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令和 7 年度(2025 年度)事例 Ⅳ 解答解説
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第 1 問 (配点 25 点)
(設問 1)
①:優れている指標
- (a) 自己資本比率
- (b) 82.13 (%) (計算過程: 3,548 ÷ 4,320 × 100 = 82.129...、同業他社: 65.88%)
- 解説:外部借入依存度が低く、財務の安全性が非常に高い。今後の設備投資や新商品開発においても、安定した資金調達が可能である。
②:劣っている指標 1
- (a) 売上高総利益率
- (b) 35.85 (%) (計算過程: 1,069 ÷ 2,982 × 100 = 35.848...、同業他社:62.44%)
- 解説:自社生産・高品質仏壇にこだわるため原価率が高く、また原材料高騰や職人コストを十分に価格へ転嫁できていないと考えられる。 さらに、海外生産品との価格競争も利益率低下の要因となっている。
③:劣っている指標 2
- (a) 有形固定資産回転率
- (b) 1.85 (回) (計算過程: 2,982 ÷ 1,612 = 1.849...、同業他社:11.79 回)
- 解説:有形固定資産が多く、伝統工芸に依存した労働集約型の製造構造が背景にある。直営店舗の保有も総資産の増大につながっており、販売効率の改善や機械化による生産性向上が求められる。
【別解】
①:優れている指標(別解)
(a) 流動比率
(b) 283.67 (%) (計算過程: 2,119 ÷ 747 × 100 = 283.668...、同業他社:159.47%)
- 解説:短期的な支払い能力が非常に高いことを示している。
(a) 当座比率
(b) 190.09 (%) (計算過程: (2,119 - 699) ÷ 747 × 100 = 190.093...、同業他社:75.93%)
- 解説:短期的な支払い能力が非常に高いことを示している。
②:劣っている指標(別解)
(a) 総資本経常利益率 (ROA)
(b) 2.08 (%) (計算過程: 90 ÷ 4,320 × 100 = 2.083...、同業他社:9.08%)
- 解説:売上高総利益率の低さと有形固定資産回転率の低さにより、資本全体の収益性が低いことを示している。
(a) 総資本回転率
(b) 0.69 (回) (計算過程: 2,982 ÷ 4,320 = 0.690...、同業他社:1.18 回)
- 解説:資本を効率よく売上に結び付けられていないことを示している。
【補足:売上高営業利益率を採用しない理由】
一見、営業利益率(1.51%)も低く見えるが、これは売上高総利益率が低いことに起因するものである。
一方で、D 社の 販管費率は 34.33%(= 1,024 ÷ 2,982) と、同業他社の 約 54.9%(= 3,895 ÷ 7,100) よりも大幅に低い。
したがって、D 社は販管費を適切に抑制できており、営業利益率の低さは販管費の問題ではなく、原価構造の重さに起因している。
このため、営業利益率を「劣っている指標」として採用するのは妥当ではない。
(設問 2)
D 社が同業他社と比べて劣っている点について、財務指標から読み取れる経営戦略上の違いを指摘しながら、その要因を 80 字以内で述べよ。
回答例 (78 字)
他社は仕入販売中心で設備を持たず高利益率と推測される。D 社は職人による自社生産戦略で多くの有形固定資産を保有し、売上低迷と原材料高騰で収益性も効率性も低い。
解説
問題文の該当箇所: D 社および同業他社の財務諸表(特に売上高、売上原価、有形固定資産)。与件文の「自社に抱える職人の手による伝統的な工芸技術を活かした自社生産」「職人による手仕事」「原材料価格も高騰」「伝統的な大型仏壇の売れ行きが低下」「海外生産による低価格仏壇の販売」という記述。
答案作成の根拠: 設問 1 で取り上げた劣っている 2 つの指標(売上高総利益率、有形固定資産回転率)と、与件文の記述および財務諸表の数値を統合し、D 社の経営戦略上の弱点を説明する。
- 経営戦略の違い:
- D 社: 「職人による自社生産」戦略。これを裏付けるように、有形固定資産(特に機械及び装置 284 百万円)を多く保有(合計 1,612 百万円)。
- 同業他社: 有形固定資産(特に機械及び装置 2 百万円)が極端に少ない一方、売上高総利益率 (62.44%) と有形固定資産回転率 (11.79 回) が非常に高い。与件文の「海外生産」の記述からも、ファブレスや仕入販売中心の戦略と推測される。
- 劣っている要因(効率性): D 社は「自社生産」のために多くの設備を保有しているが、「売れ行き低下」により売上高が伸び悩んでいる。その結果、有形固定資産回転率 (1.85 回) が、設備を圧縮している同業他社 (11.79 回) と比べて著しく低く、設備効率が悪い。
