平成 25 年度(2013 年度)事例 Ⅱ
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# 平成 25 年度(2013 年度)事例 Ⅱ
## 与件文
B 社は地方都市 X 市にある水産練物の製造小売業である(資本金 1,000 万円、従業員数パートを含め 10 名)。X 市の主な産業は機械部品の製造業、苺・筍などの農業であり、X 市は近年、苺狩りや筍掘りなどによる観光客誘致や、農産物の地域ブランドの確立に力を入れはじめている。B 社の創業は 1916 年(大正 5 年)であり、創業者は現在の社長の祖父に当たる。創業以来、現在の所在地に自社工場と工場併設の小売店舗を有している。B 社の主な取扱商品はさつまあげとかまぼこである。特に売上の中心となっているさつまあげは、他社にはない原材料配合により食感が柔らかく、顧客から高い評価を受けている。B 社のさつまあげは冷蔵で 7 日間の保存が可能であり、FAX 発注による贈答品や遠方からの取り寄せの需要も大きく、これらはさつまあげの売上の 2 割を占めている。贈答されたのをきっかけに味わいが気に入り、自ら取り寄せる顧客も多い.
かつて B 社は、長らく後継者が不在で、将来的には廃業せざるを得ない状況にあった。しかし、大都市圏でシステム・エンジニアとして働いていた次男が事業の承継を申し出、2005 年に副社長に着任したことで廃業を免れた。副社長着任後の 3 年間は、さつまあげとかまぼこの生産に関する修行の日々であった。当初は工場でパート従業員と同じ作業を担当したが、生産設備の機械化が進んでいたため、比較的速いスピードで技術を受け継ぎ、3 年が経過した 2008 年頃には生産技術を一通り修得したことを社長が認め、副社長が経営者の立場に立つこととなった.
副社長は着任後、B 社の経営に限界を感じ、早速経営刷新に取りかかり、現在の生産設備の稼働率を上げ、さらに売上拡大の方法を模索する日々が始まった。まず、副社長は主な顧客である B 社周辺の主婦達へのヒアリング調査を実施した。ヒアリングの背景には、子供の頃から商品ラインアップが全く変わっていないという危機感があった。これまでの社長の方針は「代々の味を守る」という点にあったが、この方針は生産効率化のための設備機械化の際には良い面もあったものの、味わいの変化による顧客離れを引き起こす可能性もあった。しかし、B 社では機械化後も味わいはほとんど変わらず、結果として顧客離れは発生しなかった。一方、顧客の嗜好に合った新商品の開発という観点からは、社長の方針は必ずしも良い作用を与えていなかった。実際、ヒアリング調査では、県内大手企業の競合 Z 社に比べ味の種類が少ないという意見が多く、競合 Z 社はさつまあげの具として様々な野菜・魚介類を使用しているが、B 社のラインアップは具が入っていない「プレーン」と、ニンジン・ゴボウなどを混ぜた「野菜ミックス」のみであった。新しい具を用いたさつまあげの開発は技術的には困難でなく、生産上も問題はなかったが、具体的にどのような商品とするかは試行錯誤が必要であった。開発当初、ヤーコンやズッキーニなど新種の野菜を用いた商品を試みたが、社内パート対象の試食会で相性の悪さが指摘され失敗した。転機となったのは、定期的に「野菜ミックス」を買いに来るある初老の女性が来店時に「新ゴボウが香る、初夏の野菜ミックスが 1 年のなかで一番おいしい。」と何気なく発した一言であった。副社長はこの一言を契機に、奇抜な食材を用いる開発を断念し、顧客が地域の旬を感じられる食材を使ったさつまあげの開発構想を持つに至った.
