 年,6%)−(CF2−CF1)× 現価係数(1 年,6%)
- PV 数値:PV=46,176×7.360−(46,176−37,332)×0.943=331,515(千円)
- NPV:=331,515− 初期投資 180,000=151,515(千円)
- 結論:NPV>0 ゆえ投資案は採択すべきである(151,515 千円)。
#### 解説
NPV の計算には、投資を行わなかった場合(現状維持)と、投資を行った場合の「増分(インクリメンタル)キャッシュフロー」を用いる。
1. **初期投資 (IC)**:180,000 千円
2. **増分営業キャッシュフロー (ΔOCF) の計算**
- ΔOCF = (ΔEBIT × (1 - 税率)) + (Δ 減価償却費 × 税率)
- または、ΔOCF = ΔNOPAT + Δ 減価償却費
- (ΔEBIT = 増分営業利益、ΔNOPAT = 増分税引後営業利益)
- **(a) 初年度 (T=1)**
- Δ 売上高:391,000 (案) - 330,000 (現) = 61,000
- Δ 売上原価:95,200 (案) - 92,400 (現) = 2,800
- Δ 販管費:277,070 (案) - 251,090 (現) = 25,980
- Δ 営業利益 (ΔEBIT):61,000 - 2,800 - 25,980 = 32,220
- ΔNOPAT:32,220 × (1 - 0.4) = 19,332
- Δ 減価償却費(新規投資分):18,000
- **ΔOCF (a)**:19,332 + 18,000 = **37,332**
- **(b) 2 年目〜10 年目 (T=2〜10)**
- Δ 売上高:414,000 (案) - 330,000 (現) = 84,000
- Δ 売上原価:100,800 (案) - 92,400 (現) = 8,400
- Δ 販管費:279,730 (案) - 251,090 (現) = 28,640
- Δ 営業利益 (ΔEBIT):84,000 - 8,400 - 28,640 = 46,960
- ΔNOPAT:46,960 × (1 - 0.4) = 28,176
- Δ 減価償却費(新規投資分):18,000
- **ΔOCF (b)**:28,176 + 18,000 = **46,176**
3. **NPV の計算**(割引率 6%)
- T=1〜10 まで CF(b) = 46,176 が続くと仮定し、T=1 の差額を調整する方法で計算する。
- NPV = (CF(b) × 10 年年金現価係数) - ( (CF(b) - CF(a)) × 1 年現価係数 ) - 初期投資
- NPV = (46,176 × 7.360) - ( (46,176 - 37,332) × 0.943 ) - 180,000
- NPV = 339,855.36 - ( 8,844 × 0.943 ) - 180,000
- NPV = 339,855.36 - 8,339.892 - 180,000
- NPV = 151,515.468 → **151,515 千円**
## 第 2 問(配点 30 点)
### (設問 1)
- 予想売上:20,000 円 ×15,000 名=300,000(千円)
- 変動費率:=(5,600+2,110+550)÷20,000=0.413
- 固定費:=119,300+25,400+{62,500×(1−0.3)}=188,450(千円)
- BEP:=固定費 ÷(1−0.413)=188,450÷0.587=321,039(千円)
- 比率:=321,039÷300,000×100=107.01(%)
- 結論:損益分岐点比率は**107.01%**(現状数量では黒字化困難)。
#### 解説
1. **予想売上高**
- 客単価 20,000 円 × 15,000 名 = 300,000 千円
2. **変動費率 (V/S)**
- 変動費は客数に比例すると仮定する(第 1 問の分析に基づく)。
- 1 名あたり変動費:(変動売上原価 5.6 + 変動販管費 2.66) = 8.26 千円
- 変動費合計:15,000 名 × 8.26 = 123,900 千円
- 変動費率:123,900 / 300,000 = 0.413 (41.3%)
- (参考)限界利益率 (m):1 - 0.413 = 0.587
3. **固定費 (F)**
- 人件費(119,300)と減価償却費(25,400)を除く固定費が 30%減少。
- 除く固定費:207,200 (今年度合計) - 119,300 - 25,400 = 62,500
- 減少額:62,500 × 0.3 = 18,750
- 改善後の固定費 (F):207,200 - 18,750 = 188,450 千円
4. **損益分岐点売上高 (BEP)**
- BEP = F / m = 188,450 / 0.587 = 321,039.18...