- 劣っている要因(収益性): D 社は「職人による手仕事」や「原材料価格も高騰」により、売上原価率 (64.1%) が同業他社 (37.6%) より非常に高い。その結果、売上高総利益率 (35.85%) が同業他社 (62.44%) より著しく低く、利益率が悪い。
- まとめ: D 社は、多くの設備を要する「職人による自社生産」戦略を採っているが、「売上低迷」や「原材料高騰」により、投下した設備に見合う 売上(=設備効率・回転率) も、こだわりの製造に見合う 利益率 も確保できていない。
- 経営戦略の違い:
第 2 問 (配点 30 点)
(設問 1)
(a)解答欄
- ① 製品 X の販売数量: 480 基
- ② 製品 Y の販売数量: 720 基
- ③ 損益分岐点売上高: 691,200,000 円
(b)計算過程(答案用紙用)
- X 貢献利益= 600-230 = 370、Y 貢献利益= 560-140 = 420(単位:千円)。
- 総固定費= 45,000 + 35,000 + 400,000 = 480,000。
- ミックス(X2 + Y3)1 単位の貢献利益= 370×2 + 420×3 = 2,000。
- 損益分岐のミックス単位数= 480,000÷2,000 = 240 単位。
- 販売数量:X = 2×240 = 480 基、Y = 3×240 = 720 基
- 損益分岐点売上高= 600×480 + 560×720 = 691,200 千円(= 691,200,000 円)。
(b)計算過程(解説用)
(単位:千円)
1 基当たり貢献利益
- 製品 X: 600 (価格) - 230 (変動費) = 370
- 製品 Y: 560 (価格) - 140 (変動費) = 420
総固定費
- 45,000 (個 X) + 35,000 (個 Y) + 400,000 (共通) = 480,000
加重平均貢献利益(ミックス 1 単位あたり) 販売数量比 X : Y = 2 : 3 に基づき、「製品 X 2 基、製品 Y 3 基」を 1 ミックス単位とする。
- ミックス 1 単位の貢献利益: (370 × 2 基) + (420 × 3 基) = 740 + 1,260 = 2,000
損益分岐点におけるミックス単位数
- 総固定費 / ミックス 1 単位の貢献利益 = 480,000 / 2,000 = 240 ミックス単位
製品 X, Y の販売数量
- ① 製品 X: 2 基/単位 × 240 単位 = 480 基
- ② 製品 Y: 3 基/単位 × 240 単位 = 720 基
損益分岐点売上高
- 製品 X 売上高: 600 × 480 基 = 288,000
- 製品 Y 売上高: 560 × 720 基 = 403,200
- ③ 合計売上高: 288,000 + 403,200 = 691,200
- (円単位: 691,200,000 円)
(設問 2)
(a)解答欄
製品 Y の販売数量: 947 基
(b)計算過程(答案用紙用)
- X 次年度:変動費= 230×1.05 = 241.5 → 貢献利益= 600−241.5 = 358.5
- Y 次年度:変動費= 140×1.05 = 147 → 貢献利益= 560−147 = 413(単位:千円)
- 総固定費= 45,000 + 35,000 +(400,000×1.10)= 520,000 → 必要貢献利益= 520,000 + 50,000 = 570,000
- X500 基の貢献利益= 358.5×500 = 179,250 → Y に必要= 570,000−179,250 = 390,750
- Y 必要数量= 390,750÷413 = 946.125… → 切上げで 947 基
(b)計算過程(解説用)
(単位:千円)
次年度の変動費と貢献利益
- 製品 X 変動費: 230 × 1.05 = 241.5
- 製品 X 貢献利益: 600 - 241.5 = 358.5
- 製品 Y 変動費: 140 × 1.05 = 147
- 製品 Y 貢献利益: 560 - 147 = 413
次年度の総固定費
- 共通固定費: 400,000 × 1.10 = 440,000
- 総固定費: 45,000 (個 X) + 35,000 (個 Y) + 440,000 (共通) = 520,000
目標利益達成に必要な貢献利益総額
- 総固定費 + 目標利益 = 520,000 + 50,000 = 570,000
製品 X (500 基) による貢献利益
- 358.5 × 500 基 = 179,250
製品 Y が達成すべき貢献利益
- 570,000 - 179,250 = 390,750
製品 Y の販売数量
- 390,750 / 413 (Y 貢献利益) = 946.125...
