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平成 26 年度(2014 年度)事例 Ⅳ
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# 平成 26 年度(2014 年度)事例 Ⅳ
## 与件文
D 社は創業が 1950 年代で、資本金 2,000 万円、正規従業員 45 名、売上高 10 億円の、県内に 18 店舗を展開する老舗喫茶店である。1960 年代に現在の会長が考案した軽食メニュー、デザート類が人気を博し、現在の多店舗展開の礎を築いた。
同時期にセントラルキッチン方式を導入し、自社工場を保有している。全国チェーンの企業が続々と県内に進出しているが、古くからの顧客を中心に D 社の味を求めるファンは多く、県内での知名度は高い。
店舗の多くは県内の主要な駅前、商店街の物件に出店するスタイルを続けてきた。これら古くからの店舗のいくつかは店舗面積も狭く、地方都市の中心市街地の衰退にも重なり、客足が落ちてきているのが悩みである。その一方で、近年はオフィス街のテナントや郊外のロードサイド店舗を実験的に開店し、成功を収めている。
しかし、外食産業を取り巻く環境は、原油価格高騰によるエネルギーコストの上昇や、消費税増税等の影響、少子高齢化による市場規模の縮小やコンビニエンスストアとの競争激化による売上高減少のリスクにさらされている。以前、原価低減を目的にコーヒー豆の現地買い付けを試みたものの、為替差損を出したことがあり、ここ数年は専門の商社から原料を購入しているが、現地買い付けを再開しようと現社長は考えている。
そのような状況下において、最近、インターネットのブログなどで D 社の軽食メニューやデザートのいくつかが地元の B 級グルメとして注目を集めるようになり、その後メディアで取り上げられる事例が増えてきた。これを好機ととらえ、現社長が中心となり、工場の一部のラインを利用してお土産として商品化することに成功した。現在、軽食 2 種、デザート 1 種の 3 商品が人気で、駅の土産物店や、道の駅、高速道路のパーキングエリア、サービスエリアのお土産コーナーで取り扱われるようになり、収益の柱の 1 つとして見込んでいる。しかし、工場の生産能力にも限界があり、需要に合わせた商品群の整理も必要な時期に来ていると現社長は考えている。
お土産としての商品化は収益の柱として期待されているだけではなく、県外客への D 社の認知度を高め、実際の店舗での飲食につなげたいと考えている。こうした新しい顧客創出のため、先に述べたロードサイド店舗の拡充や既存店の時代に合わせた改装など、新しい出店形態を模索している。
D 社および同業他社の平成 25 年度(平成 25 年 4 月 1 日~平成 26 年 3 月 31 日)の貸借対照表、損益計算書は、以下のとおりである。
### 貸借対照表
平成 26 年 3 月 31 日
(単位:千円)
| 資産の部 | | | 負債の部 | | |
| :------------- | :-------- | :-------- | :------------------- | :-------- | :-------- |
| | D 社 | 同業他社 | | D 社 | 同業他社 |
| 流動資産 | 200,000 | 400,000 | 流動負債 | 400,000 | 460,000 |
| 現金及び預金 | 100,000 | 250,000 | 支払手形・買掛金 | 80,000 | 120,000 |
| 棚卸資産 | 20,000 | 50,000 | 短期借入金 | 150,000 | 90,000 |
| その他 | 80,000 | 100,000 | 未払金 | 70,000 | 100,000 |
| 固定資産 | 1,000,000 | 1,050,000 | その他 | 100,000 | 150,000 |
| 有形固定資産 | 900,000 | 900,000 | 固定負債 | 600,000 | 480,000 |
| 建物・構築物 | 450,000 | 400,000 | 長期借入金 | 450,000 | 280,000 |
| 機械及び装置 | 100,000 | 150,000 | 未払金 | 50,000 | 80,000 |
| 車両・工具 | 50,000 | 80,000 | その他 | 100,000 | 120,000 |
| 土地 | 250,000 | 200,000 | **負債合計** | 1,000,000 | 940,000 |
| その他 | 50,000 | 70,000 | | | |
| 無形固定資産 | 30,000 | 30,000 | **資本金** | 20,000 | 100,000 |
| その他固定資産 | 70,000 | 120,000 | **資本剰余金** | 80,000 | 160,000 |
| | | | **利益剰余金** | 100,000 | 250,000 |
| | | | **純資産合計** | 200,000 | 510,000 |
| **資産合計** | 1,200,000 | 1,450,000 | **負債・純資産合計** | 1,200,000 | 1,450,000 |
### 損益計算書
平成 25 年 4 月 1 日~平成 26 年 3 月 31 日
(単位:千円)