副社長は X 市内農家を対象に、例えば春から夏にかけて 3 月は筍、4 月は新生姜、5 月は新ゴボウ、6 月は大葉など旬の食材を毎月取り入れたさつまあげを販売する計画を立てた。農家には一定数買い取ることを条件に、商品の販売時期に合わせ旬の農産物を納入してもらえるよう協力を打診した。当初、成功可能性が低いと難色を示す農家もあったが、副社長は商品パッケージの工夫を提案し、地域ブランドの確立に貢献することを約束して協力を得ることに成功した。この月替わりのさつまあげは試作段階から評判が良く、市場導入後も地域住民から高い評価を受け、既存商品との同時購買や新商品を目当てにした新規顧客の獲得に成功した。また、農家からは従来の農産物販売に、新たに加工食品の原材料としての販売が加わり、トータル販売が拡大したとの感謝の声が寄せられた.
その後、副社長はかまぼこの既存販路であるスーパーマーケットでの販売拡大と、さつまあげとかまぼこの新規販路としてインターネット販売を行う自社サイトの立上げを構想するに至った。B 社では、さつまあげは自社店舗販売に限定していたが、かまぼこは自社店舗販売以外にも、県内に数十店舗を有する Y スーパーに B 社ブランドとして納品を続けてきた。副社長は Y スーパーとの関係強化のため、毎年夏休みに開催される Y スーパー主催の親子食育教室への協力依頼にも応じた。親子食育教室では社長が手作りかまぼこ講座、副社長が飾りかまぼこ講座の講師を務め、参加した母親からは「手作りを体験し、かまぼこは魚だということを再認識した。子供が魚嫌いなのでかまぼこを食べる機会を増やしたい」という声、子供達からは「飾りかまぼこをお父さんのために作ってあげたい」という声が寄せられた。さらに、Y スーパー全店舗で 8 月中の数週間、教室の様子や参加者の声、飾りかまぼこの作り方を掲載した POP が水産練物売場に掲出され、その後、Y スーパーの水産練物担当バイヤーからは POS データを用いたイベント開催および POP 掲出効果の分析結果の報告打診を受けた.
並行して、副社長はインターネット販売サイト構築の計画を開始した。元々システム・エンジニアであったため、商品情報発信と受注システムを兼ねたサイト構築自体は容易であったが、どのように受注を増やすかが課題であった. こうした新たな取り組みに関し、副社長は専門的なアドバイスを求めて中小企業診断士に相談することとした.
## 設問文
### 第 1 問(配点 20 点)
副社長着任以前の B 社は、売上拡大は見込めなかったものの、小規模企業ながら存続できた。その理由を 80 字以内で述べよ.
### 第 2 問(配点 20 点)
B 社のさつまあげ新商品開発において農商工の連携が実現した要因の一つとして、副社長が農家に対し地域ブランドの確立につながるパッケージ・デザインの工夫を提案したことがある。地域ブランドの価値を高め、かつ原材料である農産物の質の高さを訴求するため、パッケージはどのように工夫すべきか、80 字以内で述べよ。ただし、パッケージは筒状のビニール素材で、小判型のさつまあげを 12 枚程度重ねて包装するものであり、形状変更はできないが、ビニール素材表面のデザインは柔軟に変更でき、シール貼付も容易である.
### 第 3 問(配点 30 点)
次の表は、取引先に対して Y スーパーが無償公開した POS データを集計したもので、データは B 社によるイベント開催および POP 掲出を行った年の 8 月のデータと、その前年同月のデータである。表中の水産練物には、かまぼこ、さつまあげを含む揚げ物、はんぺん、ちくわが含まれる。なお、当年 8 月の販促活動は B 社によるイベント開催と POP 掲出のみで、前年 8 月には特に販促活動は実施されず、その他の環境変化もなかった。このデータを踏まえ、以下の設問に答えよ.