- 小数以下を切り上げ、 947 基 となる。
(設問 3)
(a)解答欄
- ① 製品 X の販売数量: 500 基
- ② 製品 Y の販売数量: 1,500 基
- ③ 総利益額: 408,750,000 円
(b)計算過程(答案用紙用)
を製品 X の販売数量、 を製品 Y の販売数量とする。 - 単位千円:X 貢献利益= 358.5、Y 貢献利益= 503。制約:0.5
+ 0.3 ≤700、 ≤3 。 - 時間当たり貢献利益:X = 717、Y≈1,676.7 → Y 優先。
= 3 を 0.5 + 0.3 = 700 に代入 → 1.4 = 700 → = 500、 = 1,500。 - 総貢献利益= 358.5×500 + 503×1,500 = 933,750。
- 総利益= 933,750-525,000 = 408,750(= 408,750,000 円)。
(b)計算過程(解説用)
(単位:千円)
次年度(新条件)の 1 基当たり貢献利益
- 製品 X: 600 - 241.5 = 358.5 (設問 2 と同じ)
- 製品 Y: 650 (新価格) - 147 (変動費) = 503
次年度(新条件)の総固定費
- 製品 Y 個別固定費: 35,000 + 5,000 = 40,000
- 総固定費: 45,000 (個 X) + 40,000 (新個 Y) + 440,000 (共通) = 525,000
制約条件の定式化
- (1) 直接作業時間: 0.5
+ 0.3 700 - (2) 製品 X 割合:
/ ( + ) 0.25 0.75 0.25 3 - (3) 非負条件:
,
- (1) 直接作業時間: 0.5
目的関数(総利益)
総固定費は一定のため、総貢献利益
の最大化を目指す。
最適解の導出 制約資源(直接作業時間)1 時間あたりの貢献利益を比較する。
- 製品 X: 358.5 / 0.5 時間 = 717
- 製品 Y: 503 / 0.3 時間 = 1676.66... 時間当たり貢献利益は Y > X であるため、制約の範囲内で Y を最大限生産すべきである。 最適解は、制約(1)と制約(2)の許容領域の境界線の交点となる。
(制約(2))を (制約(1))に代入する。 - 0.5
+ 0.3 (3 ) = 700 - 0.5
+ 0.9 = 700 - 1.4
= 700 - ①
= 500 基 - ②
= 3 × 500 = 1,500 基
最大利益額の計算
- 総貢献利益: (358.5 × 500) + (503 × 1,500) = 179,250 + 754,500 = 933,750
- 総固定費: 525,000
- ③ 総利益額: 933,750 - 525,000 = 408,750
- (円単位: 408,750,000 円)
第 3 問 (配点 25 点)
設問 1
(a)キャッシュフロー
4,200,000 円
(b)計算過程
(単位:千円) 設備 Z の耐用年数は 4 年、残存価額ゼロの定額法で減価償却されるため、4 年後の帳簿価額は 0 となる。
- 帳簿価額: 取得原価 60,000 - 減価償却累計額 (60,000 / 4 年 × 4 年) = 0
- 売却益: 売却価額 6,000 - 帳簿価額 0 = 6,000
- 売却益に係る税金: 売却益 6,000 × 税率 30% = 1,800
- 売却によるキャッシュフロー: 売却価額 6,000 - 税金 1,800 = 4,200
したがって、4,200 千円 = 4,200,000 円 となる。
設問 2:各年末のキャッシュフロー
(a)キャッシュフロー
- 1 年目末: 10,620,000 円
- 2 年目末: 19,620,000 円
- 3 年目末: 19,620,000 円
- 4 年目末: 32,820,000 円
(b)計算過程(答案用紙用)
- OCF(営業キャッシュフロー) =〔売上 90,000-変動 36,000-現金費用 30,000-減価償却 15,000-機会費用 2,400〕×(1−0.3)+減価償却 15,000 = 19,620(千円)
- 1 年目末 NCF = OCF19,620-運転資本増加 9,000 = 10,620(千円)
- 2 年目末 NCF = OCF = 19,620(千円)