| | D 社 | 同業他社 |
| :----------------- | :-------- | :-------- |
| 売上高 | 1,000,000 | 1,500,000 |
| 売上原価 | 280,000 | 450,000 |
| 売上総利益 | 720,000 | 1,050,000 |
| 販売費・一般管理費 | 650,000 | 975,000 |
| 営業利益 | 70,000 | 75,000 |
| 営業外収益 | 4,000 | 10,000 |
| 営業外費用 | 24,000 | 15,000 |
| 経常利益 | 50,000 | 70,000 |
| 法人税 | 20,000 | 28,000 |
| 当期純利益 | 30,000 | 42,000 |
## 第 1 問(配点 24 点)
D 社の貸借対照表、損益計算書と同業他社の貸借対照表、損益計算書を比較して、D 社が優れていると判断できる財務指標を 1 つ、財務上の課題となる財務指標を 2 つ、名称(a)とその数値(b)(単位を明記し、小数点第 3 位を四捨五入すること)を示し、そこから読み取れる D 社の財政状態および経営成績(c)についてそれぞれ 30 字以内で述べよ。
なお、優れている指標については ① の欄に、課題となる指標については ②、③ の欄に、それぞれ記入すること。
## 第 2 問(配点 30 点)
D 社の店舗の平成 26 年度における予想損益計算書は以下のとおりである。売上原価は売上高に比例している。設備備品の償却は定額法(取得原価 1,000 万円、残存価額ゼロ、耐用年数 5 年)で行われており、平成 27 年度期末で償却が終了し、改装のため取り替える予定である。しかし、この店舗の最寄駅では、平成 27 年 4 月 1 日の完成に向けて再開発が進んでおり、これに合わせて改装を早める提案がある。
ある店舗の平成 26 年度予想損益計算書
(単位:千円)
| | |
| :----------------- | :----- |
| 売上高 | 42,000 |
| 売上原価 | 10,500 |
| 売上総利益 | 31,500 |
| 販売費・一般管理費 | 31,000 |
| 人件費 | 19,500 |
| 店舗賃借料 | 3,000 |
| その他経費 | 6,500 |
| 減価償却費 | 2,000 |
| 営業利益 | 500 |
改装する場合、再開発イメージに合わせた改装やインターネット環境などの充実のため、1,500 万円の設備投資額が見込まれている。設備投資は期間 5 年の定額法(残存価額ゼロ)で償却される予定である。改装した場合は、販売費・一般管理費のうちその他経費が、平成 26 年度よりも 10%増加すると見込まれている。
平成 26 年度期末に改装した場合、駅前の再開発との相乗効果により今後 5 年間の売上は平成 26 年度よりも 10%増加すると見込まれている。一方、改装を平成 27 年度期末に行う場合、相乗効果が得られないため、平成 27 年度の売上は平成 26 年度より 5%増加し、平成 28 年度以降の 4 年間は平成 26 年度より 10%の増加が見込まれている。
なお、再開発に合わせた改装を行う場合、現在の設備備品は平成 26 年度期末の帳簿価額で翌年度期首に除却されるものとする。
下記の設問に答えよ。
### (設問 1)
平成 26 年度期末に改装した場合(a)と、平成 27 年度期末に改装した場合(b)について、それぞれの平成 27 年度の予想税引後キャッシュフローを求めよ。ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は 40%とする。
### (設問 2)
平成 27 年度から平成 31 年度までの 5 年間における予想税引後キャッシュフローの正味現在価値を計算し、駅前の再開発完成に合わせて平成 26 年度期末に改装するか、予定どおり平成 27 年度期末の償却が終わるのを待ち平成 27 年度期末に改装するかを判断せよ。
ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は 40%、資本コストは 5%とする(計算には以下に示す現価係数を用いよ)。
現価係数表
| 年 | |
| :-- | :--- |
| 1 | 0.95 |
| 2 | 0.91 |
| 3 | 0.86 |
| 4 | 0.82 |
| 5 | 0.78 |
## 第 3 問(配点 30 点)
D 社のセントラルキッチン部門における、人気商品 X, Y, Z のロット単位当たり原価情報等は以下の資料のとおりである。生産はロット単位で行われている。生産したものはすべて販売可能であり、期首・期末の仕掛品などはないものとする。
下記の設問に答えよ。
資料
| | X | Y | Z |
| :----------- | :------------ | :------------ | :------------ |
| 販売単価 | 5,300 円 | 5,000 円 | 5,500 円 |
| 変動費 | 1,500 円 | 1,400 円 | 1,650 円 |
| 直接作業時間 | 0.4 時間 | 0.6 時間 | 0.5 時間 |
| 個別固定費 | 18,000,000 円 | 17,000,000 円 | 17,000,000 円 |
| 共通固定費 | 15,000,000 円 |
