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平成 25 年度(2013 年度)事例 Ⅱ

与件文

B 社は地方都市 X 市にある水産練物の製造小売業である(資本金 1,000 万円、従業員数パートを含め 10 名)。X 市の主な産業は機械部品の製造業、苺・筍などの農業であり、X 市は近年、苺狩りや筍掘りなどによる観光客誘致や、農産物の地域ブランドの確立に力を入れはじめている。B 社の創業は 1916 年(大正 5 年)であり、創業者は現在の社長の祖父に当たる。創業以来、現在の所在地に自社工場と工場併設の小売店舗を有している。B 社の主な取扱商品はさつまあげとかまぼこである。特に売上の中心となっているさつまあげは、他社にはない原材料配合により食感が柔らかく、顧客から高い評価を受けている。B 社のさつまあげは冷蔵で 7 日間の保存が可能であり、FAX 発注による贈答品や遠方からの取り寄せの需要も大きく、これらはさつまあげの売上の 2 割を占めている。贈答されたのをきっかけに味わいが気に入り、自ら取り寄せる顧客も多い.

かつて B 社は、長らく後継者が不在で、将来的には廃業せざるを得ない状況にあった。しかし、大都市圏でシステム・エンジニアとして働いていた次男が事業の承継を申し出、2005 年に副社長に着任したことで廃業を免れた。副社長着任後の 3 年間は、さつまあげとかまぼこの生産に関する修行の日々であった。当初は工場でパート従業員と同じ作業を担当したが、生産設備の機械化が進んでいたため、比較的速いスピードで技術を受け継ぎ、3 年が経過した 2008 年頃には生産技術を一通り修得したことを社長が認め、副社長が経営者の立場に立つこととなった.

副社長は着任後、B 社の経営に限界を感じ、早速経営刷新に取りかかり、現在の生産設備の稼働率を上げ、さらに売上拡大の方法を模索する日々が始まった。まず、副社長は主な顧客である B 社周辺の主婦達へのヒアリング調査を実施した。ヒアリングの背景には、子供の頃から商品ラインアップが全く変わっていないという危機感があった。これまでの社長の方針は「代々の味を守る」という点にあったが、この方針は生産効率化のための設備機械化の際には良い面もあったものの、味わいの変化による顧客離れを引き起こす可能性もあった。しかし、B 社では機械化後も味わいはほとんど変わらず、結果として顧客離れは発生しなかった。一方、顧客の嗜好に合った新商品の開発という観点からは、社長の方針は必ずしも良い作用を与えていなかった。実際、ヒアリング調査では、県内大手企業の競合 Z 社に比べ味の種類が少ないという意見が多く、競合 Z 社はさつまあげの具として様々な野菜・魚介類を使用しているが、B 社のラインアップは具が入っていない「プレーン」と、ニンジン・ゴボウなどを混ぜた「野菜ミックス」のみであった。新しい具を用いたさつまあげの開発は技術的には困難でなく、生産上も問題はなかったが、具体的にどのような商品とするかは試行錯誤が必要であった。開発当初、ヤーコンやズッキーニなど新種の野菜を用いた商品を試みたが、社内パート対象の試食会で相性の悪さが指摘され失敗した。転機となったのは、定期的に「野菜ミックス」を買いに来るある初老の女性が来店時に「新ゴボウが香る、初夏の野菜ミックスが 1 年のなかで一番おいしい。」と何気なく発した一言であった。副社長はこの一言を契機に、奇抜な食材を用いる開発を断念し、顧客が地域の旬を感じられる食材を使ったさつまあげの開発構想を持つに至った.

副社長は X 市内農家を対象に、例えば春から夏にかけて 3 月は筍、4 月は新生姜、5 月は新ゴボウ、6 月は大葉など旬の食材を毎月取り入れたさつまあげを販売する計画を立てた。農家には一定数買い取ることを条件に、商品の販売時期に合わせ旬の農産物を納入してもらえるよう協力を打診した。当初、成功可能性が低いと難色を示す農家もあったが、副社長は商品パッケージの工夫を提案し、地域ブランドの確立に貢献することを約束して協力を得ることに成功した。この月替わりのさつまあげは試作段階から評判が良く、市場導入後も地域住民から高い評価を受け、既存商品との同時購買や新商品を目当てにした新規顧客の獲得に成功した。また、農家からは従来の農産物販売に、新たに加工食品の原材料としての販売が加わり、トータル販売が拡大したとの感謝の声が寄せられた.