- (千円未満四捨五入)→ 321,039 千円
5. **損益分岐点比率**
- 比率 = BEP / 予想売上高 × 100
- 比率 = 321,039 / 300,000 × 100 = 107.013...% → **107.01 (%)**
---
### (設問 2)
- 目標売上:=300,000×0.90=270,000(千円)
- 限界利益率:=1−0.413=0.587
- 目標固定費:=270,000×0.587=158,490(千円)
- 現行固定費:=188,450(千円)
- 削減額:=188,450−158,490=29,960(千円)
- 結論:固定費**29,960 千円**の削減が必要である。
#### 解説
1. **目標損益分岐点売上高 (目標 BEP)**
- 予想売上高 300,000 × 90% = 270,000 千円
2. **目標固定費 (F')**
- 限界利益率 (m) = 0.587(設問 1 と同様)
- 目標 BEP = F' / m
- 270,000 = F' / 0.587
- F' = 270,000 × 0.587 = 158,490 千円
3. **固定費削減額**
- 現在の固定費 (F):188,450 千円(設問 1 より)
- 目標の固定費 (F'):158,490 千円
- 削減額:188,450 - 158,490 = **29,960 千円**
## 第 3 問(配点 30 点)
### (設問 1)
- 調整 EBIT:=△13,490+16,000=2,510(千円)
- FCF:=EBIT(1− 税率)+償却=2,510×0.6+25,400=26,906(千円)
- WACC:=0.8×0.04×0.6+0.2×0.05=0.0292(2.92%)
- 企業価値:=FCF÷WACC=26,906÷0.0292=921,438(千円)
- 前提:永続一定 FCF(g=0)、千円未満四捨五入
- 結論:企業価値は**921,438 千円**である。
#### 解説
ゼロ成長永久モデル(V = FCF / WACC)を用いて計算する。
1. **フリーキャッシュフロー (FCF) の計算**
- FCF = NOPAT + 減価償却費 - 投資 - Δ 運転資本
- 前提:CF は今年度水準が継続。ゼロ成長(g=0)と仮定。
- この場合、資産維持のための投資(=減価償却費)が必要だが、設問の前提(予備校解)では投資ゼロ(投資 = 0)と仮定して計算する。
- FCF = NOPAT + 減価償却費
- - **修正後営業利益 (EBIT)**:
- 今年度営業損失:△13,490
- オーナー給与加算:+16,000
- 修正後 EBIT:2,510
- **NOPAT**:2,510 × (1 - 0.4) = 1,506
- **FCF**:1,506 (NOPAT) + 25,400 (減価償却費) = **26,906 千円**
2. **WACC (加重平均資本コスト) の計算**
- B/S 簿価を使用する。
- 負債 (D):458,300 (流動負債+固定負債)
- 純資産 (E):114,575
- 総資本 (D+E):572,875
- 負債コスト (Kd):4%、株主資本コスト (Ke):5%、税率 (t):40%
- - WACC = D/(D+E) × Kd(1-t) + E/(D+E) × Ke
- WACC = (458,300 / 572,875) × 0.04 × (1 - 0.4) + (114,575 / 572,875) × 0.05
- WACC = (0.8) × (0.024) + (0.2) × (0.05)
- WACC = 0.0192 + 0.01 = **0.0292 (2.92%)**
3. **企業価値 (V) の計算**
- V = FCF / WACC
- V = 26,906 / 0.0292 = 921,438.35...