### (設問 1)
現状における X, Y, Z それぞれの限界利益率を求めよ(単位を明記し、小数点第 3 位を四捨五入すること)。
### (設問 2)
平成 27 年度の需要予測が X, Y, Z の順で、10,000、8,000、4,000(それぞれロット数)と予想されている。平成 27 年度の工場における最大直接作業時間が年間 9,600 時間とした時、営業利益を最大化する X, Y, Z の生産量の構成比と、その求め方を述べよ。
### (設問 3)
設問 2 の条件に加え、商品 X と Z に販売促進費として、それぞれ 50 万円を追加すると、平成 27 年度の需要は X がさらに 10%増加、Z が 25%増加するとの予測に基づく提案がある。この提案を受け入れた場合の最適な X, Y, Z の生産量の構成比を求め(a)、この提案に対する意見を述べよ(b)。
## 第 4 問(配点 16 点)
D 社では、再度、コーヒー豆を直接買い付ける可能性を探ることにした。しかし、以前のような為替差損を計上する恐れがあるため、この為替リスクを軽減する手段の検討に入った。為替リスクを軽減する手段を 2 つ挙げ(a)、それぞれの手段を用いた際、円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)(b)について述べよ。
# 平成 26 年度(2014 年度)事例 Ⅳ 解答解説
## 第 1 問(配点 24 点)
#### ①:優れている指標
- (a) **売上高総利益率**
- (b) **72.00 (%)** (計算過程:720,000 ÷ 1,000,000 × 100 = 72.00、同業他社:70.00%)
- (c) 財政状態および経営成績(26 字):**効率的な生産体制により、高い粗利益率を確保している。**
- 解説:**セントラルキッチン方式の導入**により、食材の集中仕入れや効率的な原価管理が実現している。これにより、**原価率を低く抑え、高い付加価値を確保している**。
#### ②:課題となる指標 1
- (a) **有形固定資産回転率**
- (b) **1.11 (回)** (計算過程:1,000,000 ÷ 900,000 = 1.111...、同業他社:1.67 回)
- (c) 財政状態および経営成績(30 字):**店舗等の有形固定資産を売上に有効活用できていない状況にある。**
- 解説:店舗や工場設備などの**有形固定資産が過大**で、売上に十分結びついていない。特に、与件文にある**客足の落ちている既存店舗**の存在が資産効率を低下させている。
#### ③:課題となる指標 2
- (a) **自己資本比率**
- (b) **16.67 (%)** (計算過程:200,000 ÷ 1,200,000 × 100 = 16.67、同業他社:35.17%)
- (c) 財政状態および経営成績(29 字):**借入金への依存度が高く、財務基盤が脆弱で安全性が低い状態。**
- 解説:**短期・長期借入金が多く、他人資本依存度が高い**。これにより財務の安全性が低く、金利上昇などの外部環境変化に対して脆弱である。
## 第 2 問(配点 30 点)
### (設問 1)
平成 26 年度期末に改装した場合(a)と、平成 27 年度期末に改装した場合(b)について、それぞれの平成 27 年度の予想税引後キャッシュフローを求めよ。ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は 40%とする。
#### (a)平成 26 年度期末に改装した場合
**5,000 千円**
#### (b)平成 27 年度期末に改装した場合
**3,245 千円**
#### 解説
キャッシュフローは以下の計算式で求める。
CF = (売上高 - 売上原価 - 販管費(減価償却費除く)) × (1 - 税率) + 減価償却費 × 税率 + 除却損 × 税率
または、
CF = 税引後利益 + 減価償却費
**前提条件**:
- 売上原価率 = 10,500 ÷ 42,000 = 25%
- 旧設備の H26 年度期末帳簿価額(除却損)= 取得原価 10,000 - 減価償却累計額 (2,000 × 4 年) = 2,000 千円
**(a) 平成 26 年度期末に改装した場合**
- 売上高 = 42,000 × 1.1 = 46,200
- 売上原価 = 46,200 × 0.25 = 11,550
- その他経費 = 6,500 × 1.1 = 7,150
- 新設備の減価償却費 = 15,000 ÷ 5 = 3,000
- 税引前利益 = 46,200 - 11,550 - (19,500 + 3,000 + 7,150) - 3,000(新償却費) - 2,000(除却損) = 0
- 税金 = 0 × 0.4 = 0
- 税引後キャッシュフロー = (46,200 - 11,550 - 29,650) × (1 - 0.4) + (3,000 + 2,000) × 0.4 = 5,000 × 0.6 + 5,000 × 0.4 = 3,000 + 2,000 = **5,000 千円**
**(b) 平成 27 年度期末に改装した場合**
- 売上高 = 42,000 × 1.05 = 44,100
- 売上原価 = 44,100 × 0.25 = 11,025
- その他経費 = 6,500 (変動なし)