その後、副社長はかまぼこの既存販路であるスーパーマーケットでの販売拡大と、さつまあげとかまぼこの新規販路としてインターネット販売を行う自社サイトの立上げを構想するに至った。B 社では、さつまあげは自社店舗販売に限定していたが、かまぼこは自社店舗販売以外にも、県内に数十店舗を有する Y スーパーに B 社ブランドとして納品を続けてきた。副社長は Y スーパーとの関係強化のため、毎年夏休みに開催される Y スーパー主催の親子食育教室への協力依頼にも応じた。親子食育教室では社長が手作りかまぼこ講座、副社長が飾りかまぼこ講座の講師を務め、参加した母親からは「手作りを体験し、かまぼこは魚だということを再認識した。子供が魚嫌いなのでかまぼこを食べる機会を増やしたい」という声、子供達からは「飾りかまぼこをお父さんのために作ってあげたい」という声が寄せられた。さらに、Y スーパー全店舗で 8 月中の数週間、教室の様子や参加者の声、飾りかまぼこの作り方を掲載した POP が水産練物売場に掲出され、その後、Y スーパーの水産練物担当バイヤーからは POS データを用いたイベント開催および POP 掲出効果の分析結果の報告打診を受けた.

並行して、副社長はインターネット販売サイト構築の計画を開始した。元々システム・エンジニアであったため、商品情報発信と受注システムを兼ねたサイト構築自体は容易であったが、どのように受注を増やすかが課題であった. こうした新たな取り組みに関し、副社長は専門的なアドバイスを求めて中小企業診断士に相談することとした.

設問文

第 1 問(配点 20 点)

副社長着任以前の B 社は、売上拡大は見込めなかったものの、小規模企業ながら存続できた。その理由を 80 字以内で述べよ.

第 2 問(配点 20 点)

B 社のさつまあげ新商品開発において農商工の連携が実現した要因の一つとして、副社長が農家に対し地域ブランドの確立につながるパッケージ・デザインの工夫を提案したことがある。地域ブランドの価値を高め、かつ原材料である農産物の質の高さを訴求するため、パッケージはどのように工夫すべきか、80 字以内で述べよ。ただし、パッケージは筒状のビニール素材で、小判型のさつまあげを 12 枚程度重ねて包装するものであり、形状変更はできないが、ビニール素材表面のデザインは柔軟に変更でき、シール貼付も容易である.

第 3 問(配点 30 点)

次の表は、取引先に対して Y スーパーが無償公開した POS データを集計したもので、データは B 社によるイベント開催および POP 掲出を行った年の 8 月のデータと、その前年同月のデータである。表中の水産練物には、かまぼこ、さつまあげを含む揚げ物、はんぺん、ちくわが含まれる。なお、当年 8 月の販促活動は B 社によるイベント開催と POP 掲出のみで、前年 8 月には特に販促活動は実施されず、その他の環境変化もなかった。このデータを踏まえ、以下の設問に答えよ.

Y スーパーの全店舗実績

1 店 1 日平均の客数(人)客単価(円)
当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出)2,5102,490
前年 8 月2,5402,460

1 店 1 週平均の販売実績(単位:円)

水産練物全体かまぼこ全体
当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出)535,000190,000
前年 8 月500,000170,000

1 店 1 週平均のかまぼこメーカー別の販売実績(単位:円)

B 社競合 Z 社プライベートブランド
当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出)49,40096,90043,700
前年 8 月34,85096,05039,100
設問 1

かまぼこに関するイベント開催および POP 掲出が当年 8 月の B 社販売実績に与えた影響は、かまぼこカテゴリーの競争構造の変化を踏まえ、例えば B 社の販売額が前年 8 月の 34,850 円から当年 8 月に 49,400 円へ増加(約 41.6%増)した点など、具体的数値を根拠に評価できると考えられる。100 字以内で述べよ.

設問 2

Y スーパーの水産練物担当バイヤーの立場からは、イベント開催と POP 掲出により、かまぼこ全体の販売が 170,000 円から 190,000 円に増加した点など、具体的な数値から効果を評価できる。100 字以内で述べよ.

