Gemini 2.5 Pro による回答と解説( 平成 23 年度(2011 年度)事例 Ⅲ)
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第 1 問(配点 20 点)
設問文
C 社の創業からの事業変遷を理解した上で、生産技術面の特徴を(a)欄に、営業面での特徴を(b)欄に、40 字以内でそれぞれ述べよ.
回答例
- (a)(33 字):板金加工技術を基礎とし、顧客の要求に応える高品質な塗装仕上げ技術。
- (b)(36 字):大手メーカーへの OEM 供給が主力だが、設計事務所等へのルート営業も行う。
解説
問題文の該当箇所
- (a) 生産技術面: 「切断加工機と曲げ加工機を使用して金属パネルを加工する企業としてスタートした。」「最も苦労したのは塗装技術のレベルアップであり、外部の専門家に指導を依頼し、顧客が満足する塗装仕上げ技術の向上に努めた。」
- (b) 営業面: 「売上高の 60%は大手事務機メーカー X 社への OEM 製品」「残り 40%は自社ブランド製品『ビルトインシリーズ』」「施主や設計事務所へのカタログを用いた製品紹介により、C 社製品『ビルトインシリーズ』の採用を促し、建築工事時に工事会社と契約して納品している。」
答案作成の根拠
- (a) C 社は金属パネルの切断・曲げ加工から創業し、その後溶接、塗装と工程を拡大しました。特に塗装技術は、外部専門家の指導を受けてレベルアップし、顧客満足を得るほどの強みとなっています。したがって、板金加工技術と高品質な塗装技術が生産面の核となる特徴です。
- (b) C 社の売上の主力は X 社向けのOEM 事業であり、これは BtoB の大口取引です。一方、自社ブランドでは施主や設計事務所に直接アプローチし、工事会社と契約するルート営業を展開しています。この 2 つの異なる営業形態が特徴です。
使用した経営学の知識
- コア・コンピタンス: 企業の中核的な強みとなる技術や能力。C 社にとっての高品質な塗装技術がこれに該当します。
- 事業ポートフォリオ: 企業の事業の組み合わせ。C 社は OEM 事業と自社ブランド事業という 2 つの柱で構成されています。
- チャネル戦略: 製品やサービスを顧客に届けるための経路。C 社は OEM という間接的なチャネルと、設計事務所などへの直接的なチャネルを併用しています。
第 2 問(配点 20 点)
設問文
C 社の生産計画は計画期間中に変更されることが多い。C 社社長は、当社製品の納期に対する顧客の満足度を上げるためにも生産計画の精度を向上させたいと考えているが、そのための対応策を 200 字以内で具体的に述べよ.
回答例(164 字)
原因は ① 設計要員の業務過多による購買業務の滞り、② 外注品の納期管理不徹底、③ 部品の多品種化である。対策は、1.設計と購買の業務を分離し、購買専任担当者による外注品の納期管理を徹底する。2.設計段階で材料・購入部品の標準化と共通化を推進し、管理品目数を削減する。3.これにより外注品の納期を遵守させ、組立工程の計画変更を防止する。
解説
問題文の該当箇所
- 「設計要員が...購買業務も担当しており、業務量が非常に多いため、業務の滞りがしばしば発生している。」
- 「外注加工品は営業部の設計要員が事前に発注手配を行っているが、納期管理が十分でないため、納品遅れが発生し組立工程の生産計画変更が多発している。」
- 「デザインを優先するため製品ごとに異なるものが採用される傾向にあり、...品種が非常に多くなっている。」
答案作成の根拠 生産計画が変更される直接的な原因は「外注品の納品遅れ」です。その背景には、以下の 3 つの問題点が構造的に絡み合っています。
- 体制の問題: 設計要員が専門外の購買・外注管理業務まで兼務しており、業務過多で手が回っていない。
- 管理の問題: 専門の担当者がいないため、外注品の納期管理が機能していない。
- 設計の問題: 部品の標準化がなされておらず、多品種化しているため管理が複雑化し、納期遅延を誘発している。
これらの根本原因を解消するため、① 業務分掌の明確化(設計と購買の分離)、② 部品の標準化・共通化という具体的な対策を提示し、それがどのように納期遵守と計画精度向上に繋がるかを論理的に説明する必要があります。
使用した経営学の知識
- 生産統制: 生産計画通りに生産が進むように管理・調整する活動。納期管理は生産統制の重要な機能の一つです。
- 組織設計の原則(専門化の原則): 業務を専門性に応じて分担することで、効率とスキルを高める考え方。設計と購買の分離はこれに該当します。
- 部品標準化 (Standardization): 部品の仕様や種類を統一すること。これにより、購買管理の効率化、在庫削減、コストダウンなどの効果が期待できます。
第 3 問(配点 40 点)
設問文
C 社では自社ブランド規格品「ビルトインシリーズ」に加え、特注品の「フリーデザインシリーズ」事業を計画している.
設問 1(123 字)
「フリーデザインシリーズ」事業は、既存事業の営業先からの要望によって計画、検討されている。顧客からの要望に応えこの事業を推進するためには、C 社の営業スタイルをどのように変えるべきか 80 字以内で提案せよ.