- 旧設備の減価償却費 = 2,000 (最終年度)
- 税引前利益 = 44,100 - 11,025 - (19,500 + 3,000 + 6,500) - 2,000 = 2,075
- 税金 = 2,075 × 0.4 = 830
- 税引後利益 = 2,075 - 830 = 1,245
- 税引後キャッシュフロー = 税引後利益 1,245 + 減価償却費 2,000 = **3,245 千円**
---
### (設問 2)
平成 27 年度から平成 31 年度までの 5 年間における予想税引後キャッシュフローの正味現在価値を計算し、駅前の再開発完成に合わせて平成 26 年度期末に改装するか、予定どおり平成 27 年度期末の償却が終わるのを待ち平成 27 年度期末に改装するかを判断せよ。
### 回答例
**(a) 26 年度末改装の NPV は 3,904 千円、(b) 27 年度末改装の NPV は 5,326.75 千円となる。(b) > (a) のため、正味現在価値が大きい平成 27 年度期末に改装すべきである。**
---
### 解説
各案の正味現在価値(NPV)を比較し、より大きい方を選択する。(b)案では、5 年間の分析期間終了時に設備の帳簿価額が残るため、これを最終年度のキャッシュフローとして考慮する必要がある。
**【(a) 平成 26 年度期末に改装】**
この案では、設備の耐用年数(5 年)と分析期間(5 年)が一致するため、最終年度の残存価額は 0 と考える。計算は以下の通りである。
- 初期投資額 = 15,000
- CF (1 年目) = 5,000
- CF (2 ~ 5 年目) = 4,200
- NPV(a) = - 15,000 + (5,000×0.95) + 4,200× ( 0.91 + 0.86 + 0.82 + 0.78)
- = - 15,000 + 4,750 + 14154 = **3,904 千円**
**【(b) 平成 27 年度期末に改装】**
この案では、分析期間終了時点(平成 31 年度末)で、設備は 4 年間しか使用されていない。そのため、**1 年分の帳簿価額が残存価額として最終年度のキャッシュフローに加算される。**
- 初期投資額 = 15,000 (1 年後)
- CF (1 年目) = 3,245
- CF (2 ~ 5 年目) = 4,200
- **最終年度(5 年目)のターミナルキャッシュフロー**:
- 残存簿価 = 取得原価 15,000 - 減価償却費 (3,000 × 4 年) = **3,000 千円**
- (売却を簿価で行うと仮定するため売却損益は発生せず、税効果はない)
- NPV(b) の計算:
- NPV(b) = - (投資額 × 0.95) + (CF1 年目 × 0.95) + CF2-5 年目 × ( 0.91 + 0.86 + 0.82 + 0.78) + 残存価額 × 0.78
- = - (15,000 × 0.95) + (3,245 × 0.95) + 4,200 × ( 0.91 + 0.86 + 0.82 + 0.78) + 3,000 × 0.78
- = - 14,250 + 3,082.75 + 14154 + 2340 = **5,326.75 千円**
**判断**:
NPV(a) 3,904 千円 < NPV(b) 5,326.75 千円。よって、NPV が大きい(b)案、つまり**平成 27 年度期末に改装する案**を採用すべきである。
## 第 3 問(配点 30 点)
### (設問 1)
現状における X, Y, Z それぞれの限界利益率を求めよ(単位を明記し、小数点第 3 位を四捨五入すること)。
### 回答例
- **X: 71.7 %**
- **Y: 72.0 %**
- **Z: 70.0 %**
#### 解説
限界利益および限界利益率は以下の計算式で求める。
- 限界利益 = 販売単価 - 変動費
- 限界利益率 = (限界利益 ÷ 販売単価) × 100
- **X**:
- 限界利益 = 5,300 - 1,500 = 3,800 円
- 限界利益率 = 3,800 ÷ 5,300 ≒ 0.7169 → **71.7 %**
- **Y**:
- 限界利益 = 5,000 - 1,400 = 3,600 円
- 限界利益率 = 3,600 ÷ 5,000 = 0.72 → **72.0 %**
- **Z**:
- 限界利益 = 5,500 - 1,650 = 3,850 円
- 限界利益率 = 3,850 ÷ 5,500 = 0.7 → **70.0 %**
---
### (設問 2)
平成 27 年度の需要予測が X, Y, Z の順で、10,000、8,000、4,000(それぞれロット数)と予想されている。平成 27 年度の工場における最大直接作業時間が年間 9,600 時間とした時、営業利益を最大化する X, Y, Z の生産量の構成比と、その求め方を述べよ。
#### (a) X, Y, Z の生産量の構成比
**X:10000、Y:8000、Z:0**
#### (b) 求め方
**製品 Z を 4,000 ロット生産しても個別固定費を回収できず赤字となるため生産を中止する。次に、残った X と Y を時間当たり限界利益の高い順に、それぞれの需要上限まで生産する。**
---
### 解説
営業利益の最大化を目指すには、2 段階のステップで意思決定を行う必要がある。