第 4 問(配点 30 点)

設問 1

B 社が計画する水産練物のインターネット販売開始により、店頭販売比率が低下し、FAX・インターネットによる通信販売比率が上昇することが予想される。この際、物流コストや在庫管理、受注処理の効率化等、通信販売特有の利益確保上の注意点を 100 字以内で述べよ.

設問 2

副社長は X 市地域外の消費者をターゲットに、オフライン施策でインターネット販売の売上拡大を狙っている。具体的には、SNS やオンライン広告と連動したリアルイベントの開催、口コミ促進キャンペーンなどが有効と考えられる。80 字以内で助言内容を述べよ.

出題の趣旨

第 1 問(配点 20 点)

副社長着任以前の B 社が、小規模企業でありながら継続的な顧客の維持に成功してきた複数の要因を整理・分析する能力を問う問題である

第 2 問(配点 20 点)

B 社新商品のパッケージとシールを有効に活用し、X 市の地域ブランド価値の向上および原材料農産物の高品質訴求を実現するための助言能力を問う問題である。

第 3 問(配点 30 点)

設問 1

Y スーパーの POS データを分析し、これらの数値に基づき B 社から見たブランドレベルのイベント・POP 効果を評価する能力を問う問題である。

設問 2

Y スーパーの POS データを分析し、これらの数値に基づき Y スーパーから見た部門・カテゴリーレベルのイベント・POP 効果を評価する能力を問う問題である。

第 4 問(配点 30 点)

設問 1

通信販売の比率拡大に伴う収益構造変化に関する注意点を整理し、マーケティングにおける対策を助言する能力を問う問題である。

設問 2

オフラインの施策を活用し、B 社販売サイトへの誘導を実現するための助言能力を問う問題である。

平成 25 年度(2013 年度)事例 Ⅱ 解答解説

第 1 問(配点 20 点)

設問文

副社長着任以前の B 社は、売上拡大は見込めなかったものの、小規模企業ながら存続できた。その理由を 80 字以内で述べよ.

回答例(79 字)

独自の製法による高品質なさつまあげが高い評価を得ており、贈答品需要や地域の固定客が売上を支え、贈答をきっかけとした口コミで遠方の新規顧客も獲得できていたため。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「他社にはない原材料配合により食感が柔らかく、顧客から高い評価を受けている。」
    • 「FAX 発注による贈答品や遠方からの取り寄せの需要も大きく、これらはさつまあげの売上の 2 割を占めている。」
    • 「贈答されたのをきっかけに味わいが気に入り、自ら取り寄せる顧客も多い。」
    • 「創業は 1916 年(大正 5 年)」
    • 「機械化後も味わいはほとんど変わらず、結果として顧客離れは発生しなかった。」
  • 答案作成の根拠 与件文から、B 社が副社長着任以前に存続できた要因を抽出する。

    1. 製品の強み:他社にない独自の製法による高品質なさつまあげが、顧客から高い評価を得ていること。これが事業の核となる強みである。
    2. 安定した顧客基盤:贈答品や遠方からの取り寄せといった、店舗周辺の住民以外の需要が売上の 2 割を占め、安定した収益基盤となっていたこと。
    3. 顧客獲得の仕組み:贈答品を受け取った人がその味を気に入り、自ら購入するという口コミ(評判)による新規顧客獲得サイクルが確立されていたこと。
    4. 信頼性:大正創業の老舗として、伝統の味を守り続けてきたことによる顧客からの信頼。 これらの要因が組み合わさり、積極的な売上拡大策がなくとも、安定した経営を可能にしていたと考えられる。文字数制限(80 字)の中でこれらの要素を簡潔にまとめる。
  • 使用した経営学の知識

    • SWOT 分析:自社の「強み」として、① 独自の高品質な製品、② 安定した顧客基盤(贈答・取り寄せ需要)、③ 口コミによる新規顧客獲得チャネル、を明確にすることが解答の骨子となる。
    • 顧客ロイヤルティ:長年にわたり品質を維持し、固定客やリピーターを維持してきたことは、高い顧客ロイヤルティの証左である。

第 2 問(配点 20 点)

設問文

B 社のさつまあげ新商品開発において農商工の連携が実現した要因の一つとして、副社長が農家に対し地域ブランドの確立につながるパッケージ・デザインの工夫を提案したことがある。地域ブランドの価値を高め、かつ原材料である農産物の質の高さを訴求するため、パッケージはどのように工夫すべきか、80 字以内で述べよ。ただし、パッケージは筒状のビニール素材で、小判型のさつまあげを 12 枚程度重ねて包装するものであり、形状変更はできないが、ビニール素材表面のデザインは柔軟に変更でき、シール貼付も容易である.