#### Y スーパーの全店舗実績
| | 1 店 1 日平均の客数(人) | 客単価(円) |
| ---------------------------------- | ----------------------- | ---------- |
| 当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出) | 2,510 | 2,490 |
| 前年 8 月 | 2,540 | 2,460 |
#### 1 店 1 週平均の販売実績(単位:円)
| | 水産練物全体 | かまぼこ全体 |
| ---------------------------------- | ------------ | ------------ |
| 当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出) | 535,000 | 190,000 |
| 前年 8 月 | 500,000 | 170,000 |
#### 1 店 1 週平均のかまぼこメーカー別の販売実績(単位:円)
| | B 社 | 競合 Z 社 | プライベートブランド |
| ---------------------------------- | ------ | --------- | -------------------- |
| 当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出) | 49,400 | 96,900 | 43,700 |
| 前年 8 月 | 34,850 | 96,050 | 39,100 |
##### 設問 1
かまぼこに関するイベント開催および POP 掲出が当年 8 月の B 社販売実績に与えた影響は、かまぼこカテゴリーの競争構造の変化を踏まえ、例えば B 社の販売額が前年 8 月の 34,850 円から当年 8 月に 49,400 円へ増加(約 41.6%増)した点など、具体的数値を根拠に評価できると考えられる。100 字以内で述べよ.
##### 設問 2
Y スーパーの水産練物担当バイヤーの立場からは、イベント開催と POP 掲出により、かまぼこ全体の販売が 170,000 円から 190,000 円に増加した点など、具体的な数値から効果を評価できる。100 字以内で述べよ.
### 第 4 問(配点 30 点)
#### 設問 1
B 社が計画する水産練物のインターネット販売開始により、店頭販売比率が低下し、FAX・インターネットによる通信販売比率が上昇することが予想される。この際、物流コストや在庫管理、受注処理の効率化等、通信販売特有の利益確保上の注意点を 100 字以内で述べよ.
#### 設問 2
副社長は X 市地域外の消費者をターゲットに、オフライン施策でインターネット販売の売上拡大を狙っている。具体的には、SNS やオンライン広告と連動したリアルイベントの開催、口コミ促進キャンペーンなどが有効と考えられる。80 字以内で助言内容を述べよ.
## 出題の趣旨
### 第 1 問(配点 20 点)
副社長着任以前の B 社が、小規模企業でありながら継続的な顧客の維持に成功してきた複数の要因を整理・分析する能力を問う問題である
### 第 2 問(配点 20 点)
B 社新商品のパッケージとシールを有効に活用し、X 市の地域ブランド価値の向上および原材料農産物の高品質訴求を実現するための助言能力を問う問題である。
### 第 3 問(配点 30 点)
#### 設問 1
Y スーパーの POS データを分析し、これらの数値に基づき B 社から見たブランドレベルのイベント・POP 効果を評価する能力を問う問題である。
#### 設問 2
Y スーパーの POS データを分析し、これらの数値に基づき Y スーパーから見た部門・カテゴリーレベルのイベント・POP 効果を評価する能力を問う問題である。
### 第 4 問(配点 30 点)
#### 設問 1
通信販売の比率拡大に伴う収益構造変化に関する注意点を整理し、マーケティングにおける対策を助言する能力を問う問題である。
#### 設問 2
オフラインの施策を活用し、B 社販売サイトへの誘導を実現するための助言能力を問う問題である。
## あなたの回答
### 第 1 問(配点 20 点)
### 第 2 問(配点 20 点)
### 第 3 問(配点 30 点)
#### 設問 1
#### 設問 2
### 第 4 問(配点 30 点)
#### 設問 1
#### 設問 2
## AI への指示
以下の情報に基づいて、フィードバックをお願いします。
この試験問題は成績上位 10%しか合格できないのでかなり厳しく指摘して欲しいです。
1. **模範解答**
各設問に対して与件文、設問文、出題の趣旨、経営学の知識に基づき模範解答してください。
2. **フィードバック**
回答が与件文、設問文、出題の趣旨、経営学の知識に沿っているかどうか指摘してください。
与件文の単語や経営学の知識を列挙しただけで因果関係が成立していない場合や抽象的な回答があった場合は指摘してください。
3. **改善点**
どのように回答を改善すればよいか、具体的な提案をしてください。