**ステップ 1:製品ラインの採算性分析(セグメント利益分析)**
まず、希少な生産時間(直接作業時間)を配分する前に、各製品がそれ自身の個別固定費を回収できるかを確認する。需要予測数量を生産した場合の、製品ごとの限界利益合計と個別固定費を比較する。
- **X の採算性**: (限界利益 3,800 円 × 10,000 ロット) - 個別固定費 18,000,000 円 = **+20,000,000 円**
- **Y の採算性**: (限界利益 3,600 円 × 8,000 ロット) - 個別固定費 17,000,000 円 = **+11,800,000 円**
- **Z の採算性**: (限界利益 3,850 円 × 4,000 ロット) - 個別固定費 17,000,000 円 = **-1,600,000 円**
この分析により、**製品 Z は需要を全て満たしても 160 万円の赤字**となることが判明する。したがって、Z の生産は中止すべきである。
**ステップ 2:制約条件下での最適プロダクトミックス**
Z の生産を中止し、年間最大直接作業時間 9,600 時間を、採算の取れる X と Y に割り振る。時間当たり限界利益は X (9,500 円/h) > Y (6,000 円/h) であるため、X を優先して生産する。
1. **X を生産**: 需要上限の**10,000 ロット**を生産する。
- 所要時間: 10,000 ロット × 0.4 時間 = 4,000 時間
- 残り時間: 9,600 時間 - 4,000 時間 = 5,600 時間
2. **Y を生産**: 残りの 5,600 時間で Y を生産する。
- 生産可能量は 5,600 時間 ÷ 0.6 時間/ロット = 9,333 ロットであり、Y の需要 8,000 ロットを十分に満たせる。そのため、需要上限の**8,000 ロット**を生産する。
**最適生産量と構成比**:
以上の結果から、最適な生産量は **X = 10,000 ロット**、**Y = 8,000 ロット**、**Z = 0 ロット** となる。
よって、生産量の構成比は **10000:8000:0** である。
---
### (設問 3)
設問 2 の条件に加え、商品 X と Z に販売促進費として、それぞれ 50 万円を追加すると、平成 27 年度の需要は X がさらに 10%増加、Z が 25%増加するとの予測に基づく提案がある。この提案を受け入れた場合の最適な X, Y, Z の生産量の構成比を求め(a)、この提案に対する意見を述べよ(b)。
#### (a) X, Y, Z の生産量の構成比
**X:11000、Y:0、Z:5000**
#### (b) この提案に対する意見
**この提案は採用すべきではない。理由は、提案を受け入れた場合の営業利益が 10,050,000 円となり、現状(16,800,000 円)よりも大幅に減少するためである。**
---
### 解説
この問題は単に時間当たり限界利益だけで判断するのではなく、提案を受け入れた結果、各製品の採算性がどう変化するかを検証する必要がある。
**(a) 最適な生産量の構成比の求め方**
1. **販促後の需要と時間当たり限界利益の確認**
- 販促後の需要: X=11,000, Y=8,000, Z=5,000
- 時間当たり限界利益の優先順位: ①X (9,500 円/h) > ②Z (7,700 円/h) > ③Y (6,000 円/h)
2. **制約時間(9,600h)の一次配分**
- **X に配分**: 11,000 ロット × 0.4h = 4,400 時間 (残り: 5,200h)
- **Z に配分**: 5,000 ロット × 0.5h = 2,500 時間 (残り: 2,700h)
- **Y に配分**: 残り 2,700 時間で生産 → 2,700h ÷ 0.6h/ロット = 4,500 ロット
3. **配分後の採算性検証(セグメント利益分析)**
この時点で、Y の生産量は需要上限の 8,000 から 4,500 に減少している。この生産量で Y の個別固定費を回収できるか検証する。
- **Y のセグメント利益**: (限界利益 3,600 円 × 4,500 ロット) - 個別固定費 17,000,000 円 = 16,200,000 円 - 17,000,000 円 = **-800,000 円**
- Y は単体で赤字となるため、生産ラインナップから外すべきである。
4. **最終的な生産計画の策定**
Y の生産を中止し、9,600 時間を採算の取れる X と Z に再配分する。
- X の需要: 11,000 ロット (所要時間 4,400h)
- Z の需要: 5,000 ロット (所要時間 2,500h)
- 合計所要時間: 4,400h + 2,500h = 6,900h < 9,600h
- 両製品とも需要上限まで生産可能である。
- よって、最終的な生産構成比は **X:11000、Y:0、Z:5000** となる。
**(b) 提案に対する意見(営業利益の比較)**
提案の採否を判断するため、提案を受け入れない場合(設問 2 の最適解)と、受け入れた場合(上記(a)の解)の営業利益を比較する。
1. **提案を受け入れない場合(現状の最適利益)**
- 生産構成: X=10,000, Y=8,000, Z=0