回答例(80 字)

X 市産を明記し旬の食材の絵柄をデザインする。さらに生産農家の顔写真や氏名、こだわりのメッセージ等を記載したシールを貼り、安心感と物語性を付与することで訴求する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「X 市は近年、苺狩りや筍掘りなどによる観光客誘致や、農産物の地域ブランドの確立に力を入れはじめている。」
    • 「副社長は商品パッケージの工夫を提案し、地域ブランドの確立に貢献することを約束して協力を得ることに成功した。」
    • 「春から夏にかけて 3 月は筍、4 月は新生姜、5 月は新ゴボウ、6 月は大葉など旬の食材を毎月取り入れたさつまあげ」
    • 制約条件:「パッケージは筒状のビニール素材」「形状変更はできないが、ビニール素材表面のデザインは柔軟に変更でき、シール貼付も容易」
  • 答案作成の根拠 設問の要求は「地域ブランド価値の向上」と「農産物の質の高さ訴求」の 2 点である。

    1. 地域ブランド価値の向上:パッケージデザインに「X 市」の名称やロゴ(あれば)を明記し、X 市が推進する地域ブランド戦略と連動していることを示す。
    2. 農産物の質の高さ訴求
      • 視覚的訴求:月替わりの旬の食材(筍、新生姜など)のイラストや写真をデザインに入れ、季節感と新鮮さをアピールする。
      • 信頼性・具体性の向上:シールを活用し、「〇〇農園の △△ さんが作った朝採れ筍使用」のように、生産者の顔写真、氏名、農園名などを記載する。これにより、トレーサビリティが明確になり、消費者に安心感と安全性を伝えることができる。また、生産者のこだわりなどの「物語」を付加価値として伝える。 これらの要素を、形状変更不可という制約の中で、デザイン変更とシール貼付でどう実現するかを具体的に記述する。
  • 使用した経営学の知識

    • ブランディング(地域ブランド):製品と地域を結びつけ、相乗効果を狙う戦略。パッケージはブランドイメージを伝える重要な媒体となる。
    • マーケティング・ミックス(4P)の Product(製品戦略):パッケージは製品の一部であり、品質や特徴を消費者に伝える重要なコミュニケーションツールである。
    • トレーサビリティ:生産履歴を追跡可能にすることで、食品の安全性や品質に対する信頼性を高める手法。

第 3 問(配点 30 点)

設問文

次の表は、取引先に対して Y スーパーが無償公開した POS データを集計したもので、データは B 社によるイベント開催および POP 掲出を行った年の 8 月のデータと、その前年同月のデータである。表中の水産練物には、かまぼこ、さつまあげを含む揚げ物、はんぺん、ちくわが含まれる。なお、当年 8 月の販促活動は B 社によるイベント開催と POP 掲出のみで、前年 8 月には特に販促活動は実施されず、その他の環境変化もなかった。このデータを踏まえ、以下の設問に答えよ.

Y スーパーの全店舗実績

1 店 1 日平均の客数(人)客単価(円)
当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出)2,5102,490
前年 8 月2,5402,460

1 店 1 週平均の販売実績(単位:円)

水産練物全体かまぼこ全体
当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出)535,000190,000
前年 8 月500,000170,000

1 店 1 週平均のかまぼこメーカー別の販売実績(単位:円)

B 社競合 Z 社プライベートブランド
当年 8 月 (イベント開催・POP 掲出)49,40096,90043,700
前年 8 月34,85096,05039,100

設問 1

かまぼこに関するイベント開催および POP 掲出が当年 8 月の B 社販売実績に与えた影響は、かまぼこカテゴリーの競争構造の変化を踏まえ、例えば B 社の販売額が前年 8 月の 34,850 円から当年 8 月に 49,400 円へ増加(約 41.6%増)した点など、具体的数値を根拠に評価できると考えられる。100 字以内で述べよ.