- 3 年目末 NCF = OCF = 19,620(千円)
- 4 年目末 NCF = OCF19,620 +設備売却 CF4,200 +運転資本回収 9,000 = 32,820(千円)
(b)計算過程(解説用)
(単位:千円)
各年の営業キャッシュフロー (OCF) の計算 まず、毎期一定して発生する営業キャッシュフロー (OCF) を計算する。
- 売上高: 300 千円/基 × 300 基 = 90,000
- 変動製造費: 120 千円/基 × 300 基 = 36,000
- 現金支出営業費用: 30,000
- 減価償却費: 60,000 / 4 年 = 15,000
- 機会費用(倉庫賃借料): 2,400
- 税引前利益 (EBT) = 売上高 - 変動費 - 現金費用 - 減価償却費 - 機会費用 = 90,000 - 36,000 - 30,000 - 15,000 - 2,400 = 6,600
- 税引後利益 (NI) = EBT × (1 - 税率) = 6,600 × (1 - 0.30) = 4,620
- OCF = 税引後利益 + 減価償却費 = 4,620 + 15,000 = 19,620
各年末の正味キャッシュフロー (NCF) の計算 OCF に、各年に発生する投資関連のキャッシュフロー(運転資本、設備売却)を加減算する。 問題文の「 設備 Z への初期投資以外のキャッシュフローは各年末に生じる 」との記述に基づき、運転資本の増加 (9,000) は 1 年目末に発生する支出と解釈する。
1 年目末 NCF = OCF - 運転資本増加 = 19,620 - 9,000 = 10,620 (10,620,000 円)
2 年目末 NCF = OCF = 19,620 (19,620,000 円)
3 年目末 NCF = OCF = 19,620 (19,620,000 円)
4 年目末 NCF = OCF + 設備売却 CF (設問 1) + 運転資本回収 = 19,620 + 4,200 + 9,000 = 32,820 (32,820,000 円)
設問 3
(a)採否
- 正味現在価値: 13,826,220 円
- 採否: 投資( 〇 する )
(b)計算過程(答案用紙用)
- 初期投資= 60,000(千円)。
- NCF:T1=10,620、T2=19,620、T3=19,620、T4=32,820(千円)。
- PV:10,620×0.962 = 10,216.44、19,620×0.925 = 18,148.50、19,620×0.889 = 17,442.18、32,820×0.855 = 28,061.10。
- NCF 現在価値合計= 73,868.22(千円)。
- NPV = 73,868.22−60,000 = 13,868.22(千円)= 13,868,220 円(採択)。
(b)計算過程(解説用)
正味現在価値(NPV)を計算する。(単位:千円)
初期投資額 (T=0 の CF) 問題文の指示に基づき、T=0 の支出は「設備 Z への初期投資」のみとする。
- 設備 Z 投資額 = 60,000
各年末のキャッシュフロー (NCF) 設問 2 で計算した各年末の NCF を使用する。
- T=1 NCF: 10,620
- T=2 NCF: 19,620
- T=3 NCF: 19,620
- T=4 NCF: 32,820
NPV の計算 各年末の NCF を、資本コスト 4% の複利現価係数で現在価値(T=0 の価値)に割り引き、その合計から初期投資額を差し引く。
PV (T=1): 10,620 × 0.962 = 10,216.44
PV (T=2): 19,620 × 0.925 = 18,148.50
PV (T=3): 19,620 × 0.889 = 17,442.18
PV (T=4): 32,820 × 0.855 = 28,061.10
NCF の現在価値合計 = 10,216.44 + 18,148.50 + 17,442.18 + 28,061.10 = 73,868.22
NPV = NCF の現在価値合計 - 初期投資額 = 73,868.22 - 60,000 = 13,868.22
NPV = 13,868.22 千円 = 13,868,220 円