- 限界利益合計: (3,800×10,000) + (3,600×8,000) = 66,800,000
- 固定費合計: (個別固定費 18M+17M) + (共通固定費 15M) = 50,000,000
- **営業利益 ①**: 66,800,000 - 50,000,000 = **16,800,000 円**
2. **提案を受け入れた場合**
- 生産構成: X=11,000, Y=0, Z=5,000
- 限界利益合計: (3,800×11,000) + (3,850×5,000) = 61,050,000
- 固定費合計: (個別固定費 18M+17M) + (共通固定費 15M) + (販促費 1M) = 51,000,000
- **営業利益 ②**: 61,050,000 - 51,000,000 = **10,050,000 円**
**結論**:
営業利益が **16,800,000 円** から **10,050,000 円** へと **6,750,000 円減少**するため、この販売促進の提案は採用すべきではない。
## 第 4 問(配点 16 点)
D 社では、再度、コーヒー豆を直接買い付ける可能性を探ることにした。しかし、以前のような為替差損を計上する恐れがあるため、この為替リスクを軽減する手段の検討に入った。為替リスクを軽減する手段を 2 つ挙げ(a)、それぞれの手段を用いた際、円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)(b)について述べよ。
#### (a)-① 手段
**為替予約**
#### (b)-① 円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)
**円安時には予約レートで決済でき為替差損を回避できる。円高時には円高の利益を享受できず機会損失となる。**
#### (a)-② 手段
**通貨オプション取引**
#### (b)-② 円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)
**円安時には権利行使で損失を限定でき、円高時には権利放棄で円高利益を享受できるが、オプション料のコストが発生する。**
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### 解説
D 社のリスクは、ドル建て等で仕入れるコーヒー豆の価格が、**円安**によって円換算で上昇すること(為替差損)である。このリスクをヘッジする代表的な手段として、為替予約と通貨オプションがある。
1. **為替予約**:
- **概要**: 将来の特定日に、あらかじめ決めた為替レートで外貨を売買する契約。
- **目的**: 支払額を事前に確定させ、為替レートの変動リスクを完全に排除する。
- **影響**:
- **円安時 (メリット)**: 市場レートよりも有利な予約レートで決済できるため、コスト増を防げる。
- **円高時 (デメリット)**: 市場レートよりも不利な予約レートで決済する義務があるため、より安く仕入れられたはずの機会(為替差益)を逃す。
2. **通貨オプション取引**:
- **概要**: 将来の特定日までに、あらかじめ決めた為替レートで外貨を買う「権利」を、オプション料(プレミアム)を支払って購入する。(今回はドルを買うのでコールオプション)
- **目的**: 為替レートの不利な変動(円安)に対する保険をかけつつ、有利な変動(円高)の利益は享受できるようにする。
- **影響**:
- **円安時 (メリット)**: 市場レートが権利行使価格よりも円安になれば、権利を行使して有利なレートでドルを調達できる。損失を権利行使価格までに限定できる。
- **円高時 (メリット/デメリット)**: 市場レートが有利(円高)な場合は、権利を放棄して市場でドルを調達できるため、円高のメリットを受けられる。ただし、最初に支払ったオプション料はコストとして発生する(デメリット)。
## AI への指示
あなたは、中小企業診断士二次試験(事例 Ⅳ:財務・会計)の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。
**評価の基本方針**
- **模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。**
- あなたの解答の評価は、第一に**与件文の記述・数値と設問要求に忠実であるか**、第二に**中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているか**を最優先の基準とします。
**【記述問題の評価方針】**
- 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その**独自の価値を積極的に評価**してください。
- 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という**視点を提供するもの**として活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。
**【計算問題の評価方針】**
- 計算問題は、**最終的な計算結果**だけでなく、そこに至る**計算過程(プロセス)**を重視して評価します。
- **【計算過程スキップの例外】**