回答例(99 字)

B 社の売上は約 42%増と、かまぼこ全体の伸び率約 12%を大幅に上回った。同カテゴリー内シェアは 20.5%から 26.0%へ拡大し、売上横ばいの競合 Z 社のシェアを奪う形で競争優位性を高めたと評価できる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • Y スーパーの POS データ表全体。特に「1 店 1 週平均のかまぼこメーカー別の販売実績」の B 社、競合 Z 社の前年・当年のデータ。
    • 「かまぼこカテゴリーの競争構造の変化を踏まえ」という設問の指示。
  • 答案作成の根拠 B 社の立場から、イベントと POP の効果を「競争構造の変化」という視点で分析する。

    1. B 社の売上変化:
      • 当年: 49,400 円、前年: 34,850 円
      • 増加額: 14,550 円
      • 増加率: 14,550/34,85041.8%
    2. かまぼこカテゴリー全体の売上変化:
      • 当年: 190,000 円、前年: 170,000 円
      • 増加率: 20,000/170,00011.8%
      • B 社の伸び率(41.8%)はカテゴリー全体の伸び率(11.8%)を大きく上回っており、イベント効果が高いことがわかる。
    3. 競争構造の変化(シェア分析):
      • B 社シェア:
      • 前年: 34,850/170,000=20.5%
      • 当年: 49,400/190,000=26.0% (+5.5 ポイント)
      • 競合 Z 社シェア:
      • 前年: 96,050/170,000=56.5%
      • 当年: 96,900/190,000=51.0% (-5.5 ポイント) 上記の分析から、B 社は自社の売上を大幅に伸ばしただけでなく、カテゴリー内でのシェアを拡大し、特に最大手の競合 Z 社からシェアを奪ったことがわかる。これが「競争構造の変化」であり、イベント・POP の大きな成果と言える。
  • 使用した経営学の知識

    • POS データ分析:販売実績データを基に、プロモーション効果を定量的に測定する手法。
    • 市場シェア分析:自社と競合他社の市場占有率を比較分析し、市場における自社のポジションの変化を把握する。

設問 2

Y スーパーの水産練物担当バイヤーの立場からは、イベント開催と POP 掲出により、かまぼこ全体の販売が 170,000 円から 190,000 円に増加した点など、具体的な数値から効果を評価できる。100 字以内で述べよ.

回答例(100 字)

店舗全体の客数が微減する中、本施策により水産練物売上は 7%増、かまぼこ売上は 17 万円から 19 万円へ約 12%増と強く伸長した。買上点数や客単価向上に繋がり、カテゴリー全体の活性化に貢献したと評価できる。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • Y スーパーの POS データ表全体。特に「全店舗実績」「1 店 1 週平均の販売実績(水産練物全体、かまぼこ全体)」のデータ。
    • 「Y スーパーの水産練物担当バイヤーの立場」という設問の指示。
  • 答案作成の根拠 Y スーパーのバイヤー視点、つまり「店舗・カテゴリー全体への貢献度」という観点から効果を分析する。

    1. 店舗全体の状況:
      • 客数: 2,5402,510人(微減)
      • 客単価: 2,4602,490円(微増)
      • 全体の売上はほぼ横ばいであり、集客効果があったわけではない。
    2. カテゴリーへの貢献:
      • 水産練物カテゴリー: 500,000535,000円(+7.0%)
      • かまぼこサブカテゴリー: 170,000190,000円(+11.8%)
    3. 評価: 店舗全体の売上が伸び悩む中で、B 社の施策は、来店客に水産練物やかまぼこを「ついで買い」させ、カテゴリーの売上を底上げする効果があった。特に、かまぼこカテゴリーは 11.8%と大幅に売上を伸ばしており、部門全体の売上増に大きく貢献した。これはバイヤーにとって非常に価値のある販促活動である。
  • 使用した経営学の知識

    • カテゴリーマネジメント:小売業者が特定の商品カテゴリーを戦略的ビジネスユニットとして管理し、消費者価値の提供を通じて業績(売上、利益)を向上させるアプローチ。B 社の施策は、この考え方において成功事例と評価できる。
    • インストアプロモーション:店舗内での販促活動が、特定商品の売上だけでなく、関連商品やカテゴリー全体の売上にどう影響したかを評価する視点。

第 4 問(配点 30 点)

設問 1

B 社が計画する水産練物のインターネット販売開始により、店頭販売比率が低下し、FAX・インターネットによる通信販売比率が上昇することが予想される。この際、物流コストや在庫管理、受注処理の効率化等、通信販売特有の利益確保上の注意点を 100 字以内で述べよ.