回答例
カタログ中心の製品紹介型営業から、顧客の潜在ニーズを深くヒアリングし、オフィス空間全体をデザイン・コーディネートするソリューション提案型営業へ変革する。
解説
問題文の該当箇所
- 「『ビルトインシリーズ』の従来の営業先である施主や設計事務所からの『オフィス空間をトータルで提案し、供給してほしい』という要望に応えるもの」
- 「カタログ規格品『ビルトインシリーズ』」
答案作成の根拠 既存の「ビルトインシリーズ」は、カタログで規格品を紹介するプロダクトアウト型(モノ売り)の営業スタイルです。しかし、新事業「フリーデザインシリーズ」は、顧客の要望に応えて空間全体を提案する特注品事業です。これは、顧客の課題や潜在的なニーズを掘り起こし、解決策(ソリューション)として製品・サービスを提供するマーケットイン型(コト売り)のアプローチを必要とします。したがって、単なる製品紹介から、コンサルティング要素の強いソリューション提案型営業への変革が不可欠です。
使用した経営学の知識
- ソリューション営業: 顧客が抱える問題や課題に対し、製品やサービスを組み合わせて解決策を提供する営業手法。「モノ売り」から「コト売り」への転換を目指す際に用いられます。
- プロダクトアウトとマーケットイン: 企業側の都合(作れるもの)を優先する考え方がプロダクトアウト、顧客のニーズを起点とする考え方がマーケットインです。特注品事業はマーケットインの発想が求められます。
設問 2
「フリーデザインシリーズ」事業を成功させるため、設計面の課題と生産面の課題を 100 字以内で述べよ.
回答例(123 字)
設計面では特注品対応のための設計体制の強化と、生産面ではロット生産方式を見直し、多品種少量生産に対応できる個別生産管理体制を構築することが課題である。
解説
問題文の該当箇所
- 設計面: 「設計開発業務は営業部に所属する 2 名の設計要員が担っており、...業務量が非常に多いため、業務の滞りがしばしば発生している。」
- 生産面: 「生産工程は、...ロット生産を行っている。」
- 新事業の特性: 「特注品の自社ブランド製品『フリーデザインシリーズ』」
答案作成の根拠 「フリーデザインシリーズ」は特注品であるため、一件一件異なる仕様に対応する必要があります。
- 設計面の課題: 現状でも 2 名の設計要員は業務過多です。ここに個別対応が必要な特注品の設計業務が加わると、業務が完全に麻痺する恐れがあります。そのため、人員増強や業務効率化による設計体制の強化が急務です。
- 生産面の課題: C 社の現在の生産方式は、同じ製品をまとめて生産するロット生産です。しかし、特注品は基本的に一品ものであるため、ロット生産には馴染みません。特注品の多品種少量(あるいは個別)生産に柔軟に対応できる生産方式・管理体制への転換が不可欠です。
使用した経営学の知識
- 生産方式:
- ロット生産: ある程度の量をまとめて生産する方式。C 社の現状。
- 個別生産: 顧客の注文ごとに個別の仕様で生産する方式。「フリーデザインシリーズ」に求められる生産方式。
- 設計開発マネジメント: 新製品開発を効率的・効果的に進めるための管理手法。人員体制の構築や業務プロセスの見直しが含まれます。
- 生産方式:
第 4 問(配点 20 点)
設問文
「フリーデザインシリーズ」事業に対応するため、CAD/CAM の導入を考えているが、この CAD/CAM 化は C 社にどのようなメリットをもたらすのか 140 字以内で述べよ.
回答例(123 字)
① 特注品の設計業務が効率化され、設計者の業務負荷が軽減される。② 3 D モデル活用で顧客への提案力が向上する。③CAD と NC 加工機を CAM で連携させ、設計から製造へのリードタイム短縮、加工プログラム作成ミス削減による品質・生産性の向上が期待できる。
解説
問題文の該当箇所
- 「設計要員の業務量が非常に多いため、業務の滞りがしばしば発生している。」
- 「『フリーデザインシリーズ』事業に必要な特注品の設計業務に対応するため、CAD/CAM 化を製造部と計画中」
- 「金属パネル加工に使用する切断加工機および曲げ加工機は NC 化され、各加工機のオペレーターはデータ入力のスキルを有している。」
答案作成の根拠 CAD/CAM 導入のメリットは、C 社が抱える課題や目指す方向性に沿って具体的に記述する必要があります。
- 設計業務の効率化: CAD 導入により、手書きや 2D-CAD に比べ設計作業が大幅にスピードアップします。これは業務過多に悩む設計要員の負荷を軽減し、「フリーデザインシリーズ」の特注品設計に対応するための前提条件となります。
- 営業支援・提案力向上: 3D-CAD を使えば、完成イメージを視覚的に分かりやすく顧客に提示できます。これにより、特注品における顧客との認識齟齬を防ぎ、スムーズな合意形成を促すことで、ソリューション提案の質を高めます。
- 製造連携(CAD/CAM 連携): C 社は既に NC 加工機を保有しています。CAD で作成した設計データを CAM に直接渡して NC プログラムを自動生成することで、設計から製造までのリードタイムが短縮され、手入力によるミスもなくなります。これにより、品質と生産性が向上し、多品種少量生産への対応力が高まります。
使用した経営学の知識
- CAD (Computer-Aided Design) / CAM (Computer-Aided Manufacturing): 設計と製造をコンピュータで支援するシステム。
- CIM (Computer Integrated Manufacturing): CAD/CAM を含め、開発・生産・販売の情報を統合管理し、製造活動全体を最適化する考え方。CAD/CAM 連携はその中核的な要素です。
- コンカレント・エンジニアリング: 設計・生産などの各プロセスを同時並行的に進めることで、開発期間の短縮や品質向上を図る手法。CAD/CAM による情報連携はこれを支援します。