- ただし、あなたの回答において `(b)計算過程 スキップ`(あるいは `#### (b)計算過程 スキップ` など、スキップの意図が明確な記載)がされている場合に限り、**(a) の計算結果のみを評価対象とします。**
- この場合、計算結果が正しければ計算過程も正しかったものとみなし、計算結果が間違っていれば計算過程にも誤りがあったものとして評価します(詳細な部分点評価は行いません)。
- **【計算過程の記載がある場合】**
- たとえ最終的な数値が間違っていても、計算の**基本的な考え方**、**立式**、**使用した数値(与件文からのピックアップ)**が正しければ、**部分点を加点**する視点で評価します。
- **【共通事項】**
- **第 1 問設問 1**の財務分析指標の選択のように、**複数の正解(別解)が想定される場合**は、模範解答と異なっていても、与件文から妥当性が読み取れれば正解として評価します。
- **CVP**や**NPV**など、解法がほぼ一意に決まる問題は、**標準的な解法ステップ**を踏めているかを確認します。(※スキップの場合は結果から推定します)
上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、**60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点**で私の解答を添削してください。**加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイント**をバランス良く指摘してください。
評価は点数ではなく、下記の**ABCDEF 評価基準**に沿って行ってください。
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### ABCDEF 評価基準
- **A 評価 (完璧 / 80 点以上):** 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成・計算過程が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
- **B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点):** 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成・計算過程が明快な、上位合格答案レベル。
- **C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点):** 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻や計算ミスがない。安定して合格点をクリアできるレベル。
- **D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点):** 解答の方向性は合っているが、根拠の不足やケアレスミスが散見される。合否が分かれるレベル。
- **E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点):** 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。計算の前提条件を誤解している。合格には改善が必要なレベル。
- **F 評価 (不合格レベル / 49 点以下):** 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。
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### 入力情報
与件文、設問文、出題の趣旨、解説、あなたの回答を参照してください。
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### 出力項目
以下の形式で、詳細なフィードバックをお願いします。
冒頭で `ABCDEF 評価基準`の定義を説明します。
**1. 設問ごとの添削**
**模範解答(比較参考用)**
`回答例と解説`の回答例(計算問題の場合は(a)解答欄と(b)計算過程)を出力してください。
**あなたの回答**
模範回答との比較用にあなたの回答を掲載してください。
- **評価:** この設問の評価を **A / B / C / D / E / F** で端的に示してください。
- **フィードバック:**
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**【計算問題の場合】 (例:第 1 問設問 1、第 2 問、第 3 問)**
- **① 計算結果の正誤:**
最終的な数値、単位(円、千円、基など)、端数処理(切り上げ、四捨五入など)は設問要求通りで、模範解答と一致しているか。
- **② 計算過程(プロセス)の評価:**
- **【計算過程の記載がある場合】**
- **立式・アプローチ:** 問題を解くための基本的な考え方(CVP、NPV、LP、財務指標の定義など)は正しいか。
- **数値のピックアップ:** 与件文や資料から、計算に必要な数値を正しく(漏れなく、間違えなく)引用できているか。(例: NPV 計算での機会費用、運転資本、設備売却益の税金計算など)