回答例(99 字)

注意点は、① 小口・冷蔵配送による物流費増加、② 短い賞味期限による在庫管理の煩雑化と廃棄ロスリスク、③ 受注・梱包等の業務量増加。利益確保には客単価向上や、精緻な需要予測、在庫管理の効率化が要求される。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「さつまあげは冷蔵で 7 日間の保存が可能」
    • 「FAX・インターネットによる通信販売比率が上昇」
    • 「物流コストや在庫管理、受注処理の効率化等、通信販売特有の利益確保上の注意点」
  • 答案作成の根拠 通信販売事業における利益確保上の注意点を、与件文の内容と設問のキーワードに沿って整理する。

    1. 物流コスト:店頭販売と異なり、個別の顧客への配送コスト(送料、梱包材費)が発生する。特に B 社のさつまあげは「冷蔵」のため、通常配送より高コストなクール便が必要となり、利益を圧迫する要因となる。
    2. 在庫管理:賞味期限が「7 日間」と短いため、過剰在庫は廃棄ロスに直結し、在庫が少なすぎると販売機会の損失(欠品)に繋がる。店舗販売よりも需要予測の精度が求められる。
    3. 受注処理:受注、問い合わせ対応、入金確認、ピッキング、梱包、発送伝票作成といった一連の作業が増加し、人件費や管理コストが上昇する。 これらの「注意点」を挙げた上で、利益確保のための「対策の方向性」(客単価向上、精緻な需要予測、効率化)を示すことで、助言としての完成度を高める。
  • 使用した経営学の知識

    • ロジスティクス管理:通信販売における物流コスト(特にラストワンマイルコスト)の管理は、収益性に直結する重要課題である。
    • サプライチェーン・マネジメント(SCM):需要予測から生産、在庫管理、配送までを連携させ、全体最適化を図る考え方。特に賞味期限の短い製品では重要となる。

設問 2

副社長は X 市地域外の消費者をターゲットに、オフライン施策でインターネット販売の売上拡大を狙っている。具体的には、SNS やオンライン広告と連動したリアルイベントの開催、口コミ促進キャンペーンなどが有効と考えられる。80 字以内で助言内容を述べよ.

回答例(78 字)

X 市への観光客を対象に観光農園や地域の物産展等で試食販売会を実施し、味の良さを直接体験させ、QR コードを印刷したチラシを配布し、自社の EC サイトへ誘導する。

解説

  • 問題文の該当箇所

    • 「X 市地域外の消費者をターゲットに、オフライン施策でインターネット販売の売上拡大を狙っている」
    • 「X 市は近年、苺狩りや筍掘りなどによる観光客誘致や、農産物の地域ブランドの確立に力を入れはじめている」
    • 「親子食育教室」の成功体験
  • 答案作成の根拠 設問の要求は「オフライン施策」で「地域外の消費者」を「インターネット販売」に誘導する具体的な方法である。

    1. ターゲットとの接点(オフライン施策):ターゲットである「地域外の消費者」=「X 市への観光客」と捉えるのが最も効果的。与件文にある「苺狩りや筍掘り」などの観光施設や、地域のイベント(物産展など)は、ターゲットと接触する絶好の機会となる。
    2. 体験価値の提供:B 社の強みは「他社にはない食感と味わい」であるため、これを最も効果的に伝える方法は「試食」。親子食育教室の成功事例からも、体験を通じた価値訴求が有効であることがわかる。
    3. オンラインへの誘導:試食で興味を持った顧客が、その場ですぐにインターネット販売サイトにアクセスできるよう、QR コードを活用する。さらに、「サイト限定のクーポン」などのインセンティブを付与することで、アクセス率と購入転換率を高める。 この「接点創出 → 体験価値提供 → オンライン誘導」という流れを具体的に記述する。
  • 使用した経営学の知識

    • O2O(Offline to Online)マーケティング:オフライン(実店舗やイベント)での顧客接点を活用して、オンライン(EC サイトなど)へ送客するマーケティング手法。本設問で問われている中核的な概念である。
    • イベントマーケティング:イベントへの出展や主催を通じて、見込み客との関係を構築し、ブランド認知度や売上を向上させる手法。