第 4 問 (配点 25 点)
設問 1
D 社は、海外向け製品の生産ライン増設に対する資金調達手段について検討している。D 社がとるべき資金調達手段について、D 社の財務状況を踏まえながら、その理由とともに 80 字以内で助言せよ。
回答例(74 字)
長期借入金を推奨する。理由は ① 自己資本比率が 82.1%と極めて高く、借入余力が大きいため、② 負債の節税効果を活用し、資本効率の改善も期待できるため。
解説
問題文の該当箇所:
- 貸借対照表(D 社): 負債合計 772 百万円、純資産合計 3,548 百万円、資産合計 4,320 百万円
- 与件文: 「海外向け製品の生産ライン増設」
答案作成の根拠:
- 財務状況(安全性)の分析: D 社の自己資本比率を計算する。
これは同業他社 (3,967 / 6,022 65.9%) と比較しても極めて高く、財務安全性が非常に高い反面、負債を有効活用できていない(レバレッジが低い)ことを示す。 - 資金調達手段の検討: 「生産ライン増設」という設備投資は、多額の初期費用と長期の回収期間を伴う。
- 結論: D 社は負債が極端に少なく(負債比率 772 / 3,548
21.8%)、金融機関からの借入余力(デット・キャパシティ)が非常に大きい。したがって、増資(株式発行)で既に高い自己資本比率をさらに高めるより、長期借入金で資金調達し、以下のメリットを享受すべきである。 - 負債の節税効果: 支払利息は損金算入できるため、法人税負担が軽減される。
- 資本効率の改善: レバレッジを効かせることで、ROE(自己資本利益率)の向上が期待できる。
- 財務状況(安全性)の分析: D 社の自己資本比率を計算する。
使用した経営学の知識:
- 財務安全性分析: 自己資本比率、負債比率
- 資本構成 (MM 理論): 負債の節税効果
- 資本効率: ROE(自己資本利益率)、レバレッジ効果
- 資金調達: 長期適合の原則(設備投資=長期資金
長期借入金)
設問 2
D 社が新商品を EU 諸国に向けて販売する場合に直面する財務的リスクを挙げるとともに、そのリスクに対する具体的な対処について 60 字以内で述べよ。
回答例(55 字)
リスクは円高による為替差損。対処はユーロ売り為替予約やユーロプットオプションの買いで為替変動をヘッジすること。
解説
問題文の該当箇所:
- 与件文: 「海外向け高級収納家具を新たに開発し、海外に向けて販売する計画」
- 第 3 問 与件文: 「EU 諸国での市場調査」
- 設問文: 「新商品を EU 諸国に向けて販売する場合」
答案作成の根拠:
財務的リスクの特定
D 社(日本)が EU 諸国(海外)へ輸出する場合、代金決済は外貨である ユーロ(EUR) 建てとなる可能性が極めて高い。
この場合、売上を計上した時点から代金を回収して円に換金(円転)する時点までの間に為替レートが変動し、損失が発生する可能性がある。
輸出企業である D 社にとってのリスクは、自国通貨高(=円高・ユーロ安)である。円高が進行すると、受け取ったユーロを円に換金する際の手取り額が減少し、為替差損が発生する。具体的な対処(為替ヘッジ)
この為替変動リスク(円高リスク)を管理(ヘッジ)するため、回答例に示された具体的な金融派生商品(デリバティブ)を活用する。- ユーロ売り為替予約:将来受け取る予定のユーロを、現在の時点で決めたレートで「売る(=円を買う)」契約を金融機関と締結する。これにより、将来のレートがどれほど円高となっても、受取円貨額を固定でき、損失を完全に回避することが可能である。(ただし、円安となった場合の為替差益は放棄することになる。)
- ユーロプットオプションの買い:将来、ユーロを特定のレートで「売る権利(プット・オプション)」をあらかじめ購入しておく。円高(ユーロ安)が進行した場合はこの権利を行使して損失を防止し、逆に円安(ユーロ高)となった場合は権利を放棄して市場レートで換金し、為替差益を享受することができる。(ただし、この「権利」の購入にはオプション料(プレミアム)というコストが発生する。)
使用した経営学の知識:
- 国際財務: 為替変動リスク(為替リスク)、為替差損
- リスク・マネジメント: 為替ヘッジ
- デリバティブ取引: 為替予約(フォワード取引)、通貨オプション取引(プット・オプション)