- **計算の正確性:** 途中の計算ステップにミスはないか。
- **【計算過程が `スキップ` の場合】**
- **(a) 計算結果の正誤に基づき、本項目も評価します。**
- (a) が正解の場合:計算過程も正しかったものとみなし、高い評価(A または B 評価相当)とします。
- (a) が不正解の場合:計算過程のいずれかのステップ(立式、数値ピックアップ、計算正確性)に誤りがあったものとみなし、評価を下げます。この場合、具体的な誤り箇所の特定は行いませんが、推定される原因を「④ 改善提案」で指摘します。
- **③ 指標選択の妥当性 (第 1 問設問 1 のみ):**
模範解答と異なる指標を選択した場合、その指標が D 社の特徴(優れている点・劣っている点)を示す上で妥当か、与件文から根拠を見いだせるか(別解として成立するか)を評価する。
- **④ 改善提案(失点・部分点分析):**
- **失点箇所:** どこで間違えたか(数値の誤用、立式の誤り、計算ミス、端数処理ミスなど)を具体的に指摘する。(※ `スキップ` されていて結果が不正解の場合、推定される誤りの原因を指摘します)
- **部分点獲得可能性:** 「ここまでは合っているので、配点〇点中 △ 点は期待できる」という視点で評価する。(※ `スキップ` の場合は適用されません)
- **改善点:** 次に同じミスをしないために、どの数値に着目すべきか、どの公式を確認すべきかを具体的にアドバイスする。
---
**【記述問題の場合】 (例:第 1 問設問 2、第 4 問)**
- **① 設問解釈と方向性:**
設問の意図(問われていること)を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。
- **② 与件文・財務諸表の活用:**
解答の根拠として、与件文中のどの記述(SWOT)や、どの財務数値(計算した指標など)を効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。
- **③ 知識と論理構成:**
診断士としての財務・会計知識を適切に応用できているか。「A(財務状況)だから B(助言)」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。
- **④ 具体性と表現:**
抽象論に終始せず、D 社の状況に合わせた具体的な記述ができているか。設問の字数制限(例: 80 字)の中で、要点を簡潔にまとめられているか。
- **⑤ 改善提案:**
どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、**「どの与件文(または財務指標)のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。
---
**2. 総評**
- **総合評価:** 全ての設問を考慮した最終評価を **A / B / C / D / E / F** で示してください。
- **全体を通しての強み:** 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点(計算の正確性、与件文の読み取り、論理構成など)を挙げてください。
- **全体を通しての課題:** 合格のために、最も優先的に改善すべき点(ケアレスミス、時間配分、特定の分野の知識不足など)を指摘してください。
- **合格に向けたアドバイス:** 今後の学習方針について、特に事例 Ⅳ の学習(計算練習、過去問演習の方法など)について具体的なアドバイスをお願いします。
# あなたの回答
**スキップ機能について**
計算過程の記載が求められる設問((b)計算過程)において、「スキップ」と記載した場合、(a) の計算結果(解答)のみをもって採点されます。計算結果が正しければ計算過程も正しかったものとみなし、結果が誤っていれば過程も誤っていたものとして評価されます(部分点評価は行われません)。
## 第 1 問(配点 24 点)
### ① 優れている指標
- (a) 指標の名称:
- (b) 指標の数値:
- (c) 財政状態および経営成績(30 字以内):
### ② 課題となる指標
- (a) 指標の名称:
- (b) 指標の数値:
- (c) 財政状態および経営成績(30 字以内):
### ③ 課題となる指標
- (a) 指標の名称:
- (b) 指標の数値:
- (c) 財政状態および経営成績(30 字以内):
## 第 2 問(配点 30 点)
### (設問 1)
#### (a) 平成 26 年度期末に改装した場合
#### (b) 平成 27 年度期末に改装した場合
### (設問 2)
## 第 3 問(配点 30 点)
### (設問 1)限界利益率
-
### (設問 2)
#### (a) X, Y, Z の生産量の構成比
#### (b) 求め方
### (設問 3)
#### (a) X, Y, Z の生産量の構成比
#### (b) この提案に対する意見
## 第 4 問(配点 16 点)
#### (a)-① 手段
#### (b)-① 円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)
#### (a)-② 手段
#### (b)-② 円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)