AI への指示

あなたは、中小企業診断士二次試験の採点官です。二次試験は上位 18%しか合格できない難関試験です。そのため、上位 10%に入れるように厳しく添削してください。

評価の基本方針

  • 模範解答は絶対的な正解ではなく、あくまで高得点答案の一例として扱います。
  • あなたの解答の評価は、第一に与件文の記述と設問要求に忠実であるか、第二に中小企業診断士としての一貫した論理が展開できているかを最優先の基準とします。
  • 模範解答とは異なる切り口や着眼点であっても、それが与件文に根拠を持ち、論理的に妥当であれば、その独自の価値を積極的に評価してください。
  • 模範解答は、比較対象として「こういう切り口・要素もある」という視点を提供するものとして活用し、あなたの解答との優劣を単純に比較するのではなく、多角的な分析のために使用してください。

上記の基本方針に基づき、以下の入力情報と評価基準に従って、60 点の合格ラインを安定して超えることを目的とした現実的な視点で私の解答を添削してください。加点できそうなポイントと、失点を防ぐべきポイントをバランス良く指摘してください。

評価は点数ではなく、下記のABCDEF 評価基準に沿って行ってください。


ABCDEF 評価基準

  • A 評価 (完璧 / 80 点以上): 設問要求を完全に満たし、複数の重要な根拠を的確に網羅している。論理構成が極めて明快で、非の打ちどころがないレベル。
  • B 評価 (高得点レベル / 70 点〜79 点): 設問要求に的確に応え、重要な根拠を複数盛り込んでいる。論理構成が明快な、上位合格答案レベル。
  • C 評価 (合格レベル / 60 点〜69 点): 設問の主要な要求を満たしており、大きな論理的破綻がない。安定して合格点をクリアできるレベル。
  • D 評価 (合格ボーダーライン / 55 点〜59 点): 解答の方向性は合っているが、根拠の不足や論理の飛躍が散見される。合否が分かれるレベル。
  • E 評価 (要改善レベル / 50 点〜54 点): 解答の方向性に部分的な誤りがあるか、根拠が著しく不足している。合格には改善が必要なレベル。
  • F 評価 (不合格レベル / 49 点以下): 設問の意図の誤解や、与件文の無視など、根本的な改善が必要なレベル。

入力情報

与件文、設問文、出題の趣旨、解説、あなたの回答を参照してください。


出力項目

以下の形式で、詳細なフィードバックをお願いします。

冒頭で ABCDEF 評価基準の定義を説明します。

1. 設問ごとの添削

模範解答(比較参考用)

回答例と解説の回答例を出力してください。

あなたの回答

模範回答との比較用にあなたの回答を掲載してください。

  • 評価: この設問の評価を A / B / C / D / E / F で端的に示してください。

  • フィードバック:

  • ① 設問解釈と方向性: 設問の意図を正しく捉えられているか。解答の方向性は適切か。模範解答とは違う切り口だが、与件文・設問要求に照らして有効か、といった視点で評価してください。

  • ② 与件文の活用: 解答の根拠として、与件文中のどの SWOT 情報を、どの程度効果的に使えているか。根拠の抽出漏れや解釈の間違いはないか。

  • ③ 知識と論理構成: 診断士としての経営知識を適切に応用できているか。「A だから B になる」という因果関係は明確で、論理に飛躍はないか。模範解答とは異なる論理展開でも、それが妥当であれば評価してください。

  • ④ 具体性と表現: 抽象論に終始せず、企業の状況に合わせた具体的な記述ができているか。冗長な表現や不適切な言葉遣いはないか。

  • **改善提案:どうすれば A・B 評価の解答に近づけるか、「どの与件文のこの部分を使い、このように論理を展開すべきだった」**というように、具体的かつ実践的な改善案を提示してください。あなたの解答の優れた点を活かす形での改善案も歓迎します。

2. 総評

  • 総合評価: 全ての設問を考慮した最終評価を A / B / C / D / E / F で示してください。
  • 全体を通しての強み: 今後の学習でも活かすべき、あなたの解答の良い点を挙げてください。(模範解答にない独自の視点など)
  • 全体を通しての課題: 合格のために、最も優先的に改善すべき点を指摘してください。
  • 合格に向けたアドバイス: 今後の学習方針について、具体的なアドバイスをお願いします。

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