- (千円未満四捨五入)→ **921,438 千円**
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### (設問 2)(200 字)
承継先には、従業員や同業他社などが考えられる。 留意点は従業員へ承継する場合は、事前に経営全般に関する知識の付与や経営参画等の後継者教育を行うこと、所有と経営を一致させるための株式取得資金の支援を行うことである。同業他社などへ承継する場合は、企業風土や経営方針を理解してもらうため事前に役員等として経営参画させることが望ましい。 いずれも、従業員、取引先、金融機関など関係者の理解を得ることが必要である。
#### 解説
- **承継先**:親族がいないため、内部(従業員)承継か、外部(M&A)承継となる。
- **留意点(従業員承継)**:最大の課題は「経営能力」と「資金力」である。したがって、早期の教育と、株式買い取り資金の(金融機関等からの)調達支援が論点となる。
- **留意点(外部承継)**:最大の課題は「企業文化・雇用の維持」である。D 旅館の強み(細やかなサービス)を維持するため、経営方針の整合性や、従業員のモチベーション維持(雇用維持)が論点となる。
- **共通の留意点**:事業承継はステークホルダー(従業員、取引先、金融機関)への影響が大きいため、円滑な移行にはこれらの関係者の理解と協力が不可欠である。
## AI への指示
あなたは、中小企業診断士二次試験(事例 Ⅳ:財務・会計)の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。
**評価の基本方針**
- **模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。**
- あなたの解答の評価は、第一に**与件文の記述・数値と設問要求に忠実であるか**、第二に**中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているか**を最優先の基準とします。
**【記述問題の評価方針】**
- 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その**独自の価値を積極的に評価**してください。
- 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という**視点を提供するもの**として活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。
**【計算問題の評価方針】**
- 計算問題は、**最終的な計算結果**だけでなく、そこに至る**計算過程(プロセス)**を重視して評価します。
- **【計算過程スキップの例外】**
- ただし、あなたの回答において `(b)計算過程 スキップ`(あるいは `#### (b)計算過程 スキップ` など、スキップの意図が明確な記載)がされている場合に限り、**(a) の計算結果のみを評価対象とします。**
- この場合、計算結果が正しければ計算過程も正しかったものとみなし、計算結果が間違っていれば計算過程にも誤りがあったものとして評価します(詳細な部分点評価は行いません)。
- **【計算過程の記載がある場合】**
- たとえ最終的な数値が間違っていても、計算の**基本的な考え方**、**立式**、**使用した数値(与件文からのピックアップ)**が正しければ、**部分点を加点**する視点で評価します。
- **【共通事項】**
- **第 1 問設問 1**の財務分析指標の選択のように、**複数の正解(別解)が想定される場合**は、模範解答と異なっていても、与件文から妥当性が読み取れれば正解として評価します。
- **CVP**や**NPV**など、解法がほぼ一意に決まる問題は、**標準的な解法ステップ**を踏めているかを確認します。(※スキップの場合は結果から推定します)
上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、**60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点**で私の解答を添削してください。**加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイント**をバランス良く指摘してください。
評価は点数ではなく、下記の**ABCDEF 評価基準**に沿って行ってください。
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### ABCDEF 評価基準
- **A 評価 (完璧 / 80 点以上):** 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成・計算過程が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
- **B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点):** 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成・計算過程が明快な、上位合格答案レベル。
- **C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点):** 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻や計算ミスがない。安定して合格点をクリアできるレベル。
- **D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点):** 解答の方向性は合っているが、根拠の不足やケアレスミスが散見される。合否が分かれるレベル。
- **E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点):** 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。計算の前提条件を誤解している。合格には改善が必要なレベル。
- **F 評価 (不合格レベル / 49 点以下):** 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。
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### 入力情報
与件文、設問文、出題の趣旨、解説、あなたの回答を参照してください。
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### 出力項目
以下の形式で、詳細なフィードバックをお願いします。
冒頭で `ABCDEF 評価基準`の定義を説明します。
**1. 設問ごとの添削**
**模範解答(比較参考用)**
`回答例と解説`の回答例(計算問題の場合は(a)解答欄と(b)計算過程)を出力してください。
**あなたの回答**
模範回答との比較用にあなたの回答を掲載してください。
- **評価:** この設問の評価を **A / B / C / D / E / F** で端的に示してください。
- **フィードバック:**
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**【計算問題の場合】 (例:第 1 問設問 1、第 2 問、第 3 問)**
- **① 計算結果の正誤:**
最終的な数値、単位(円、千円、基など)、端数処理(切り上げ、四捨五入など)は設問要求通りで、模範解答と一致しているか。
- **② 計算過程(プロセス)の評価:**
- **【計算過程の記載がある場合】**
- **立式・アプローチ:** 問題を解くための基本的な考え方(CVP、NPV、LP、財務指標の定義など)は正しいか。
- **数値のピックアップ:** 与件文や資料から、計算に必要な数値を正しく(漏れなく、間違えなく)引用できているか。(例: NPV 計算での機会費用、運転資本、設備売却益の税金計算など)
- **計算の正確性:** 途中の計算ステップにミスはないか。
- **【計算過程が `スキップ` の場合】**
- **(a) 計算結果の正誤に基づき、本項目も評価します。**
- (a) が正解の場合:計算過程も正しかったものとみなし、高い評価(A または B 評価相当)とします。
- (a) が不正解の場合:計算過程のいずれかのステップ(立式、数値ピックアップ、計算正確性)に誤りがあったものとみなし、評価を下げます。この場合、具体的な誤り箇所の特定は行いませんが、推定される原因を「④ 改善提案」で指摘します。
- **③ 指標選択の妥当性 (第 1 問設問 1 のみ):**
模範解答と異なる指標を選択した場合、その指標が D 社の特徴(優れている点・劣っている点)を示す上で妥当か、与件文から根拠を見いだせるか(別解として成立するか)を評価する。
- **④ 改善提案(失点・部分点分析):**
- **失点箇所:** どこで間違えたか(数値の誤用、立式の誤り、計算ミス、端数処理ミスなど)を具体的に指摘する。(※ `スキップ` されていて結果が不正解の場合、推定される誤りの原因を指摘します)
- **部分点獲得可能性:** 「ここまでは合っているので、配点〇点中 △ 点は期待できる」という視点で評価する。(※ `スキップ` の場合は適用されません)
- **改善点:** 次に同じミスをしないために、どの数値に着目すべきか、どの公式を確認すべきかを具体的にアドバイスする。
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**【記述問題の場合】 (例:第 1 問設問 2、第 4 問)**
- **① 設問解釈と方向性:**
設問の意図(問われていること)を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。
- **② 与件文・財務諸表の活用:**
解答の根拠として、与件文中のどの記述(SWOT)や、どの財務数値(計算した指標など)を効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。
- **③ 知識と論理構成:**
診断士としての財務・会計知識を適切に応用できているか。「A(財務状況)だから B(助言)」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。
- **④ 具体性と表現:**
抽象論に終始せず、D 社の状況に合わせた具体的な記述ができているか。設問の字数制限(例: 80 字)の中で、要点を簡潔にまとめられているか。
- **⑤ 改善提案:**
どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、**「どの与件文(または財務指標)のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。
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**2. 総評**
- **総合評価:** 全ての設問を考慮した最終評価を **A / B / C / D / E / F** で示してください。
- **全体を通しての強み:** 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点(計算の正確性、与件文の読み取り、論理構成など)を挙げてください。
- **全体を通しての課題:** 合格のために、最も優先的に改善すべき点(ケアレスミス、時間配分、特定の分野の知識不足など)を指摘してください。
- **合格に向けたアドバイス:** 今後の学習方針について、特に事例 Ⅳ の学習(計算練習、過去問演習の方法など)について具体的なアドバイスをお願いします。
# あなたの回答
**スキップ機能について**
計算過程の記載が求められる設問((b)計算過程)において、「スキップ」と記載した場合、(a) の計算結果(解答)のみをもって採点されます。計算結果が正しければ計算過程も正しかったものとみなし、結果が誤っていれば過程も誤っていたものとして評価されます(部分点評価は行われません)。
## 第 1 問(配点 40 点)
### (設問 1)
(単位:千円)
| | (a) 初年度 | (b) 2 年目 |
| :------------------ | :--------- | :--------- |
| 売上高 | | |
| 売上原価 | | |
| 売上総利益 | | |
| 販売費・一般管理費 | | |
| **営業利益 (損失)** | | |
| 営業外収益 | | |
| 営業外費用 | | |
| **経常利益 (損失)** | | |
### (設問 2)
#### ①:経営指標
- (a) 指標の名称:
- (b) 指標の数値:
#### ②:経営指標
- (a) 指標の名称:
- (b) 指標の数値:
#### ③:経営指標
- (a) 指標の名称:
- (b) 指標の数値:
### (設問 3)
## 第 2 問(配点 30 点)
### (設問 1)
### (設問 2)
## 第 3 問(配点 30 点)
### (設問 1)
### (設問 2)(200 字以内)